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孤高にして影の王  作者: mikaina
2章
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ぼっちは恐怖する2

 


  俺が諦観することを決めている間にも恋愛相談は続いている。


「……その、全然出来てなくて……」


  窓側を向いているため顔は見えないが、その恥ずかしげに紡がれた言葉に俺の心がキュンとした。いいなぁ、その初々しい感じ。俺にはそんな時期がありませんでした。これからもきっとありません……ぐすん。


「はあー、そんなんじゃダメに決まってるじゃん。ハッシーの好きな人、私は知らないけどそんなんじゃ盗られるよ?」


「……それは分かってるんだけど」


  それが出来たら苦労しないと言外に伝えるハッシー。


「難しくてもやらなきゃ。何もしなかったら変わらないじゃん」


  獣飼はそれでもハッシーを応援する。その言葉は莉佐や俺に向けられた言葉よりもずっと暖かく、優しい。


  恋愛、ぼっちの俺でもいつかする日が来るのだろうか。


  誰かを好きになったり、誰かに好きになって貰ったり。……後者は百パーセントないですね。万が一あるとしたら前者。


  ……誰かを好きになる。俺にできるかどうか少し考えてみる。


  まず、好きになるのには理由が必要だ。


  顔だって性格だってなんだっていい。理由が必要。俺の場合、性格が分かるほど関わることは天文学的な確率だから好きになるなら見た目だろう。


  ……見た目。俺はどんな人がタイプなのだろうか。


 よくよく考えてみるとわからない。


 莉佐のような幸薄美人だろうか、それとも会長のように清楚な寡黙黒髪美人だろうか、もしくは獣飼のように髪を染めピアスやイヤリングを付けるようなイケイケなギャルが好みなのだろうか。


  ギャルゲーでは基本クール系推しの俺だが現実となるとそうはいかないもんだな。


「ハッシーの好きな人ってどんな感じの人なん?」


「うーん、そうだなぁー」


  ハッシーは頭の中でその人を思い浮かべたのだろう、数秒悩んでから話し出す。


「せっ…………私の好きな人は真面目かなぁ。悪いことはできなさそうっていうか」


「真面目系なんだ、意外」


  俺も意外だ。女子なんてみんな半グレDQNヤンキーが好きなもんだと。


  ギャップがカッコいいとかヤンキーが普通なことをするだけでいい人に見えるとかそんなゴミみたいな理由で女子の八割はクソヤンキーを好きになると勝手に思い込んでいたが違うのか。いやもしくはハッシーが残り二割の稀有な存在なのやもしれん。


「うん……とっても真面目でとっても凄い人」


  その人について語るハッシーの声色はとても想いが篭っている。優しく、その人が愛しくてたまらないという想い。関係のない俺まで無意識に口角が上がってしまうほどにそれは暖かく尊い。


「そっか……なら余計に頑張んないと、ハッシー」


  なんだろう。涙が出そう。


  青春漫画のワンシーンのような感動。これが外だったら桜が舞い、風に踊るところだ。


  こう見えて俺は青春漫画やアニメが好きだったりする。俺は基本的に雑食、ドロドロ系以外は好き嫌いなく嗜む人種なのだ。ぼっちにだって青春アニメを見る権利はあるのだから。


  ラノベ物も嗜めば、熱血物も嗜む、そしてマニアックな三分枠や五分枠も嗜むのが俺だ。


 これは言うなれば紅茶を楽しむのが淑女の嗜みなのと一緒。ぼっちはアニメを紅茶が如く嗜むべきなのだ。


「麻里麻里は好きな人とか出来た?」


「ないない。私は部活とバイトで忙しいし、彼氏とか無理」


「えー、でも気になる男子とかいないの?」


  ハッシー流石だ。その調子で獣飼の弱みを俺に握らせてくれ。


 コイツは俺に対して何故か敵意を抱いているからな。弱みを握っておきたいのだ。……それでそれを使って……へへ。まあそんなことをする度胸ないんですけど。


「いないいない! そんな人いないって!」


「クラスとかバイトとかでさー」


「えー別にいないんだけど……」


「ほらあそこに寝てる、え……男の子とかさ」


  どきりっ! まさか俺に強く当たるのはツンデレのツンの部分だったのか。


「いやそれだけはない」

 

  ぐすんっ!


  そんなすぐ否定しなくてもいいじゃない。


「あっと、ハッシー私バイトの時間」


「あっ、じゃあ途中まで一緒に行こ?」


「オッケッ」


  彼女たちの椅子を引く音が教室に響く。そして足音が遠くなり、扉が閉まった。




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