策
移動の途中で、レイノルズが歩きながらラーナに話しかけた。
「次からは王家専用練習場にしてくれ。そのときは護衛も増やすことにする。」ラーナが、不思議そうに言った。
「なぜ?そこまでしてもらうなら、騎士団員のところで練習した方が早いよ。」レイノルズのこめかみがひきつった。次の言葉を発する前にカイリがサッと真横に来て、レイノルズに耳打ちした。
「ラーナ様は無意識かつ無自覚で動かれる方です。そのような方に殿下の独占的な考えを押し付けても、喧嘩にしかなりません。これからの話し合いにも支障がでるでしょう。どうかお気を鎮めて下さい。」レイノルズは両手の拳にグッと力を入れて、部屋まで黙って歩いた。ラーナは相変わらずポカンとしていた。
レイノルズは仕事用の椅子に腰かけ、ラーナ達4人は歓談用の長椅子に座った。オルバーは部屋の外で見張りをした。しばらくしてレイノルズが言った。
「セシアナ王女の歓迎パーティーを催すことになった。」
「!?」一瞬皆の息が止まった。
『今更!?歓迎なんてしてないし、王女のためのパーティーなんて開いたら、彼女どれだけ図に乗るかわからないわ。ただ、何か考えがあってのことなのよね。みんなそう思っているから、驚いてはいるけれど、レイルの次の言葉を待っているんだ。』
「歓迎といっても名ばかりのものだ。開催にあたり、他国の王室にも招待状を出す予定だ。特に同盟国である東のサーシア国とタルビア国には今の状況を伝えた上で、協力してもらうことになった。」
「!?」皆引き続き呼吸ができていない。しばらくしてラーナだけが思い出したように息を吹き返した。
『ハァ、ハァ……問題が国際化している!』
「王女の年齢を加味して、各王家の年若いものを招待するつもりだ。これでおそらくあの者も気が緩むはずだ。」
『なるほど…自分のために各国の王子が集まる…。そう受け止めれば、気分も良くなるだろう。ん?サーシア国とタルビア国というと…!』
「ザラとイオスも来るの!?」ラーナは嬉しくなって聞いてしまった。二人ともたびたびグリナリア王国に留学や交流にきて、ラーナを妹のようにかわいがってくれていた王子たちだ。久しぶりに旧友に会えると思うと、この暗い話題のなか胸が弾んだ。
「………その予定だ。」レイノルズはひどく不機嫌そうに言った。
『楽しみだわ!』ラーナの目が輝きだしたのを見て、レイノルズが口を開こうとしたところに、カイリが口をはさんだ。
「と、いうことは、ラーナ様…パーティーには参加しない方が良いかもしれません。もしくは参加できないように、王女が動くかもしれない。」
「あ…」ラーナは言葉を失った。せっかく久しぶり喜びを味わえたかと思いきや、一気に叩き落された気分になった。しょんぼりうつむくラーナを見て、レイノルズが言った。
「ラーナは私の婚約者だ。参加しないわけにはいかない。パーティーに出席している間は、あの者も手出しはできないだろう。ただし、出席できれば…の話だ。」急に沈黙が訪れた。
「あの者のことだ。おそらくどんな手段を使っても、ラーナを参加させないようにしてくるだろう。」
『そんな…そんな理不尽なことが、どうして許されるんだろう…』
ラーナはグッと涙をこらえた。




