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天災転移の帰還戦記 〜名前を忘れた少年は、高い戦闘IQと科学の牙で姉を救う〜  作者: んジャ
第1章:ルウィン・ヴァレンツ・アッカーマン誕生編
3/5

俺らの決意

いつも読んでいただきありがとうございます!第1話、第2話と、想像を遥かに超えるたくさんの方にブックマークやポイントをいただけて、画面の前でめちゃくちゃ手が震えています……!本当にありがとうございます!第3話からは、メルル村での本格的なバイトと修行編がスタートします。色々とストーリーを練り直して、自分でも一番熱いと思える展開を詰め込みました。主人公とサナ、そしてシラ師匠の関係性にも注目してもらえると嬉しいです。それでは、第3話どうぞ!

俺の異世界生活は厳しい日雇いバイトの泥臭い雑用から始まった。シラ・アイゼンバーグ。黒髪のエルフであり、今年で350歳を迎えるという元女剣士。それがサナの紹介で俺の師匠兼バイトの店長となった人物だ。

俺はちなみにこのメルル村で髪色が特殊な転移者として有名になり、”赤白の迷い坊”という愛称で呼ばれている。




「おい、手が止まってるぞ『赤白の迷い坊』! ほら、次は裏庭の薪割りだ!」




シラ師匠の容赦のない怒声が飛ぶ。ガチャの代償で白髪に赤い斑点模様という、まるで『錦鯉』のような姿になった俺を、村の人々は親しみを込めてそう呼ぶ。言葉はまだ完璧ではないが、彼らの温かい視線だけは伝わっていた。だが、この350歳のドS師匠だけは容赦がない。男には特に厳しいらしく、初日から今日まで筋肉が悲鳴を上げるほどの重労働を課されていた。




「くそっ……魔法なんてシステムに頼らなくても、地球の知識があれば……っ!」




俺は斧を振り下ろしながら、心の中で悪態をつく。2109年の地球でポータル研究に没頭していた俺には、どこかこの原始的な異世界を見下す傲慢さがあった。それを見透かしたシラ師匠に、挨拶代わりに一発ぶん殴られた痛みはまだ頬に残っている。だが、文句を言っている暇はない。この世界には転移者の記憶を奪う呪いがある。俺はすでに自分の名前を失っていた。唯一の家族である姉、彗(すい)の存在まで忘れてしまう前に、一刻も早く強くなって姉を救い出さなければならないのだ。




「赤白くん、これ……本当に凄いよ!」




夕方、バイトの休憩時間。サナが目を輝かせながら、俺の渡した小さな箱を見つめていた。村の廃材や、俺が地球から持ってきた僅かな精密部品を組み合わせて作った、サーモグラフィ搭載の万能小型ガジェットだ。




「赤白くん、これ……本当に凄いよ!」




夕方、バイトの休憩時間。サナが目を輝かせながら、俺の渡した小さな箱を見つめていた。村の廃材や、俺が地球から持ってきた僅かな精密部品を組み合わせて作った、サーモグラフィ搭載の万能小型ガジェットだ。




「周囲の熱源や生体反応が全部視える……。本当にありがとう!」


「気にするな。言葉もわからない俺を助けてくれたお礼だ。これからも、よろしくな! 必ず養父さんを見つけような!」



俺の言葉に、サナはガジェットを強く握りしめ、その瞳に強い炎を宿した。




「うん……! 実はシラ師匠もね、毎日王都へ行ったり森を探したりして、お父さん(養父さん)を必死に捜索してくれてるの。でも、全然手がかりが見つからなくて……。私、すごく不安だった。だけど、君が自分の名前を忘れてもなお、お姉さんを絶対に救うんだって決意した姿を見て、本当にカッコいいと思ったの」




サナは涙をグッと堪えるように、画面に映る熱源の光をじっと見つめる。




「私、今まで呪いが怖くて、お父さんやお母さんのいる元の世界に帰ることも、今の養父さんを助け出すことも、心のどこかで諦めかけてた。でも、もう絶対に逃げない。このガジェットがあれば、きっとお父さんを見つけ出せる。赤白くんに負けないように、私も修行して強くなる。そして、二人で絶対にお姉さんと養父さんを助け出そう!」




