妹
「とにかく今日はゆっくり休んでちょうだいね。明日も何もしなくていいわ。あ、そうだわ!明日ザラとイオスが来るわよ。」と、メルリーナが言うと、ラーナの目が輝いた。
「明日ですか!?」
「ええ、レイルが頼んだみたいよ。先に話したいことがあるとか言って。あなたたち、とても仲が良かったものね。久しぶりに楽しみなさいな。」そう言って、メルリーナが席を立った。そして急に悲しげな顔になって、つぶやいた。
「ねぇ、ラーナ。私も…私も、前から…そして今も、あなたのこと、妹のように思っているわ。だから、だからね!………いいえ、なんでもないの。私ったらこんなときにズルいわね。じゃあ、また明日ね。」
メルリーナが帰った。
『最後に言われた言葉…、あれはなんだったんだろう。』部屋は静まり返り、カイリがお茶の準備をしてくれる音だけが響いていた。
「ねぇ、お兄様。」ラーナの呼びかけに、フィルはビクッと体をゆらした。
「さっきのメルリーナ様、何がおっしゃりたかったのかしら?」ラーナの問いに、フィルはカーテンを開けて窓の外を見ながら、
「さぁ、なんだったんだろうなぁ。」と、声を裏返らせた。フィルは噓をつくのが下手だ。そこにカイリが入ってきて、
「フィル様、いずれわかることです。それにラーナ様も、フィル様が何か隠していることに気付いておられます。」と助けてくれた。
「真っ暗闇の外を見て、何してるの?お兄様。」ラーナは少し意地悪に言ってみた。
「はぁ…」と大きなため息をついて、フィルがあきらめたように言った。
「お前が眠っている間に、王家の四名がこの部屋に来られたんだ。」
『!?…ってことは、レイルもいたのね。』
「俺と父上は先に到着していて……父上が、お前とレイノルズ殿下の婚約破棄を申し出たんだ。」
「!?」ラーナは声が出なかった。
「当然のことだよ。さっきメルリーナ様が言われたように、王家はラーナに甘え過ぎていたんだ。その結果がこれだ。父上が怒るのも無理はない。俺でも同じことを言ったと思う。」
『…そう、かもしれない。私が親の立場だとしたら、同じように思うはずだ。でも……』
「それで、陛下は許してくださったの?」ラーナが不安気に聞いた。
「いや、その前に殿下が譲歩案を出された。”パーティの終了と共に、今回の件も収束させる”と。二日間待って欲しいとのことで、お互い了承して終わってる。ただし、それまでにお前の身に何かがあれば、その約束も無効だ。」フィルからも少し怒りを感じた。
「そんなことがあってたのね…」カイリがくれたお茶を飲みながら、ラーナがボソッと言った。
「メルリーナ様は以前からお前をかわいがってくれている。おっしゃっていることは本心なのだろう。本当ならば、”何があろうが婚約破棄だけは回避してくれないだろうか?”、と伝えたかったのかもしれない。だが殿下が父上に約束された手前、メルリーナ様が横からお前の気持ちを揺るがすのは、ルール違反だと思われたんだろう。まっすぐなお方だからな。」フィルは少し微笑んだ。




