証拠
「それで証拠が出てきましたの。」
メルリーナの言葉に、皆が、カイリまでもが、
「え!?」と大声を上げた。
「どこから…何が出て来たのですか?」フィルが恐る恐る聞いた。テスとハンナは部屋の端でブルブル震えている。
「もちろん、セシアナ王女の部屋から。と言いたいところだけど、正確には、王女の部屋の隣、主に彼女の侍女が使っている控室の食器棚からよ。」メルリーナの言葉に、カイリが言った。
「それは、もはやセシアナ王女の部屋から出た、と言って良いのではないでしょうか?」それに対してメルリーナは反論した。
「そうはいかないの。なぜなら王女は、”私は何も知らない”、と言っているのだから。さらに侍女も、”自分のものだ”とね。」
皆言葉を失っている。
「メルリーナ様!いったい…いったい何が出て来たのですか?」ラーナがいてもたってもいられず尋ねた。
「…ノコギリよ。宮廷内では、庭師が木の剪定や枝打ちに使うための専用のものよ。」
「!?」
『そんなものを使えば、もしかしたら馬車への細工も…可能かもしれない…。』ラーナの考えに被せるようにメルリーナが言った。
「しかもそのノコギリの刃には、木片が付いていたの。馬車の車輪の破損部分に剥き出しになっている木材と、同じような木片がね。」
「それは…もう…」フィルがボソッと呟いた。
「ええ、調査員たちも話を聞くために侍女を拘束したわ。」メルリーナは遠くを見るように続けて言った。
「自分の侍女が連れていかれたというのに、王女は平然と笑っていたそうよ。その侍女に、少し同情しましたわ。」
皆が目を伏せた。
「ですが、とりあえず、敵の力は半減したといっていいのではないでしょうか?おそらく実行犯は侍女で、主犯が王女と考えるのであれば。」とフィルが少し安堵したように言った。
「フィル、甘いですわよ。先ほども言ったように、例え侍女が連れていかれようが、不敵に笑っているような人間です。そのまま諦めるような女ではありませんことよ。」メルリーナが低めの声で言ったために、皆がゾッとしていた。
「いよいよ明日が、王女にパーティの開催を告知する日です。そして明後日のパーティでは…彼女も拘束するつもりで臨まねばなりません。何かしら尻尾をつかめればいいのだけど……。ラーナ、あなたが元気だとわかれば、明日、王女は必ず、あなたに危害を加えます。」メルリーナが断定した。だがそれはまぎれもない事実だ。皆それがわかっているから、何も言わずにいる。
「なんとしてでも、あなたをパーティに参加させることを阻止してくるでしょう。そして自分がレイルにエスコートしてもらい、パーティの主役、あわよくば婚約者候補のように振舞うに違いありません。」
『そんなこと…させたくないっ!でも……』ラーナは無意識に歯を食いしばっていた。
「悔しいですが、ここは彼女の思うように流した方が、良いかもしれません。」
『…メルリーナ様の言う通りだ。王女を油断させるためにも、流れにのった方が賢明だろう。』
皆がそれぞれ試行錯誤していた。カイリが、
「では、予定としてはラーナ様はレイノルズ殿下と出席ということで、万が一変更せざるを得ないときには、そのままそれに準じた行動をとる、ということでよろしいでしょうか?」と、まとめた。
「そうね、それが一番得策だと思うわ。そうすることが、ラーナの身を守ることにつながるのだしね。忘れないでね、我々の一番の目的はラーナを危険から守ることよ。」メルリーナの鋭い声に対して、
「はっ」と、カイリが返した。




