中二病ぼっちは夜に舞う3
青黒いビニールを自転車のカゴから取り出して、部屋へと戻り、鍵を閉めた。
自室のテレビにこれまた普段は使わないDVDプレイヤーを接続し、袋から取り出したDVDをセットして再生ボタンを押した。
「ふぅー、ふぅーっ」
ワクワクとドキドキと自転車を漕いだせいで心拍数が上がり、口から漏れる呼吸音がうるさいほどに響く。
テレビ画面が青白く光り視界を光が瞬いた。
そこからは劇的だった。自分の世界観なんて、なんてちっぽけだったのだろうと一瞬にして瓦解した。
崩れ崩れ壊れ壊れ。
先には灯火。崩れ壊れた先には灯火があって。それが夜宵の全てを上書きした。
輝いていた。全てが。
呑み込まれる。体が、気持ちが。それはまるで渦みたいで。入り込んだら抜け出せない蟻地獄。
眩しくて眩しくて。
だからされど故に。
憧れて憧れて憧れて。
焦がれて焦がれて焦がれて。
届かないと分かっていても、頭の中では理解していても、手を伸ばさないと気が済まなかった。
その場所は小さな公園だった。簡素な遊具が数個あるのみでトイレや集会所がある訳でもない。周りには明かりが少なく、建築物も少ないせいか、夜空が綺麗な事以外は至って普通の公園。
そこは神すら不干渉、彼女だけの庭園。
そこでだけ彼女は自分を曝け出せた。
キラキラと眩しいほどに輝く画面の向こうのキャラクターにその場所でだけ次元を越えて近づけた気がしていた。
夜宵はこの場所を、あのアニメを見つけるまで小さな身体でこの広い世界を彷徨い続けていた。
誰にも見せられない自分。
誰に語りかけるわけでもないから敬語を辞めて、最高にカッコいい格好で、最高のポーズを取る。ここなら最高にカッコいいと思える自分になれる。
だから彼女は滑り台の上でマントを広げ、大きな声で高らかに夜空を見上げ笑う。ここに自分はいるのだと主張する。
この場所に自分はいるのだと。
誰かに――それは親や同級生、教師でもない。まして神なんかでもない。
それはこの場に居ない時の自分。この園の加護を失っている時の自分。聖園から隔絶された自分。
彼女は誰のためでもない、自分の為に笑う。
「ふはははは!」
夜宵が高らかに笑ったその時である。
ガサッと袋の擦れる音が夜宵の耳に届いたのは。
「ひぇっ……!」
小さく素っ頓狂な声が漏れた。
夜宵がこの日課を始めてから約四か月、今までこの聖域に侵入したものは誰一人としていなかった。
無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理。
人に見られたなら恥ずかしくてなんか無理だし、人ならざるものなら怖すぎでもっと無理。
それでも正体を知りたくて、好奇心が打ち勝った夜宵はゆっくりと音の根源へと首を回す。
「……ん? …………んっ!?」
思わず、夜宵は声を上げた。
そこに居たのは、男の人だった。あっという間に居なくなってしまったがそれでも夜宵の瞳はその男を捉え、否、捕らえていた。
公園側に灯りはない為、男側からは夜宵の顔を見ることが出来なかったが、道路には街灯があったため夜宵側からは男の顔をハッキリと見ることが出来ていた。
彼女の瞳に映ったのは平凡な男の人。
だが夜宵にとってはただの男の人ではない。普通の男であるのなら改めて声をあげたりしない。
――――自分の同類。
夜宵の思考は刹那にして何百の想定を繰り返し、そして断定した。
この時間にこの聖域へ侵入したこと、夜宵と同じ様に夜空を見上げていたこと。
そして。
――左腕に巻かれた包帯。
それらを考慮して夜宵はその男を自身の仲間だと認識した。
この時間は『星降り』の主人公、夜空が天体観測をする時間帯。さらにこの辺りで星が最も綺麗に見えるのはこの公園で、そして星を眺めていた。
夜宵の中ではこの二つで仲間とみなすのに半分ほど状況は揃っていた。
極め付けが左腕の包帯--。
新作出したから見てね!
完全にコメディです!
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