記憶を失う絶望の世界で、お互いの本当の名前すら知らないまま、俺に初めて背中を預けられる相棒ができた瞬間だった。



記憶を失う絶望の世界で、お互いの本当の名前すら知らないまま、俺に初めて背中を預けられる相棒ができた瞬間だった。




「──おい、色ボケてる暇があるなら裏の空き地へ来な。特訓の時間だよ」




木剣を肩に担いだシラ師匠が、底冷えするような笑みを浮かべて俺たちを呼んだ。特訓は、凄絶の一言だった。16歳の高校生としての戦闘IQ、そして地球で柔道経験者2人を倒したカウンターの技術。それらをフルに動員しても、350年の戦場を生き抜いてきたシラ師匠には掠りもしない。




「どうしたの、お前の自慢の『水』はそんなものかい?」




シラ師匠の木剣が容赦なく俺の体を打ち据える。

──だが、俺はただ殴られていたわけではない。この泥臭い特訓の最中すら、俺の頭脳は勝利への計算を止めなかった。


(──今だ!)


俺はあえて大振りの一撃を誘うように踏込み、シラ師匠の木剣をその身に受けた。肉が軋む音。だが、その至近距離こそが俺の狙いだ。手のひらをシラ師匠の足元へ向ける。放ったのは、蛇口から出るような、ただの、緩やかな水。シラ師匠の口元が「無駄だ」と嘲笑の形に歪む。だが、俺の狙いは彼女の身体ではない。彼女が踏み締めている「地面の土」だ。流体力学の計算が脳内を駆け巡る。緩やかに放った水を、シラ師匠の足元の土に一瞬で染み込ませ、そこに潜ませていたガジェットの超振動チップを起動

──土の中の水分を一気に沸騰させ、水蒸気爆発を起こした!




「なっ……!?」




足元が爆発し、さしものシラ師匠の体勢が初めて大きく崩れる。勝機はここしかない。俺は全神経を集中させ、右手の指先に水の魔力をかき集めた。極限まで水圧を高め、分子の隙間をなくし、厚さ数ミクロンの「刃」へと圧縮する。地球の工業用ウォータージェット、その原理を応用した、岩をも切り裂く絶対の斬撃──。




「貰ったぁ!!」




崩れたシラ師匠の首筋へ向けて、超高圧の水カッターが音を置き去りにして奔った。勝った──そう確信した。だが。




「──見事だね、けどまだ甘い」




ゾク、と総毛立つような気配。視界が反転した。シラ師匠は体勢を崩した体を引き剥がすように、あり得ない角度から木剣の柄で、俺の水カッターの「根元」

──つまり俺の手首を正確に叩いたのだ。水の刃が霧散する。圧倒的な戦場経験の差が、俺の完璧な計算を力技で叩き潰した。




「ぶはっ……!」




地面に転がされ、全身の痛みに顔をしかめる。あと一歩、あと数センチで届かなかった。350年の壁は、あまりにも高くて分厚い。




「……ふぅ。危なかったよ、迷い坊」




見上げると、シラ師匠が珍しく小さく息を吐きながら、冷や汗を拭っていた。その瞳には、今までのような侮りは一切なく、一人の「戦士」として俺を認めるような、温かい光が宿っている。




「魔法のルートを通らず、知恵だけでここまで私を追い詰めるとはな。……よくやった。お前のその泥臭い執念、嫌いじゃないぞ」




頭をゴシゴシと手荒く、だけど優しく撫でられる。ドSな師匠が見せた、初めての「飴」だった。




「だが、お前の目的を果たすにはまだ遠い」




シラ師匠は木剣を収め、真剣な眼差しで俺とサナを見つめた。




「来週から、さらにギヤを上げる。半年以内に、この村の近くにいる『ドラゴン2頭』を討伐してみせろ。それができたら……お前たちが目指すマレストラ王国の王都へ行く権利をやる」




半年で、ドラゴン2頭。姉を救うため、「赤白の迷い坊」となった俺の、本気の修行編が幕を開けた。

第3話「俺らの決意」、いかがだったでしょうか!

魔法が使えないなら科学と知恵で対抗する。そんな主人公の泥臭い戦い方や、サナとの本当の名前を知らないからこその絆を、どうしてもこの話でしっかりと描きたくて書きました。裏でサナの養父さんを必死に探してくれているシラ師匠、ドSだけどめちゃくちゃ格好よくてお気に入りのキャラです(笑)。

そしてラストで言い渡された、半年間でドラゴン2頭の討伐試練……!次回の第4話「史上最強のアルバイト」へ突入します。半年間の地獄の特訓を経て、主人公の「水カッター」がどんな進化を遂げるのか、そしてドラゴンを相手にどんな科学の知恵で挑むのか、ぜひ楽しみに待っていただけると嬉しいです!

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