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孤高にして影の王  作者: mikaina
2章
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中二病ぼっちは夜に舞う

 


 時刻は午後の十一時を回った所。


 俺はコンビニで買ったB4用紙と夜食用に買ったチョコのアイス、そして三つのスイーツの入った袋をぶらぶらと揺らしながら街灯の淡い光が照らす薄暗い路を何かに浸るようにゆっくりと歩いていた。



  ふー、と息を吐いた。街灯の明かりはあるものの辺りは暗く、人通りも無い。

 

 空に浮かぶは線の如く細い月、即ち新月。いつもなら目立つ夜の象徴も、たまの休みを満喫している。


 夜、外に出て独りでいると不思議な気分になる。身体の奥底から迸る程に熱い気持ち。それは言うならば戦隊モノのレッドの心であろう。


  カッコつけたポーズを取りたくなるし、カッコイイ詠唱を大声で叫びたくなる。


 やっぱり男の子はいつまで経っても少年の心と中二病の気が何処かに残っているのだと実感する。


  俺はそういうの興味ないからとか、強がって見せる時期はもう卒業した。



 俺は左手を微かな月明かりにかざす。



 ――だからこの左手に巻かれた包帯も恥ずかしがらずにいられるのだ。



 弁当を食べずに家へ帰ったせいで俺は実の母親にキン○バスターを完璧にかけられ、ゴミのように捨てられた。


 そしてゴミの俺に対し母は一言。


「弁当これからも作って欲しくば、わしゃと陽ちゃんにスイーツ、買ってきんしゃい」


  お前は鬼か、喋り方とんでもないことになってるぞ。


  そんなことがあり、キン○バスターをかけられ放り投げられた時、俺は腕、というか手首をひねり、心配性の姉に大袈裟に包帯を巻かれたという次第。



  で、スイーツ目当てのコンビニでなんかねーか物色してる時に、現文の宿題があったのを思い出した。


  配られたプリントを取り組もうとしたら、そのプリントには新出漢字の意味を調べてB4の紙に書いてきなさいみたいなことが書いてあって、いやプリントにやるんじゃないんかいっ! って独りツッコミを入れたまま放置していたため、大人しくスイーツついでに購入したわけだ。


  何となく、上を向いてほとんど明かりを放っていない新月へ手をかざした。


 手のひらを新月にすかしてみればー、真っ赤に輝く僕の血潮。一人だって、独りだって、ぼっちだって。みんなみんな生きているんだ、友達なんだ。……意味わかんねー、まず独りなら友達じゃねーし、友達いねーじゃん。



「ふぅ……」


  暗い夜道、一人でまた溜息を吐いた。


  カッコいい事やエロい事に興味がないフリをしたり、周りに合わせるのなんて疲れるだけだ。それこそ徒労であろう。


 自分を偽り、相手に合わせ、愛想笑い。同級にすら無意識に媚びを売る。どうせ売るのなら喧嘩かマッチを売れってんだ。


 友達の多いやつはさぞかし大変だろう。我を貫き通し、皆と上手くやれる人間などこの世には存在しないのだから。もしいるとするのならそれは自分を騙している戯者でしか無くやはりそれは己ではない。だからやっぱりそんな奴は存在しない。。



  それに比べぼっちはいい。



  合わせる相手がいないから気を使わない、からかってくる奴もいないから自分の好きな事に全力で取り組める。己を偽らず曝け出し、されど隠匿するのだ。


  そう、つまりだ。俺はこの左手をカッコいいと思ってる。だから包帯を巻いて堂々と学園に行くことを恥ずかしいとは思…………やっぱり恥ずかしいです。


  左手をチラチラと気にしつつ帰宅路の途中、公園の前を通った時、


 

「ふはははは!」

  耳を貫く笑い声が聞こえた。



  周りに人はいないと無意識のうちに判断していたせいで驚き、ビクッと身体が震えた。そのせいでビニールが「俺はここにいるぞ」と主張するように音を立てた。


  ねぇ馬鹿なの? ビニール君は馬鹿なん? こんな夜中に公園で笑ってるヤバい奴に目をつけられたらどうすんだ。


  バレないように横目で公園を窺うと滑り台の上に人影が見えた。小さな公園に灯はなく暗くて顔を見ることは出来ないがマントを付けていて、手を大きく広げ空を見上げている事から一目でヤバい奴だと判断することができた。


  ヤベー奴の首がゆっくりとこちらを捉える。


  無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理。


  あんなヤバい奴に目ぇつけられるとか無理だし、絡まれたりしたらもっと無理。


  俺は気づいてない風を装い、空を見上げながらその場を足早に去った。



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