熟練ぼっちは感謝する
昼休み、昼食を食べ終わり図書館へと俺は向かっていた。
本ばっか読んで飽きないのかって家族にも言われるんだけど別に本ばっか読んでるわけじゃないんだよね。図書館以外では基本読まないし。
その図書館行ったり本読んでたら根暗認定するのやめてほしい。その理屈だと陽キャは本を読んだことのない、もしくは読まない教養ゼロの奴になるから自分の首を自分で絞め落としてることになるよ。首絞めてんの自分だからタップ出来なくてレフェリーの俺はただ自殺と判断するぞ。死因、絞殺(自殺)。どういうこっちゃ。
もう少しで別棟へ差し掛かろうかという時、聞き覚えのある男子の話し声が聞こえた。
「プハー、食った食った」
「美味しかったな」
「唐揚げはやっぱりご飯が進むね」
リア充どもかよ。
小生意気に唐揚げとか言ってんじゃねーし、食ってんじゃねーよ。俺も食いたくなっちゃうだろ。
「じゃあ、俺と達也は委員会あるから」
「また後でね、レン」
「おうよ」
レンはそう言ってお仲間さんと別れた。……そのまま一生別れてろ。突拍子のない暴言はぼっちの特権。
前方を歩くレンは奇しくも俺と同じ別棟へと向かっていく。俺はその背中を、いや、足元を刺すように見ながら距離を置いて追っていく。
コイツ、まさか図書館に行くんじゃないだろうな。図書館は俺や固定メンバーの聖域。
リア充のコイツが図書館に入っていったら俺の小さな聖域が浄化され綺麗になってしまう。それだけは阻止させてもらおう。
そう思えば、コイツいっつも昼休みはどうしてんだろうな。昼休みの間、レンが教室に居るところをあまり見かけない。
レンの後ろ姿を眺めながらそんな事を考えていたらレンが階段の前で立ち止まった。
何してんだコイツ。俺の進む先にいるもんだから何となく俺もその場で足を止めた。俺の邪魔だろ、退けよ(後方十メートルから)。
「桂花センパイ、手伝いますよ」
レンは俺のことなど気にせず(気づいてすらない)、階段を下って来ていた女子へと話しかける。
なるほどね、女の子が来てたんね、知り合いの。ふんふん、お前だけ階段から転がり落ちろ。
「その声はレン君かな?」
「はい、その荷物どこまで運ぶんですか? 俺も手伝いますよ」
「いやいや、悪いよー。これぐらいなら私でも――って、あ、やばっ!」
桂花センパイはレンに話しかけられ荷物を持った状態で無理に顔を合わせようとしたせいでバランスを崩し、重力に従い落下する。
「桂花センパイッ!」
レンは桂花センパイを助けるために勢いよく飛び込み空に浮かんだままその体を掴む。が、当然支えられるわけもなくレンが下敷きになる形で二人揃って地面に衝突した。
その間、俺はというと震えていた。刹那的に訪れた三つの恐ろしさに。
一つ、一歩間違えば病院行きだったかもしれないさっきの状況が恐ろしい。
二つ、俺があぶねーと思って二歩ほど踏み出した時、レンは既に桂花センパイの身体をキャッチしていた。身体能力の差が如実に表れたことが恐ろしい。。
三つ、俺が転がり落ちろと思ったことが現実になりかけて恐ろしい。
怖すぎでしょ。俺。マジ怖い。思ったことが現実になっちゃうとか……怖っ。やはり俺には特別な力が……。
「っつつっ! イッテェ……。おっとそれよりも、大丈夫ですか」
「う、うん、何とか」
俺という最強の存在に慄き、意識をそちらに持っていかれていたが、声を聞くにレンと桂花センパイは無事だったようだ。
レンだけ怪我すればよかったのに。顔に青タン作れ、そしてみんなに笑われてしまえ。……てか、俺、気軽に桂花センパイとか呼んでるけど知らない人なんだよね。誰ですか、あの人。




