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孤高にして影の王  作者: mikaina
2章
70/72

元厨二病ぼっちは主人公からヒロインと化す


帰ってきた。




あらすじ


厨二病ぼっちだった夜宵ちゃんに友達が出来ました。


 

「バ、バイバイッ……! ふへっ、くへへへへ……!」

 

 夜。


 時計の針は十と十一の中間。

 

 帰り際に交わした言葉を頭の中で幾度も反芻し、布団の中で身悶える。

 

 初めての友達。心踊り眠れないのは仕方がない。何事も始めてというものは尊いものであり、増して今日手に入れたのは、夜宵にとっては望んで止まなかったものなのだから。

 

 夜宵は布団にうずくまり身悶えしながら、ふと思い出す。


「必要なくなったから」という彼の、黒瀬影莉の言葉を。

 

 傷つき、震え、苦しくなったあの言葉。親友となるべき人物が消えて、いつも通りに戻るはずだった。

 彼と邂逅するとき、失礼のないように新しくしようとしたマント。その為に買った布も半ば無駄になってしまったと思っていた。


 なのにその言葉の翌日、夜宵に初めての友達が出来た。これは偶然で片付けていいものなのだろうか?

 あまりにも出来すぎている気が……。あり得ないと、そんなことする必要があるわけがないと分かっていても誰かに仕組まれた、作為的なものを僅かなりとも感じずにはいられない。

 


 

 彼は全てを知っている。

 

 


 いくら我が盟友に成り得る人物だとしてもあり得ない噂だと馬鹿にしていた。そんなこと夜宵にとって崇拝の域に達していると言ってもいいあの『星降り』の登場人物ですら出来やしない。

 

 だがもしあの噂が真実だとしたら全ての辻褄が噛み合う。

 

 必要なくなった……。


 左腕のトレードマークを外し彼は決別を示していた。

 

 夜宵はそれをずっと、夜宵に対して言っているものだとばかり考えていたが、こうは考えられないだろうか。


「(自分が)必要なくなったから」

 

 夜宵に自分では無い友達が出来ることを知っていたから、自分はいらないと彼は邪魔な自分と決別させるために包帯を外したのだとしたら。

 

 彼がもしも夜宵を見捨てたのではなく、夜宵を思い身を引いたのだとしたら。

 

 何故夜宵を思ってそんなことを? する必要がないのではないか?

 

 浮かび上がるそんな問いすらも噂が真実であるのなら塗り消せてしまう。

 

 

 彼は私たちを常に導いている。

 


 私たち――その『たち』に夜宵が入っていれば簡単に説明が付いてしまうのだ。



 

 違うかもしれない。いや、誤りの可能性の方が正答の何倍も高いだろう。

 

 それでも、夜宵の焦がれた憧れ、聖域にいる時のイカした自分、そして何より今までストーカー……ではなく影ながら見守ってきた己自身の経験が言っている。

 


 ――彼は期待を裏切らない。


 


 夜宵は寝間着姿のまま、走り出していた。

 

 会えるかなんて分からない。いや、会える可能性なんてゼロに等しいかもしれない。

 

 でも行動せずにはいられない。


 勝手に期待するなんて、悪魔の所業だ。そんなこと理解している、それでも彼ならばその期待すらも超えてくれる。



 

 そこは公園だった。

 

 夜宵と彼が初めて会い、夜宵が運命だと感じた聖域。夜宵が主人公で、先輩が親友。そうだと思えたきっかけの場所。


「はぁ……はぁ……!」

 

 吐息は氷すら溶かしそうに熱く、大きい。

 肺が痛みを上げ、脚が疲れで震えている。パジャマは汗で濡れて、このまま寝ることは出来ないだろう。

 

 夜宵はそれを気にも留めず、必死に首を動かして辺りを見渡した。

 

 いない。

 当然だ。

 

 それでも諦めきれず再度周囲をみる。周りから見れば不審者極まりない光景だ。それでも止めるわけにはいかなかった。

 

 いない。

 

 それでも結果は変わらない。


 そこには誰もいない。


「はぁ……」

 

 小さな溜息が漏れる。

 

 当たり前だ。

 偶然、彼がこの場にこの時間に居合わせる。そんな偶然があるわけない。あったとしたらそれこそ――今度こそ運命だ。


 踵を返そうとした。家に帰り、シャワーでも浴びて忘れようとした。

 

 その時、ビュオゥ! と一陣の風が吹いた。もう夏目前だというのに未だに夜は涼しさを忘れていない。それが夜宵のパジャマを揺らしお腹に冷たい空気が触れた。


「ちゅめたっ!」

 

 ガタリッ!

 

 声を上げると背後から木材を強く叩いたような、固く重いモノを落としたような、なんとも言えない中途半端な音がした。

 

 振り返ったところで、そこには誰もいない。あるのは滑り台だけ、そんなことは分かりきっている。だが、夜宵は滑り台の上を確認していないことに気づいた。こんな夜遅い時間に滑り台の上なんかにいるはずがないという先入観があった。

 

 不思議と夜宵の身体は自らの帰るべき方角へと傾けなかった。それはきっと第六感だ。言い表せはしない妄信だ。

 

 ビニールか何かがこすれるような音が背後から聞こえた。明らかに人工的な音に今度こそ振り返り、声が漏れた。


「あっ……」

 

 見るとそこには男が立っていた。

 

 そして振り返った夜宵と目があった。その目は見開かれ、驚愕していることが伝わってきた。


 そしてそれは夜宵も同じだった。


 そしてはじめに。

 

 あぁ…………運命だ。

 

 その感情が頭を支配した。

 あまりの衝撃に最初に漏れた小さな喘ぎの後、一切声が出ない。呼吸すら忘れて、心臓が動いているのが不思議なくらいだ。人は心の底から驚き、感動すると声が出なくなることを初めて知った。

 

 そこに立っていたのは、黒瀬影莉。

 

 夜宵の運命の相手だった。






あと少しで二章も終了という所で「アレ」の流行で忙しくなってしまいました。


今日含め3日連続更新します、マジです。

つまり明日、明後日も更新するので許してください、マジで。

それで二章は終わりになります。


もし更新が来なかったら許さないでください。

代わりに更新出来たら褒めてください! 


お願いします、マジで。



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