追及
まもなくパーティ開始となるホールは、各国からの招待客で賑わいを見せ始めていた。
レイノルズはラジニア王国の王子二人を見つけ、挨拶に向かった。
「失礼、ランドン王子、セラム王子、この度はお越しいただきありがとうございます。」
「おお、これはレイノルズ殿下!お招きいただき感謝致します。」セラム王子が答えた。続けてランドン王子が尋ねた。
「妹、セシアナの留学を受け入れていただきありがとうございます。貴国にてしっかりと学んでおりますでしょうか?」レイノルズは待ち構えていたように聞き返した。
「そうでした。そのことでお尋ねがあったんです。王女はいったいいつまで滞在されるおつもりですか?期限の返答をもらわぬまま、王女が来られ、いささか疑問に思っておりました。何かの手違いでしょうか、いまだ返答をいただいておりません。王女はいつ、お戻りですか?」
二人の王子はばつが悪そうに視線をそらした。レイノルズはすかさず尋ねた。
「まさか…手違いではなく、わざと、期限を知らせず、王女を送ってきたのではありませんよね?そのようなあまりに非常識なことをされれば、この会場のすべての国々の方々に、白い目で見られますしね。それどころか信用を失って、…ラジニア王国は大問題を抱えることになりますからね。」ランドン王子が慌てて口を開いた。
「も、もちろん、手違いですよ!私たちは貴国に連絡が行っているものと思っておりました!」
「では、いつ、いつ帰国されるのか?」レイノルズは間髪入れずに聞いた。
「そ、それは…っ」王子たちは言葉につまった。
『なんとあきれた国か…。このような話になるかもしれぬと予想も立てられぬのか…。我が国もなめられたものだな。』レイノルズはあきれと怒りを抑えて、彼らに返事をさせないように続けた。
「答えられないということは、手違いなどではなかった、ということですね?あなた方は無期限で王女を我が国に送り込んだ。」
「ち、違う!本当に何かの間違いなんです。われわれは父からも期限を知らされておりません!ですから答えようがないのです!」セラム王子が慌てて取り繕った。
「ほう、なるほど。では、明日、王女を連れ帰っていただこう。妹君をただ家に連れ帰るだけ。何の問題もないですよね。」レイノルズの要求に、二人の王子は目を見開き、言葉を失っていた。やっとのことで、
「あ、明日というのはあまりにも急ではありませんか!?妹もまだ学ぶことが残っているはずです!」ランドン王子の返答に、レイノルズは声を上げて笑った。
「学ぶ?何をおっしゃっているのか…。王女は我が国に来られてからというもの、何も学ばれてはおりませんよ。ご兄弟ならば、それくらい想像するに容易いことでしょう。」王子たちは言い返すことができないでいた。
「留学という名目で期限もつけず、突然来られた上に何も学ぶ意思のない王女を、我が国においておく理由はありません。明日必ず連れて帰っていただく。なぜ連れ帰っていただきたいか、そしてなぜあなた方が連れ帰りたくないのか…、今この場で話してもかまいませんよ。」
二人の王子は完全に下を向いて、レイノルズを見ることができなくなってしまった。
「では、せめてこのパーティだけでも楽しんで帰られてください。失礼します。」レイノルズはその場をあとにした。そしてすぐにオルバーに耳打ちした。
「二人の王子に衛兵を六人つけろ。乗ってきた馬車にも見張りをつけるんだ。」
『これで約束は取り付けたといっていいだろう。だがあの王子たちも油断がならない。要注意だ。…あと、もうひとつ…、このグリナリア王国を甘く見たことを後悔させ、二度と歯向かえぬよう徹底的に潰しておくために、何か決定打を掴むことができれば…。』レイノルズは会場中に神経を張り巡らせるように、あたりを見回した。すぐにオルバーが戻ってきて、レイノルズに伝えた。
「セシアナ王女も一階奥の間で、衛兵五人と待機中です。」
「わかった。」レイノルズはオルバーとともに、奥の間に向かった。
『見ていろ…。ラーナに手を出したこと、必ず後悔させてやる!』




