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孤高にして影の王  作者: mikaina
2章
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熟練ぼっちは妹と買い物へ行く

 


「影兄、起きて」


「んぅ……今何時だ……」

 

 ゆらゆらと誰かに体を揺すられる。

 

 寝ぼけ眼を擦り、意識が朦朧として誰に話しかけられたのかもわからないまま反射的に言葉を返した。


「八時」

 

 うーむ、起きるには少々早くないか? と思ったが俺を起こしに来た誰かは俺を揺すり続ける。やめてくださいっ! 貴方にあげるお金はありませんっ! ってそれ揺するじゃなくて強請るじゃないかーい!

 

 ふぅ、少し目が覚めた。


「早くして」

 

 目が覚めてきたからか思考がハッキリとし、誰が目の前にいるのかもう既に答えは分かっていた。いや、俺の家に居てこの声を聞けばね。

 

 仕方なく目を開け、顔を拝む事にした。


「買い物行く」

 

 目の前で俺の躯を揺すり続けていたのは想定通りというか案の定というか俺の想像していた人物と等しかった。


 

 黒瀬 陽華(ようか)

 俺の妹である。



「買い物ぉ……?」

 

 俺が吃らずに会話出来る数少ない内の一人。

 

 ちょっとめんどくさいなぁ、と言う気持ちをふんだんに込めて聞き返す。


「お弁当、もう作らないから」


「買い物だったな、いつ行く?」

 

 人質ならぬ物質とは卑怯な。一瞬で意識が覚醒したぞ。

 

 左手で目をこすり、まだ眠いんだよアピールをしてみる。そして注目すべき点は俺の左腕にはもう包帯が巻かれていないことだ。

 

 あの凄惨な事件から早十日ばかり。

 

 無事完治致しました。

 

 これで恥ずかしい気持ちが消えますね!


「初めからそうして欲しい……めんどくさいから」


 ボソッと酷いこと言うなよ。傷ついちゃうだろ。


「姉と母はどうした」


「お母さんは仕事、姉さんは知らない」


「まぁ、どうせ寝てるか仕事だろ」


 なるほど、それで俺に白羽の矢が立ったというわけか。誰かに押し付けようと思ったが誰もいないんじゃそうもいかない。

 

 陽一人で行かせて後で母にバスターを仕掛けられるのも癪だしな。


「行くから準備して来い」


「わかった」

 

 陽がテキパキと準備を行っている間、俺はぬらぬらと気味悪く動く。


「準備出来た」


「じゃあ行くかー」


「影兄準備は?」


「終わったぞ、お前が支度してる間にな」


「……影薄」

 

 この子、兄に対して容赦なさすぎませんか。妹を待たせない兄の鏡だと思うんですが。あはあはと渇いた笑顔を浮かべる俺に何こいつキモみたいな視線を陽はぶつけてきた。

 

 お兄ちゃんはメンタル弱いんだよ? 外装はカチカチでも内装はぷるんぷるんなんだよ? 言葉には気をつけてね。

 



「何買うんだ?」

 

 ショッピングモールに向かって横並びで歩く。

 

 陽とは頻繁とまでは行かずとも、適度に出掛けているが、何となくこうして横並びで歩くのは懐かしい気がする。


「三日分の食事の材料と裁縫に使う布」


「あー、そうか」


 陽は裁縫と料理を趣味にしている。俺や姉と違って優等生な陽はこういう事から違うのだ。


 当然ではあるのだが、趣味にも印象のいいものと悪いものが存在する。


 アニメやゲーム、アイドルや電車といった趣味は比較的イメージの良くない部類に分布され、なんかスポーティーな趣味が印象がいいのだ。サーフィンとかテニスとかそんなサークル活動見てぇな趣味がな。


 リア充や優等生なんかはリア充らしい趣味を持っている。カラオケやボーリングなんかはその最たる例であろう。リア充の趣味はとにかく金がかかるものが多い。金持ちが尊ばれ、貧乏は排他、それがリア充業界の掟だ。あいつらの思考は、金を持っていない=付き合いの悪いに直結する。まぁ、間違っちゃいないんだけどね。


 裁縫や料理は印象の良い趣味として扱いやすく、中でも金がかかりにくい。しかも趣味が特技と結びつく実に合理的な趣味だ。


 ちなみに俺の趣味はゲームと独り言、あとアニメ観賞な。もうインドアで印象悪すぎてダブル役満超えて、トリプル役満にも程がある。


「優等生じゃないから」


「心を読んだか……!」

 

 まさかこいつ能力者か?


「影兄の考えることはいっつも一緒だから」

 

 全てを見抜かれてしまっている俺。あまりにも不憫で可哀想。

 

 待てよ。全てを見抜かれている? ならば担任には効かなかったあの技がまさか効くのではないか?


 そう――俺のセクハラ攻撃がな。



 ――――おっぱい。


「影兄、良くないと思う」

 

 なっ! やはり……!


「妹に鞄を持たせたまま。普通率先して持つよ?」


「へぇへぇ」

 

 陽から鞄を受け取り、肩に掛けた。

 

 陽はそんな俺を尻目にさっきから頻繁に背後を確認している。


「どうした?」


「別に何でも」

 

 背後を気にしながら、そんな事を言ってもばればれだっつぅの。

 

 俺も陽に合わせて背後を見てみる。が何もない。人はおらずただ所々に電柱のある何の変哲も無いただの道路だ。


「何もないぞ?」


「だから何でもないって言った」


 そうは言いつつも未だ訝しげな表情を顔に浮かべ、背後を気にし続ける陽。


 陽は優等生だ何だ言ったが、意外と変わり者なのかもしれない。





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