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十話「私の私による私のための完璧なエンディング」

あれ?私が出るまでもなく終わった…?

この世界の「理」は私のはずですが…。まさか他に「理」が…?いやいやそんなはずはない。なぜならルールブックは一つのみだから。では上位存在による介入者が…?まあいい。


理。コトワリ。

「自分がルール。」

思考を持つ存在に崇められず、力を保てるもの。特定の状況=自分の司る物語の中なら基本的に思うがままに改変ができる。契約により眷属を従えることができる。

すなわち、私こそがこの「プリズム・ロワイヤル」という物語の王であり支配者なのです。そのはずなのですが。


そして、私の野望はプリズム杯の景品の何でも願いを叶えられるコスモプリズムにより、「この世界」の理から「更に上の世界」の上位存在になることォッ!!


シブキくんがパスを手に入れたのも!金子のガキが死んで覚醒したのも!プリズム杯でここまで勝ち上がれたのも!ぜーんぶ私の理としての因果律操作能力のお・か・げ。


仕方ない。主人公サン達から「王冠を奪い取りに」行きますよ。これまで頑張ってきたシブキくんが途中で敗退…。なんてぶっ飛んだ物語でしょう!そして物語のルールは…私が決められる。今決めた。ハイ決めた。優勝はフィーバーカジノに決定〜!


さあ、フィーバーカジノ。量産型メカブシドー共。リングに向かいましょう。


ーーーーー


「決勝進出おめでと〜!!!!」

クラッカーを鳴らすサンダーナイトとレースクイーン。

僕はサプライズにびっくりして、一瞬固まってしまった。

「ほら!ケーキもあるぞ!!」

僕の電脳甲冑のマスクが描かれたケーキ。こんなのどこで手に入れたのさ。


「二人で頑張ってケーキ作ったんだぞ?ちょうど用事が被った帰りにな。スポンジとクリームは俺が頑張ったぞ~?」

「ほらみなさいアタシのアートセンス!アンタの電脳甲冑そっくりでしょ?」

僕はサンダーナイトとレースクイーンが一緒に行く用事ってなんだよ、と笑みをこぼす。

「ほれほれ中学生のうちに甘いもん食っとけ!おじさんになると食べれなくなるぞ…。」

世知辛いサンダーナイト。クリームがウッとなるんだとブツブツ言っている。

「その前に…。金子も。」

モニターをケーキの隣に置く。

映像の中の金子はニッコリ微笑んでいた。


ーーーーー


ー決勝ー

「フィーバーカジノ」vs「スプラッシュ」


「さぁさぁッ!!!いよいよ最後の戦いですッ!!今大会、締めの対戦相手が出揃いましたよォッ!!!」


フィーバーカジノ…いつもニヒニヒ笑ってるのに裏ではこんなに暗いんだね…。

あ!というかコア砕き事件の犯人君なんじゃないの?ちょっと!あ〜呼ばれちゃった…!


「赤コーナー! 君の中身もポタポタと…!!!!!なんでもお見通しの天才中学生ッ!!!!!!!スプラ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッシュ!!!!!!」

三日もリングインをやってればもう慣れる。華麗なバク転と共に電脳闘技場に突っ込む。


「青コーナー! 踏んだり蹴ったり大当たりィッ!!!!ジャンジャンバリバリ!!レッツゴーバリ!!!!!フィー〜〜〜〜〜〜〜〜バー〜〜〜〜〜カジノォ〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!」

フィーバーカジノは静かに俯いている。


「それではいざいざ見合って見合って〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


「『『着…まで言いかけたところで、電脳闘技場に不穏な飛行物体が現れた。



君の負ける運命をじっくり見に来ましたよ~~~~~!!!!!!シブキくん!!!!!!


ーーーーー


観戦席からは悲鳴が上がっている。もちろん歓喜の悲鳴ではない。

量産型メカブシドーが観客の人々を襲っているからだ。そしてそれに対抗できる存在であるヒーローは…僕一人。フィーバーカジノが動かない様子を見るに彼にも動けない理由があるんだろう。


「俺は勝たなきゃいけない。プリズムコアを差し出してくれ。」

うつろな目で着装前のフィーバーカジノは懇願する。

なんで、僕は負けられない、負けるにしてもリングで負けたい。金子やサンダーナイト、レースクイーンやツッタンリズムに見せる顔がないからだ。しかもそんなこと言ってる場合じゃないし。あの化け物たちから守れるのは僕らだけなんだよ。


「お前がプリズムコアを差し出してくれればこの物語は終わる。だから。」

物語?何言ってんの?決着は熱狂するみんなに囲まれながら電脳闘技場の上でつけようよ。

「仕方ない。『着装』。お望み通り電脳闘技場に叩きつけてやる。」

そんなこと言ってる場合じゃないって何度言ったらわかるんだ。人の笑顔を守らないで何がヒーローだよ。何がサイバーファイトだよ。僕は観客席に向かって走っていった。


「『着装』!」青いスーツが体を包む。

「おめおめと行かせるとおもったか?甘ちゃん野郎がァッ!!!」

コインが足元で爆発し、のけぞってしまった。

「お前はァッ!!!!!!現実もォッ!!!何もォッ!!!!!!!!『知らない』『哀れな』『チェスの駒』なんだよォッ!!!!!!!!!!」

声で分かる。フィーバーカジノは泣いている。


「『簡易滴定(ライトドロップ)』。」

『中和滴定(ドロップ)』の派生能力。相手の思考の一部を開示する。今みたいに激情に覆われている時に使ったら何が理由なのかくらいは分かる。


ーーーーー


「大丈夫。俺はみんなのリフレッシュグリーンさ。」

俺はリフレッシュグリーン。電脳闘技場で戦う爽やかヒーロー。

泣いてる娘にはハンカチを。困るお父さんにはサッとタオルを。好き嫌いする子どもにはほうれん草を…。ともかく!比較的人気のあるヒーローだった。あの時までは。


「母ちゃん!!!!!母ちゃん!!!!!母ちゃん!!!!!!!」

俺の家はシングルマザー。父親が浮気ばっかで母ちゃんを置いて出てってしまったんだ。

そんな女手一つで育ててくれた母ちゃんが急に倒れて入院。今でも意識が戻らない。


入院費用の貯金もだんだんと減っていき、賞金も底をついてしまった。

勝てるように電脳甲冑もリメイクして賞金やグッズで稼ごうと一世一代の博打をしたが、それも失敗。


そんな時に手を差し伸べてくれたのがコトワリさんだった。

コトワリさんは俺の顔も電脳甲冑も新調し、別人として戦うことを提示してくれて数桁万円の資金援助までしてくれた。


だから俺はコトワリさんを裏切れねえ。博打に失敗した俺に、フィーバーどころか一文無しの俺に希望をくれた存在だからだ。


ーーーーー


フィーバーカジノは内側を暴かれて魂が抜け落ちたかのように茫然としてしまった。

「大丈夫。今度は君が守られる番だから。」

膝から崩れ落ちたフィーバーカジノを置いて、僕は客席に向かった。


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