夕飯はまだですか
夕刻
「実にはしたない寝相でしたね」
「最近ルーミアがひどい……」
「ルナンさんがこっちにこれないのでそのあたりはきつく言い含められましたので」
「えええ、いつものルーミアがいい! というかなんでそんなに口調固いの!」
「えっと……ルナンさんを真似ているのですが」
「頼む、止めてくれ! 堅苦しいの嫌なの知ってるでしょ」
「そうだよね……はあ、だってルナンさんみたいにしないとご主人様にきつく言えないもの」
「5年かけて培った友情はルナンのお願いに勝てるものか!」
「勝てますよ」
「……」
「だ、だって、ご主人様の為ですもん」
「ルーミア!」
あ、抱きつかれる
と思ったルーミアは
「早く隣に行かないとシルベリータ様が待っていますよ」
話を逸らした
「そうだった! じゃあ行ってくるね、ご飯はどうするんだ?」
アルシーの優先順位を知ってるが故の話のそらし方である
「話によるとご主人様は奴隷登録を成されていたはずなので、部屋に私の食事が配達されますよ」
「了解、じゃあまた後で」
「はーい」
そう言ってアルシーは飛び出して行った
「ルーミアさん、アルシーの雰囲気が……」
「あの方は一人の時、私が居るとき、シルベリータ様が居るとき、その他の方が居るときで自然と人が変わります」
「……」
「お分かり頂けますか? 危険なんですよ」
「…………」
「原因は分かってますが、あの人にとって何が一番いいのか……私も、ご主人様の家族も、あ、失礼しました、貴女に話すような内容ではありませんでしたね」
「い、いえ」
アルシーの人格が変わってきているのは周りの人間(シルベリータを除く)には鮮明に感じる事が出来ていたのだった
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部屋から飛び出したアルシー
「シル、来たよー」
さっそくアルシーはシルベリータの部屋にやってきていた
「あ、アルシー、助けて!」
「どうしたの!」
アルシーがシルベリータの部屋に飛び込んで目に入った光景は
「申し訳ありません、どうか、どうか命だけは!」
一人の女の子が土下座していた
「シル?」
アルシーには勿論何が起こっているのか理解ができなかった
「アルシー、どうにかしてよー」
しかし、シルベリータも混乱しているのか、重要な事がわからない
「どういう状況なの……」
「私が説明します」
「あ、サーシャさん」
救世主現る
「今、すごい勢いで謝っておられるのがシルベリータ様と同室の平民、ルーネ・ヴァルイさんです。 彼女がシルベリータ様のグラスを割ってしまいまして……」
「なるほど……」
「シルベリータ様は自分の不注意だから気にしないでを言っておられるのですが、ルーネさんが……」
「分かったわ、まあ任せなさい」
そしてまだ謝っているルーネとシルベリータの前へアルシーは行き
「ルーネさんと言いましたか? シルが許すと言っているのにそれを顧みずに謝り続ける方が寧ろ無礼じゃないかしら?」
「え? …………あああああああ、本当にすみませんでした!」
「だから良いって言ってるの! これから一緒に生活するのだから、仲良くしましょ!」
「は、はい!」
すぐに話が纏まってしまった
「流石はアルシー様ですね」
「そうかな?」
アルシーとサーシャが話していると
「あ、あの……」
ルーネが話しかけてきた
「どうかしましたか?」
「あ、貴方の名前を教えてもらえないでしょうか?」
「私? 私の名前はアルシー・ラ・ジャンヴァルディよ」
「え! ジャンヴァルディ候のご息女……もう終わりだあ」
「どうしてそこまで悲観するのかしら?」
「アルシー様、基本的な貴族はそれぐらいの事で激昂して普通に処罰の対象になります」
「え、本当なの! ルーネさん、私もシルもそこらの貴族のようにそんなことで怒ったりしないから安心して」
「ほ、本当ですか……」
「嘘言って何になるの?」
「あ、ありがとうございます!」
「そうそう、シル、早く食事に行きましょう!」
「うん、ルーネさんも一緒にいこ!」
「私なんかがご一緒しても……」
「いいのいいの、それにそんなに畏まらなくてもいいわよ」
「そうですよ、私たちは同じクラスの学友なんですから!」
「う、うん……でもやっぱり抵抗感が……」
「それは慣れるしかないわね」
「アルシーの同室の人も呼ぼうよ!」
「そうね、呼んでくるわ、先に行っててもらえる?」
「うん! 席取っておくね!」
