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孤高にして影の王  作者: mikaina
2章
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熟練ぼっちは妹と買い物へ行く2

 


 そんなこんなで見えてくるショッピングモール。


「ここに来るのは久しぶりだな」

 

 小さい頃は良く来てたんだが、いつからか来なくなってしまった。買い物はコンビニやネットですれば良いし、わざわざ人の多いこんな場所に来る必要がない。

 

 人が多すぎると俺、気持ち悪くなっちゃうからさ。

 

 それにこういう場所って友達と来るもんだろ? 一人で来る機会って滅多にないと思うんだよね。


「まずは一階」

 

 ずんずんと勝手知ったる様子でショッピングモール内を進む陽。

 

 足取りから見て、陽はここによく来ているんだろう。俺と違って友達もいるんだろうしなぁ。

 

 一人納得しながら陽の後を付いていく。


「布を選ぶのは時間がかかる。だから先に布を選ぶ」


「成る程な。ちなみにだが俺はどうしてればいい?」


「待ってる」

 

 成る程な。ちなみにだが俺はそれだと退屈なのだが。


「選び終わるまで、ペットショップ行ってきてもいいか?」

 

 この間、学校からの帰り道で野良猫を見たが触れなかったから猫を撫でたい。よーしよしよしよしよし! って撫でじゃくらなければならないのだ。

 

 もしくはゲーセンだな。あの時間を湯水のごとく棄てる最高のメダルゲームをプレイするのだ。


「ダメに決まってる。影兄は荷物持ちでしょ」


「いや、そしたら連絡くれれば来るから」


「イヤ」

 

 何でだよ。猫を撫でさせろや。お前を撫でたろうか?


「ほらもう着く。大人しく来る」


「……はぁ」

 

 陽に手を引かれ手芸洋品店へとやってきた。

 

 色々な道具や布、手芸関連のものが棚に並んではいるが、学の無い俺にはさっぱりわからない。

 

 色取り取りの布、試しにその一つ手にとってみる。


「うおっ! なんか独特の肌触り……」


「それはサテン系。なんかツルツルしてるやつ」


「ほーん。よくあるやつだな」

 

 知らんけど。

 

 値札をチラリと見る。


「一メートル四百円弱か。高いのか安いのか分かんないな」


「普通かちょっと安いぐらい。もっと高いのもたくさんある」


 そういって陽が手に取ったのは柔らかそうなモフモフ素材。

 そして俺にそれを差し出してくる。


「お、おおっ! めっちゃ柔らかいな。冬場のあったか素材って感じだ」


「ん」

 

 猫がわりに布のモフモフを楽しむ俺に陽が値札を見せつけてくる。

 


「はっ!? 二千五百円!? 一メートルで!?」

 

 たっか! 俺の今着てるTシャツより高いじゃん。何だったら俺の所持金より余裕で高いまである。

 

 俺はそんな高価な物をモフッていたのか。ダメだ、俺にこんな高級品は合わない。というより高価過ぎて触ってると金取られそうで怖い。ボッタクリバーみたいな感じで。

 

 俺はモフモフを静かに棚へと戻した。バイバイモフモフ。


「ウール系というかモフモフは基本的に高い」


「お前はこんなものを常日頃から買っているのか……」

 

 君の兄は自販機でいつもより二十円高いジュースを一本買うのも僅かに躊躇いが混じるというのに。

 

 金のかかる趣味を持つと大変だ。その点、俺って凄いもん。趣味が全然無いから金かからない。はぁ、また一つ優れた点を発見してしまった。


「布は高いけどそっちの方が安く済む時も多いから。それにお前じゃない」

 

 出来た子にも程がありませんか? 本当に俺と血繋がってる? 俺にバスター仕掛けてきたあの母親と血繋がってる? 俺、あの母親が裁縫とか料理してるの見たことないんだけど。


「はいはい」

 

 適当にあしらうと陽は少し膨れっ面で俺をみる。


「むぅ。ほら、次はこっち」

 

 しかしそれも一瞬、それすらもスパイスにして陽は楽しそうに、洋品店を移動する。


「はいよ」

 

 楽しそうに俺の手を引っ張る陽の笑顔を見て、俺も顔を綻ばせながら思う。

 

 あぁ、これ時間かかりそうだなぁ……。




「なかなか実りのある買い物だった」


「……それは良かった」

 

 洋品店に入って一時間半。俺はようやく自由の身となった。


 しかし釈然としない。束縛されていたのに荷物持ちまでやらされるとは……。元々、そのつもりで来たは来たけど。


「結局あんま買わないのな」


「買い過ぎはしない。どうせ大きな物は作らないから」


「てか、陽。あの高いの買って大丈夫かよ」

 

 陽が結局買ったのは、二種類の布を三、四メートル程度。そしてあの俺がモフッたクソ高モフ布も含まれている。いやまあ流石にあれは一メートルしか買ってなかったけど。


「影兄がモフモフしたから」


「あ?」


 どういう意味ですか、それ。


「ベタベタ他人が触った布なんて使いたいと思わない。だから回収した」


「……確かに」

 

 常識的に考えればそうだ。人がベタベタ触ったものなどなるべく購入はしたくない。だから陳列棚の下の方や後ろの方からわざわざ庶民は選択するのだ。もちろんそこには、賞味期限とかの問題も含まれているだろうが。


「後で半分出すね?」


「別に大丈夫。お母さんに事情を説明してちょっと貰うから」


「ねぇ、それ俺が死なないかな? バスターかけられて治ったばかりの腕がまた包帯で巻かれちゃわないかな?」


「自業自得」


「今度、学食代出すからさぁ」

 

 俺の懇願を陽は普通に無視。


「影兄、早くして。次はこっち」


「なぁ、頼むよ?」

 

 俺の懇願はやはり無視。

 

 これ大丈夫? 俺だけ別の空間に隔絶されてない? 声届いてないんじゃないの。


「陽は昔な、ホラー映画を見たら怖くて一人で寝れなくてな。俺の所に」


「キモッ」

 

 聞こえてんじゃねーか。

 

 ちなみにだが、陽がホラー映画を苦手としている事実はない。少なくとも俺の記憶の中では。つまり全くの虚言である。


「まぁいいや、早く買い物済ませて帰ろうぜ」

 

 未来の事は未来の俺に託そう。俺ならばどうにか切り抜けてくれる、といいな。

 

 俺達は食品売り場へと向かっていく。食料を買ってしまえばここはもう用済みだ。


「うん」

 

 そう言って陽は鷹揚に頷き、されど次の瞬間には前言を撤回した。


「影兄、やっぱりちょっと待ってて。少し用が出来た」

 

 そう言って店の中だというのに駆け出す陽。その速さまさに韋駄天のごとく。そして完全に俺は置いてけぼり。


「えっ、君、自由過ぎない……?」

 

 妹の余りの自由っぷりに軽く息を吐き、頭を掻いた。

 

 やっぱり、真面目なのかお転婆なのか、よくわからないな。

 

 その場に取り残された俺はゲームセンターにいくか、ペットショップに行くかの二択に悩まされる羽目になった。




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