ぼっちは恐怖する3
ふぅ。
彼女達が去り、俺は顔を上げ一息ついた。
教室の時計を見れば時刻は五時近い。だと言うのに空はまだ明るく夏の訪れを感じさせる。
俺も帰るか。
のんびり動き出そうとした時、廊下からバタバタと独りの足音が聞こえた。俺はビクッと体を震わせ、机に足を打ち付けるがなんとか狸寝入りに入った。
クラスの前でその足音は止まり、教室のドアがカラカラと静かに鳴った。
「……」
危ねぇ! 誰かは分からないが教室に入ってきやがった。可能性は色々あるがハッシーか獣飼のどちらかが忘れ物を取りに来た可能性が最も高いだろうか。
そんなことを考えていると足音が俺の方にだんだん近づいてくる。
「……」
一言も喋らないため誰かが分からない。それが少し恐怖を駆り立てる。
沈黙の時間が流れる。それは一瞬、されど恐怖に駆られる俺には長く感じた時間。
それはある音をキッカケに終わりを告げる。
――カシャリ。
俺の後方でスマホのカメラで写真を撮る音がした。
!? 何!? 何!? おれ!? 俺のこと撮ったの!?
思わず顔を上げたくなるのを必死に抑え付けて、恐怖と驚愕で今にも震えそうになる身体を心で鼓舞し耐える。
「……」
足音が遠くなり扉が閉まる。結局一言も喋りはしなかった。
俺は本当にいなくなったことを確認するため三分ほど間を空けて、ゆっくりと顔を上げた。
自分の頰が引き攣りピクピクと震えているのを感じる。
空は先ほどと変わりないはずなのに先ほどよりも灰色に見えた。
俺は自身の中で混濁と化した感情を整理してから一言だけ呟いた。
「怖ぁ……」
ただその一言に尽きる。
ビクビクと辺りを警戒しながら俺は帰路に着いた。
道中、横を通り過ぎた黒猫に驚きすぎて腰を抜かしかけたのは水色パンツの記憶と共に墓場へ持っていこうと思う。
帰宅後。
「お前は母親と妹が早起きして作った弁当を食えないっていうのかぁぁ!!!」
「すいませんしたぁぁっぁぁぁ!!!!」
完全に弁当のこと忘れてました。




