約束
「この情報は期日ギリギリまで極秘とする。知らせるのは前日だ。あの者にはそれで十分だ。どうせ日々何もしておらぬからな。それに早めに耳に入れば、それだけ早くラーナに危害を加えようとするだろう。それでなくても最近おとなしい分、余計に気味が悪い。」
皆暗い顔で黙って聞いていた。
「もうひとつ、これは吉とでるか凶とでるかはわからないが…ラジニア王国の第一、第二王子も招待する。」
「!?」驚きの息が漏れていたが、レイノルズはそのまま続けた。
「必ず来ると踏んでいる。なぜならあの王女がこのグリナリア王国にうまく残れるか気になっているはずだからだ。偵察には良い機会だと思うだろう。まぁ、妹が世話になっているのに、招待を蹴るなど…できないだろうがな。」レイノルズはフンと鼻を鳴らした。
「殿下、パーティー自体は、いつ開催予定ですか?」カイリが聞いた。
「可能な限り早くしたいところだが、急いだとしても二週間後だ。」
『国外からも招待するなら、二週間後は十分早い。でも…長く感じてしまうのは、早くこの状況から抜け出したいという気持ちが、そうさせているのだろう。』ラーナは膝の上で、両手をギュッと握りしめた。
「正確な日時は決まり次第教える。それまでなんとかラーナを頼む。話は以上だ。ラーナは客の招待のことで話があるから残ってくれ。あとでオルバーに送らせる。」レイルがそう言うと、皆が解散となった。
二人きりになったあとで、レイノルズが隣に座ってきた。右手をラーナの頬にあて、美しい瞳でのぞきこんでくる。
『ほんとにきれいな瞳だな…』ラーナが見とれていると、レイノルズが言った。
「なんで、騎士団の練習場だったんだ?」
『あれ、パーティーの話じゃない…。しかもさっき話したことなのに。』ラーナが答える前に、
「いや、違う。これはさっき聞いたな…。」レイルはいつものように、髪の毛をクシャっとつかんだ。
「なんで…ザラとイオスを思い出したんだ?」
「え!?」ようやくラーナは声を出した。
「なんで思い出したかって……レイルがサーシア国とタルビア国の話をしたからだよ?」
「そういうことじゃないんだ…」レイルは苦しそうだ。
「彼らは私たちを弟、妹みたいにかわいがってくれたじゃない!?それを思い出して何がいけないの!?」ラーナは混乱してきた。それを感じ取ったレイノルズは、自分の醜い嫉妬心を抑えようと、呼吸を深くした。そして、
「ラーナ…お前を籠の中に閉じ込めてしまいたい。」とつぶやいた。
「……閉じ込めてどうするの?」ラーナの質問に、
「そうすればお前を見てくる男からも隠せるし、あの王女にも手出しはさせない。」と返してきた。
「……逃げ出して二度と帰ってこないかも。」ラーナの答えに、レイノルズは、
「ああ、知ってる。どんなにその籠の中が安全だとわかっていても、ラーナは自由を選ぶ。それがラーナだ。わかっている。わかってはいるんだ。でも…俺はやっぱり、お前のこととなると、理性をたもてない…。情けないし、かっこ悪い。すべては俺の嫉妬なんだ…。」と切なそうに吐き出した。
『ほんとに…将太のころと一緒だね。俺様レイルと、嫉妬心をさらけ出す将太の融合。レイルも苦しいのかな…。』
ラーナは両手でレイノルズの頬を包んだ。そしてそっと、レイノルズにキスをした。
レイノルズの目は大きく開かれたまま、ラーナは唇を離して言った。
「好きよ、レイル。あなたを愛してるわ。」
レイノルズの目が潤んだように見えた瞬間、すごい強さで抱きしめられた。
「ラーナ!ラーナ!」レイノルズは泣き叫ぶかのように繰り返し、ラーナの名を呼んだあと、
「ずっと、ずっとその言葉を待ってたんだ。ラーナの唇から、その言葉がささやかれる日を…夢見ていたんだ。」と言って、ラーナを見つめたあと、何度も何度も、激しくキスをした。ラーナの心臓の音がうるさいくらいに鳴っていた。レイノルズの、自分に対する想いの深さを目の当たりにして、
『ああ、この人を幸せにしたい。』と、ラーナは心から思った。




