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2 小作人は問う

2話目です。よろしくお願いします。(全5話)

 『勇者』の仲間たちが小作人たちを集めてきた。

 確かに皆痩せ細っている。

 『勇者』は自らを名乗り、遠く離れた宗教国家で『勇者』として認定を受けた者であり、仲間と世直しの旅に出ているという。

 旅の途中で、この荘園といわれる存在を知ったらしい。そして、義憤に駆られ、この場に現れたというのだ。

「この者は貴族でもなく、平民でありながら土地を暴利で貸し付け、搾取し、自らはなにもせず裕福な暮らしをしている。

 また、奴隷を多数買い、様々な制限をかけて、非道なことを繰り返している。

 さらに、夜な夜な人を斬っているとの証言もある。

 皆の者、待たせたな。

 今からこの者を処刑し、貧困から解放してみせよう。」


 ざわつく群衆の中、一人の男が問いかけた。


「『勇者』さん、おらは難しいことはわからんが、なぜ地主さんの首を斬られるんか。」

「お前たちに不当な立場を強いてきた報いを受けるのだ。」

「地主さんは滅多に外に出てくることはなかったけど、ひどいことをされたことはないよ。」

「何をいう、お前や周りの人々を見よ。痩せ細り、満足に食事もしていないのだろう。それに比べて見よ、この者ときたら、同じ平民であるお前たちに働かせ、腹も出ているではないか。領主や貴族であれば、税をもらう代わりに、領民を守る。しかし、この者は何もしないでお前たちから搾取するだけだ。」

「『勇者』さん、おらはこの村に来て3年くらいだけど、地主さんは最初の年は食べ物を分けてくれた。次の年は不作だったけど、家族を売らずに済んだ。今年は豊作とは言えないけど、秋に収穫をすれば冬を越せそうだ。こんなにありがたいことはないよ。」


 俺はそう言って笑う男を見た。

 ああそうか、あの時の男か。


 冒険者をしていたころ、数週間ほど、ある領主の護衛をした。

 その男は領民に忌み嫌われていたが、金の払いはよく、引退前で当時1人だった俺にできる依頼はあまりなかったのだ。

 領主の護衛をしているせいか、酒場に行くと煙たがられたが、酒は出さざるを得なかったらしい。よく一人で酒場に行っていた。

 そんなある日、汚い身なりをした男が入ってきて、カウンターに座る男に頭を下げた。

「どうかお願いします。来年の収穫で払いますから、土地だけは許してください。おらも家族も土地を取り上げられたら、生きていけなくなっちまいます。」

「決まったことだ。土地を売って金を返すか、家族を売って金を返すか。土地がいやなら家族を売れ。それができないなら早く出ていけ。ここは酒場だ、酒代くらい恵んでやる。」

 そういって男は、嘲笑を浮かべながら、貨幣を取り出して床に投げた。

 あの貨幣じゃあ、安い酒一杯分にもならないだろう。

 縋り付くも殴られつまみ出された男を追って酒場をでる。

 土地と家族なら家族を選ぶ、そう決めた男の決意が気持ちよかったのかもしれない。

 男に追いつくと肩を叩いた。

「ここから南にある土地で、働き手を探している。

来る気があるなら、4日後に南門から出る馬車に乗れ。」

 そう言って、数人分の馬車代を渡し、男が何か言う前に立ち去った。


 村人は言った。

「おらは種もみ代が払えず、住んでた土地を追い出されたよ。

 でも、ここだと自分で切り開いた分は自分の土地にしていいと地主さんは言った。子供が大きくなるまでは切り開くのは無理だけど、これからなんだよ。貴族様はこんなこと言ってくれないよ。」


 『勇者』は驚いて群衆を見回す。

 いまだに戸惑う者も多いが、他にも頷いている者がいる。



「なるほど。この者の行いすべてが悪行だけというわけではないらしい。

 しかし、奴隷に対してひどい行いをしてきたことは明らかだ。そうだな。」

 そう言って、脇に控える俺の奴隷を見た。

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