熟練ぼっちは感謝する3
「ふーん……言い訳かぁ」
桂花センパイは意地悪い笑みを浮かべ、レンを見つめる。それにレンは視線を彷徨わせ必死に弁解しようと言葉を紡ぐ。
「いや、言い訳ってわけじゃ!」
「男らしくないなー」
そうだそうだ。もっと言ってあげてください。普通は匂いまで嗅いで、感想を三千字で述べるべきですよね。それなのにレンときたら……、まったく、やれやれだぜ。
「……やっぱり怒ってますよね……」
当たり前だろ、コイツやっぱ狂ってんじゃねーの。怒らない訳ないじゃん。
パンツだよ、パンツ。パンティを見たんだぞ、貴様は。普通なら去勢から拷問かけて死刑だぞ。常識的に考えて。
「……」
数瞬間の沈黙の後、何を思ったのか、桂花センパイはクスクスと含み笑う。
「ふふ、ふふふ。あは、あはは! 冗談、冗談。大丈夫だよ、別に怒ってないから」
桂花センパイは赤い頰のまま楽しそうに笑う。
……嘘だろ。パンツ見て怒られないとか、あのセンパイとどんな関係を築いていやがる。
レンがそれだけの信頼を得ているのか、桂花センパイが聖人なのか。それともレンは性人なのか。桂花センパイは変人なのか。
「……えっ、いいんですか?」
レンは間抜けな顔をしながら桂花センパイを見つめる。
なんでコイツは話をぶりかえすかなー。馬鹿でしょ。自分で墓穴掘ってるって気づけよ。ところで「穴」って書いて「けつ」って読むのなんか卑猥じゃないですか?
「良いも何も私を助けようとしたからでしょ。それなのにその、ね、ぱ、ぱんつ……見られたからって怒るほど私はひどくないよ」
いや、そのバランス崩したのもレンの所為ではあるんですけどね。レンが話しかけなかったら多分落ちたりしなかったと思います。皆さん覚えておいて下さい、これマッチポンプって言うんです。テストに出すから。
「じゃあさっきのは……?」
「少しからかってただけっ。レン君の反応面白いんだもん」
ぷぷっと吹き出すように笑う桂花センパイ。その姿にレンは呆れたように肩をすくめる。
「あの、俺がいうのも何ですけど、その自分のパンツというか身体をもっと大切にですね――」
「わかってるよ、私が許したのは」
桂花センパイは赤く染まっていた頰を更に紅く染める。そしてクルッと身体を回転させ口角を上げた。
「――レン君だからだよ」
その言葉が耳に届いた瞬間、俺は体を強張らせ、背筋に一筋の汗が伝った。レンは未だ間抜け面で桂花センパイを見つめていた。
「えっ? それってどういう」
「ほらほら、行くよ、荷物持つの手伝ってくれるんでしょ。後輩くん」
そういって桂花センパイは小さな荷物を一つ持ち俺のいる方とも俺の向かう先とも違う方向へと、悪戯な笑みを浮かべ鼻唄を歌いながら歩いていく。その歩調はどこか浮き足立って見えた。
「……ちょ! 待って下さいよ!」
呆けていたレンも気をとりなおし、荷物を持ちその背中を急いで追っていった。




