五話「軋み」
勝たなきゃいけないんだ。俺は絶対勝たなきゃいけないんだ。
勝つためならこれだって必要な犠牲なはず。
「そうだよ。大丈夫さ。私が許可する。」
頭の中であのおじさんの声がする。
母ちゃん。この戦いで絶対に勝ってみせるからね。
バラバラになったプリズムコアの破片を踏みつつ、控室を後にした。
ーーーーー
「♪」
「ツッたんお前サイバーファイト引退するのか!?」
サイバーファイトを引退し、実家に帰ると言うツッタンリズムに、サンダーナイトは目が飛び出るほど驚いていた。
「概念に実家とかあるのか?」
金子は当然の疑問を口にする。僕もちょうどそう思っていたとこ。
「♬~。」
「なるほどな。」
いやわかんないけど。逆にサンダーナイトは何でわかるの?
「ごめん言ってることわかんないかも…。」
僕は困りながらツッタンリズムの顔を見上げた。
「♪!」
「だから何度も言わなくてもわかってるって。」
「わかんねえよ。」
金子。ナイスツッコミ。
「要するに生まれが人間じゃなくても育ての親はいるだろってこと。」
サンダーナイトはツッタンリズムの手土産のスイカ(後で食べようと思っていたが帰ることにしたためもらってくれ、とのことらしい)をむしゃむしゃ食べていた。あ~!僕の部屋で種を飛ばすな!外にして~!!
ツッタンリズムがバスで帰るのを駅まで見送って、みんなで次の対戦相手について作戦会議することにした。
「次は準決勝だ。対戦相手はアーティスティックか山野徹…な訳だが。」
金子がホワイトボードに「アーティスティック」と「山野徹」と書く。
「山野徹って誰だ?アーティスティックはウチの後輩だが。」
人脈が広そうなサンダーナイトにも知らない選手がいるんだ、意外。
山野徹。あの電脳甲冑が「露出したプリズムコアとジャージだけ」の不気味な選手だ。ヒーロー名鑑には当然載ってない。
第一回戦、メタフィクションとの戦いも筋トレしながら横目で見ていたけど何が起きたのか分からなかった。というかメタフィクションって誰だっけ。どんな見た目なのかも思い出せないや、ヒーロー名鑑にも載ってないしマイナーヒーローなのかな。
「速報ですッ!!!レースクイーン、リーフ・シードラゴン、アーティスティックのプリズムコアが破壊された状態で発見されましたッッ!!!!!!3名は不戦敗ですッ!!!!!!!」
耳をつんざく実況の声。なんて?
「プリズムコアは自分では破壊できない。願いの結晶を破壊したいと思ってもそれすらも『願い』だからな。」
金子がホワイトボードをひっくり返しながら解説する。
「つまり『犯人がいる』ってことだ。」
サンダーナイトが鋭い目でホワイトボードを睨む。
金子がホワイトボードに犯人候補を書き込む音が聞こえる。
【犯人候補】
・ミセスオールキャンデー
・フィーバーカジノ
・山野徹
・スプラッシュ…ん?僕!?
「当然だ、お前にも動機自体はある。親友だって言ってもお前だけ信じる…とはいかんぞ?」
信じてくれよ金子~…。僕はそんなことしないよ~!!
バタン。
「ウチの大事な商売道具ぶっ壊したの、アンタじゃないでしょうねェ!!!!」
真っ赤な顔のレースクイーンが控室のドアをぶち破りそうな勢いで入ってきた。
ーーーーー
そんなに心配しなくて大丈夫だよ。キミだとバレないようにしておくから。
念のため敗退者全員の情報は控えている。情報を整理しようか。
・レースクイーン
コアを破壊した。直情的なので復讐に向かってくる可能性大。
・ブロックシェル
レースクイーンに負けて敗退し、帰宅。復讐可能性小。
・ザ・武士道
ミセスオールキャンデーに負けて敗退。拉致し処理をした。復讐可能性無。
・リーフ・シードラゴン
コアを破壊した。暴れられたら困るが、穏やかな性格のため復讐可能性中。
・創成王
リーフ・シードラゴンに負けて敗退。UFOで帰っていった。復讐可能性小。
・リミックス
フィーバーカジノに負けて敗退。拉致し処理をした。復讐可能性無。
・白露流五代目当主 黒座
ツッタンリズムに負けて敗退し、白露流生け花教室に帰宅。復讐可能性小。
・ツッタンリズム
スプラッシュに負けて敗退し、農家の実家に帰省。復讐可能性小。
・サンダーナイト
スプラッシュに負けて敗退。今はスプラッシュのサポーターに回っている。正義感が強いため復讐可能性大。
・メタフィクション
不明。「もう干渉する予定はない。」と残してどこかに消失した。
・アーティスティック
コアを破壊した。拉致し処理中。復讐可能性無。
・フレイマー
アーティスティックに負けて敗退し、実家のレストランに帰省。復讐可能性小。
収集。分析。処理。何事をするにも基本のキさ。




