当日
ついにパーティ当日になった。
外は絶好のパーティ日和だ。寒さはあるものの、雲一つない晴天が広がっていた。
あと数時間もすれば、パーティが始まる。すでに来客の馬車の音が聞こえていた。
『どうか、すべてが無事に終わり、楽しいパーティで幕が降りますように!』ラーナは心から祈った。
体調も良く、精神的にも落ち着いてきたので、ラーナは元の部屋へ戻ることになった。帰ってきた部屋は、ほんの少ししか空けていないのに、久しぶりの帰還のように思えた。
「お茶を入れてきますね。落ち着いたら、パーティの準備に入りましょう。」と、カイリが言って、テスとハンナと一緒に控室に向かった。ラーナはドレスが入っているトランクを見つめた。
『これを着て…レイルと踊るんだ。』そう思ったとき、ノックの音がした。ケビンとノーランがドアを開けると、レイノルズとオルバー、ザラとイオスの四人が入ってきた。
「ラーナ!ほら、いつものように、”おはようのハグ”だ!」と言ってザラが両腕を広げた。すぐにレイノルズが、ザラにハグした。
「お前じゃねーよ!」ザラがジタバタしている間に、イオスが、
「ラーナ、おはよう。」とハグをした。レイノルズとザラが怒り狂おうとしたそのとき、
「ちょうどよかった、今お茶が入りましたので、皆さまでどうぞ。」とカイリがやってきた。
『カイリ、ナイスフォロー!』ラーナは心の中で拍手した。
「カイリ、お茶も入れれるようになったのか?」イオスが聞いた。
「はい、ラーナ様付きになってからは…。ラーナ様のお体の具合が悪いときもありましたので、私が知る限りのお茶をお入れして、回復の助けになればと。」カイリの答えに、
「レイノルズ、お前、負けてない?」ザラがそう言うと、レイノルズが目くじら立てて反論した。
「そんなわけないだろ!それにカイリは俺の側近…」そこでカイリが割り込んだ。
「陛下より、引き続きラーナ様のお世話を命ぜられましたので、私はしばらく殿下のところへは戻れないかと思われます。」
「なんでだ!?」
「とにかく!お茶を一杯お召し上がりください。」カイリが諫めるように言った。
皆が一瞬静かになり、それぞれがティーカップへと手を伸ばした。
『カイリの入れてくれるお茶を飲むと、いつも心が落ち着く。みんな、飲むべし!』ラーナはおかわりももらった。
しばらくたったあと、カイリが一呼吸おいて言った。
「何か、大事なご用事があったのではないですか?」レイノルズがハッと我に返ったように言った。
「そうだった。ラジニア王国のランドン第一王子と、セラム第二王子が到着したと連絡が入った。このあと、俺とオルバー、騎士三名でセシアナ王女を二人の王子の元につれていく。何事もないよう取り計らうつもりだが、用心だけはしていてくれ。」
「はっ!」カイリ、ケビン、ノーランが返事をした。
「じゃあ俺たちは会場偵察にでもいってみるか?」とザラがイオスに言ったそのとき、ドアの向こうの廊下で、どよめきと、走るような音がした。何か異常事態が起きていると皆が悟った。
ケビンとノーランが急ぎドアに駆け付け、両ドアの取っ手にヒモを巻き付けてしばり、誰も入って来られないようドアを支えた。
誰かが無理やり入ってくるのではと怯えているラーナのまわりを、男性陣がいつの間に囲んでいた。
そしてドアの前で音が静まり、コンコン、とノックの音が響いた。皆がゴクリと唾を飲み込み、誰が名乗ってくるのかを待っていた。そして誰もが、そこに立っているのが、彼女ではないことを願っていた。だがその願いは虚しくもすぐさま崩れた。
「ラーナ様、私です。セシアナですわ。」ラーナは条件反射のように震えだした。すぐにテスとハンナが抱きしめてくれたが、震えは収まらなかった。




