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孤高にして影の王  作者: mikaina
2章
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故意的偶然と偶然の遭遇2



今更ながらに改行を頻繁に入れないほうが読みやすいかもしれないことに気づいてしまった。

 


「彼女が影莉くんに興味を持ったのは最近だからないと思う……」

「ですか。ですけど怪しくないですか? 影兄の妹ってだけでこんなに興味を持つなんて……クラスメイトの距離感じゃない気がします」

「彼女にも色々あるから……」


 優しげな目で莉佐を見て紫音は言う。


「でも」

 

 それでも納得の出来ない陽華に紫音は決定的な証拠を教える。


「影莉くんが心配なのは分かるけど、彼女は違う……。だって、陽華ちゃんのこと知らなかった……。ストーカーだったら知ってるはず……」

「あっ……。でも、演技の可能性も」

「演技に見えた……?」

「……見えませんでした」

 

 僅かに目を伏せる陽華。紫音はそんな彼女の頭を優しく撫でる。


「……私は、まだ信じません。でも、なるべく疑いません」

「うん……良い子……」

 

 ヨシヨシ、と頭を更に撫でる紫音。陽華は頰を軽く赤く染め、照れながらもそれを受け容れる。

 その光景を見て首をかしげるは疑われた張本人、莉佐。知らぬ所で疑われ、距離を取られたかと思えばちょっと百合百合しい不思議空間を見せつけられる可哀想な女の子。

 完全に置いてけぼりである。

 頭を撫でられ終わった陽華はテクテクと莉佐の元へ歩いていく。


「すみません、一井先輩が怪しい人じゃないか、羽独会長に尋ねてました」


 莉佐の元へと戻った陽華は開口一番、正直に告白した。

 これには莉佐は当然のこと、紫音も驚きに目を見開いた。


「えっ、僕、あ、怪しまれてるの!?」


 自身を指差し陽華の顔と紫音の顔を交互に伺う。

 当然だ。会ったばかりの、しかも自分が特別な感情を抱いている者の妹、つまりは家族に怪しまれているとなればそんな反応を取るのも仕方ないだろう。


「何に!? 僕は何が怪しいの!?」

 

 怪しまれてる、と言われても莉佐は正直しっくり来ていない。ただ「怪しい」と言われた動揺が表に現れてしまっているだけ。

 

 何故なら怪しまれる要素が皆無であるから。


「雰囲気が」

「雰囲気!?」

「今も怪しんではいますけど気にしないでください」

「気にするよね!?」

 

 莉佐の反応を見てクスクスと笑う陽華。

 そこで漸く気づく。

 あ、これからかわれてるな。年下の、しかも気になる異性の妹にからかわれていることに。


「クスクス、面白いですね、一井先輩は」

「もう、からかわないでよ。陽華ちゃんっ」

「あっ、怪しんでるのは大マジです」

「大マジなんだ!?」

 

 これが莉佐と陽華の関係が決まった決定的な瞬間であった。




「そういえばなんだけどさ、黒瀬くんここ最近左腕に包帯巻いてるけど怪我なのかな?」


 一通りからかわれた後、莉佐は気になっていた事を質問した。


「確かにしてる……」

「あぁ、あれはですね…………いや、これは私が言うことじゃない気がします。直接影兄に聞いてください。それにもう取れたはずですよ」

 

 陽華は簡単に言ったが、二人にとって彼に話しかけると言うのはそう簡単な話ではない。故に、陽華に聞いたのだが話してくれそうにない。

 だから紫音は諦めて、別の気になることを聞くことにした。莉佐はまだ知りたそうにしていたが、それでもいつまでも気にし続けるほど面倒な人間でもない。


「黒瀬くんはそのほかに、学園について何か言ってた……?」

「影兄は学校の事はあまり話さないですけど…………最近聞いたのだと、羽独会長のことは言ってましたね。なんか話したとか」

 

 それを聞いた紫音は何処か誇らしげに胸を張った。


「ふふん……!」

「むむっ……」

 

 その様子を見て莉佐は僅かながらに不満に思い、うまく自分に関連のある話題へと話を変える。それが紫音への対抗心であるのは言うまでもない。


「ほ、他にはないかな? クラスの事とか」

「クラス、ですか? ……あー、そういえばクラスに一人天使がいるって言ってましたよ?」


 陽華は兄が少し誇らしげに語っていたのを思い出す。


「て、天使……? 僕には絶対関係ないよね……それ」

 

 自分の事が語られておらず、ガックリと肩を落とし、小さく独り言のようにつぶやく莉佐。

 それから考える。天使とは誰なのだろうか。やはりリア充グループにいる女の子の二人のうちのどちらかだろうか。それとも容姿だけはリア充にも負けていない獣飼さんだろうか。そう、容姿だけは。


「はぁ……」

 

 思わずため息が溢れた。

 少しぐらいアピール出来ていると勘違いしていた。黒瀬くんにとったら僕なんてミジンコ以下の存在なんだ、天使とミジンコ以下の僕……ふふっ、絶望的だなー。

 段々と目からハイライトを消していく莉佐を心配した紫音と陽華が声をかけた。陽華は全く事情を知らないためその場の流れで、であるが。


「凹まない……ご飯食べに行こ……?」

「そ、そうですよ。何があったのか分からないですけど、そんなに落ち込まないでください」

「ぐすん……会長ぅ! 後で愚痴聞いてくださいよぉ!」

「……うん……」

「陽華ちゃんも後で慰めてね……!」

「は、はい」


 一行は飲食店の集まるエリアへと向かっていく。




「ん?」


 陽華はその道中、遠くに見覚えのある人影を見つけた。


「どうしたの……?」

「いえ、なんでもないです。早く行きましょう、私、楽しみです」

「会長ぅ、陽華ちゃんんん、悔しいですよぉ!」

「分かったから、くっつかない……。暑いから……」

 

 紫音にしがみついて移動する莉佐に苦言を呈する紫音。しかしそれは、無意味に終わる。何故なら、紫音にとって不利な、知られたくない話題に逸れてしまったから。


「そういえば会長」

「ん……?」

「さっき黒瀬くんを影莉くんって」

 

 莉佐は唐突に思い出した。普段、黒瀬くんと呼んでいる生徒会長が、黒瀬くんを影莉くんと呼んでいたのを。

 紫音はいつもより更に仏頂面を浮かべ、静かに答える。


「言ってない……」

「……言いましたよね?」

「言ってない……」

「言ってたよね? 陽華ちゃん」

「空耳では?」

「うん……」

「あれぇ!?」





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