七話「残されたモノ」
「大丈夫だ、渋木。全員…潰してきた…から…もう…大丈…夫…。」
控室のドアが開き、血まみれの金子が入ってきた。
「アンタどうしたの!」
レースクイーンが駆け寄る。
僕は呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
バタリと倒れて息絶える親友を前に、僕は何もできなかったんだ。
傷口からは虹色の破片がキラキラと輝いていた。
親友も守れない、こんな僕がヒーローを名乗るなんて…
「とか考えてるんじゃねぇだろうな。」
サンダーナイトが横から口を挟む。
「こんなこともあろうかと金子の坊っちゃんが用意してた映像が何本もある。アイツは用意周到だな。」
『まず、サイバーファイトというのはだな…』
映像の中の金子は若干苛立っている。
サイバーファイトは神事であるということ。金子家は主催兼育成・処刑人の一族であるということ。プリズムコアが砕かれ続けると植物人間になること。
金子は淡々と話す。が。それに茶々を入れようとする映像の中のサンダーナイト。何してんだあんたは。
『最後に。これは…言いづらいが…。』
『言っちまえ〜!FOO〜!』
サンダーナイトがどこからか取り出した猫のぬいぐるみで金子の頭をいじる。
『うるさい。することないのかプロヒーローさんよ。』
『気を取り直して。最後に。ありがとう。俺はお前と親友でいれて楽しかった。バカやれて楽しかった。じゃあな。』
僕は泣いた。サンダーナイトが胸を貸してくれた。レースクイーンはお菓子とお茶を用意してくれた。
僕は親友を失ったんだ。それを背負って生きるしかないんだ。
「幸い明日まで時間はある。山野徹戦に備えてトレーニングだ。」
サンダーナイトはいつも僕のトレーニングに付き合ってくれる。ストイックなのかな。
「アタシも付き合ってやるからさ。」
レースクイーンがニカッと微笑む。
二人とも無理に明るく振る舞ってるのはバレバレだ。
「大丈夫。僕は…。」
金子の想いを背負って勝つよ。と澄んだ目で答えた。
ーーーーー
ほう!金子の坊やを始末しましたか!量産型メカブシドー!
素晴らしい。流石ザ・武士道を拉致した甲斐があったというもの。
天才ッ!凄いッ!なんてったって…
「『私が理』デスカナ?」
そうその通り!!!!そしてそのセリフを吐いたメカブシドー。私のセリフです。セップクなさい。
一体のメカブシドーが刀を腹に突き立て、虹色に輝き爆散した。
ーーーーー
ー準決勝ー
「ミセスオールキャンデー」vs「フィーバーカジノ」
「さぁッ!!さぁッ!!次の戦いもォッ!!対戦相手が出揃いましたァッ!!!」
「…」
お互い言葉を交わさない。
着装前を襲うのはヒーローとしてご法度。そんなことをした奴が真横にいると考えると言葉も出ないのは当然。
「赤コーナー! 飴玉のように甘くはないぞォッ!!!!喉に詰めたらごめんあそばせェッ!!!!!ミセス!!!!!!オー〜〜〜〜〜〜ルキャンデー〜〜〜〜〜!!!!!!」
歓声が上がる。わたしも売れたわね。ちょっと元気出てきたわ。
「青コーナー! 踏んだり蹴ったり大当たりィッ!!!!コイン輝くラスベガスゥッ!!!!!フィー〜〜〜〜〜〜〜〜バー〜〜〜〜〜カジノォ〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!」
こちらも歓声が上がる。犯人かもしれない怪しいヤツに歓声が上がってるのにムカッ腹が立つ。見た目が怪しいっての。
「それではいざいざ見合って見合って〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
「『『着装』♡』」
戦いの火蓋は落とされた。
と思ったのも束の間。
「ナァニィ?まだ戦闘も始まってないのに悲鳴なんて…。」
と悲鳴が上がった方を振り向くと、ザ・武士道モドキみたいなものが客席を襲っている。えっ?ザ・武士道はコアを砕かれて敗退したハズじゃ…。とか考えてる場合じゃないわ。大事なお客サンを襲うなんて何考えてるのかしら。どいつもこいつもヒーロー失格よ。
「一旦停戦と行くわよ。フィーバーカジノ。」
フィーバーカジノは何も言わない。無愛想なヤツ。一応わたしと同期よね?
そう。助けようとお客サンの下へ向かおうとした瞬間、フィーバーカジノにコアを砕かれたの。
「アンタ…なかなかの『悪』ね。」
「母ちゃんのためにやらなきゃいけないんだ…。」
フィーバーカジノの仮面の下の、泣きそうな表情は誰も知らなかった。
ーーーーー
あの日から1日。というかもうそんなものはどうでもいい。
ミセスオールキャンデーが不意打ちをされて敗退した。しかも「何かに気を取られた隙に」。
サンダーナイトとレースクイーンは気づいてなかったけど、僕は客席の黒い何かを見逃さなかった。このシルエットはザ・武士道…のはずなんだけど、ザ・武士道は敗退したはず…なぜなんだろう。これまでのようにまあいいかとはいかない。親友の死がかかっている。絶対に解き明かして復讐しないと。
「何考えてるか知らんが復讐ならやめとけよ。」
呑気に紅茶を啜るサンダーナイトの言葉だけは鋭い。
僕は燃え盛る復讐心をそっと胸の中にしまった。