アルシーはミーナを呼びに出て行った
残された二人は少々ぎこちないながらも会話をしながら食堂へ向かうのであった
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その後アルシーはミーナを連れて食堂へと現れた
「あ、アルシー! こっち、こっち!」
「シル! 連れてきたよ!」
「初めまして! ミーナ・ロマーネって言います! よろしくお願いします!」
「シルベリータ・イル・フォンダーといいます、よろしくね!」
「る、ルーネ・ヴァルイといいます、平民の方ですよね?」
「そうです! シルベリータ様も貴族でしたか、無礼な物言い……」
「アルシーも言っていると思うけど私たちに対して敬語とかはいらないよ! みんなで楽しくやりたいもの、ね、アルシー」
「ふふふ、そうよ、後約一名もそういうのは気にかけないと思うけれど貴方達には少し抵抗が強すぎるかもしれないわね」
「ルイスの事?」
「そうよ」
「「大公殿下のご子息様ですか!」」
「ほら、流石に皆知ってるもの」
この国で大公ジャコバン・カロム・オルナンダルとその一族を知らない者はほぼいない
それは女王エリザベーラ二世に次ぐ実権を持ち、オルナンダル大公領における内政、先の大戦における軍功という輝かしい名声によるものだ
因みにアルシーとシルベリータの父親たちも彼に次ぐ程の知名度があるのだが……勿論彼女達一家は知らない
「シル、それよりも今日の夕食は何なのかしら?」
「そろそろ運ばれてくると思うの」
「あ、あの、ここは貴族様の席ですよね? 私たちが居てもいいのでしょうか?」
「その時はアルシー達が何とかしてくれると思う」
半ばやけくそになってるいるミーナ、何かあってもアルシーがなんとかするだろうと思っていた
「ふふふ、そうよ、まあ規則にはここは誰でも使っていいって書いてあったけれどもね」
その言葉を聞いてルーネも悟りを開いた
「アルシー、誰か来たよー」
「あら、ルイスじゃない」
「おや、気付かれてしまいましたか? こちらの方々は?」
「私たちのルームメイトよ」
「ほう、そうなんですか。 初めましてルイス・カロム・オルナンダルと申します、同じクラスで末席を汚す物ですがどうかよろしくお願いします」
「な! た、大公殿下! 私たちはたかが平民の者です、そんな恐れ多い事申されると……」
「ああ、いいんですよ、そこのアルシー嬢やシルベリータ嬢と考え方は同じですしね」
「そ、そうは申されても……」
「アルシー達は良くても私は良くは無いのでしょうか?」
「そ、それは!」
「あら、ルイス、苛めるのは良くないわよ。」
「アルシー……貴方、自分がどれだけ有名か知らないのですね……そもそも侯爵は私の爵位の一つ下なだけですが」
「「……え」」
「あら? 知らなかったの?」
「みんなどうしたの?」
シルベリータは爵位に興味がないため、自分の爵位など気にしたこともなかった
「シルはぶれないわね……」
「ええ……」
「そんなに偉いお人だったの……もう終わりだ……」
これはルーネ
「だから、なんでそうなるのかしら?」
「そ、そうよ、それなら私なんてもうこの世にいないじゃない!」
これはミーナである
「面白い方々ですね」
「?」←シルベリータ
何も知らないシルベリータは話についてこれていなかった
まあ、アルシーに一途な彼女にはどうでもいい事なのだろうが
「まあ、あなた方二人もついていませんね、よりによってこの二人と知り合うなんて」
「ルイス、それはどういうことよ?」
「どういうことですか?」
アルシーとシルベリータがルイスに言い寄った
「いえいえ、常識が(いい意味で)通じないというのは少々大変そうですから」
「悪意を感じなかったからもういいわよ、そういう貴方のルームメイトはどうなのよ?」
「私ですか? 一人ですよ」
「え?」
「そうなの?」
「地位も地位ですからね、あのくそ親父……あ、失礼、父上にはそのような心遣いは必要ないと申したのですが……無理やり認めさせたようで」
「(一瞬素が見えたのだけど)そうなの、ということは部屋には使用人が?」
「いえ、それは認められませんでしたので、父上は大勢の奴隷を用意しまして……」
「うわ、地味に嫌ね」
「私はサーシャがいるから!」
(アルシーとルイスの心の声)
『そういう意味じゃないんだが』
『そうは言ってもシルだから、ね』
『確かに』
因みに平民の御嬢さんたちは話についてこれず呆然としていた




