息抜き その二
それからというもの、セシアナ王女は気味が悪いくらい、何もしてこなかった。
『城の中にいても冷や冷やするだけだわ…』ラーナは考えて、
「ケビン、剣の練習に付き合ってくれないかしら?」とお願いした。ケビンは嬉しそうだがカイリがしぶった。交渉の結果、苦肉の策として騎士団の練習場で行うことにした。その方が万が一王女が手を出して来ようとも、ラーナを守れる人数が多いからだ。
ラーナが練習場につくと、騎士団員が全員、顔を赤らめて押し寄せてきた。
「ラーナ様、お久しぶりです!」
「ラーナ様、お元気でしたか!?」
「ラーナ様、俺寂しかったです!」
「ラーナ様、いつでも練習にこられてくださいね!」などと皆好き勝手言っているが、熱烈歓迎を受けているようだ。ケビンが、
「皆、各自練習に戻るように!ラーナ様は今から俺と稽古だ。」というと、大ブーイングが起きた。
「ケビン副団長だけ昔からラーナ様とばっかりじゃないですか!」
「俺たちもラーナ様と練習させて下さい!」
「ラーナ様、副団長とでは勝てないのでおもしろくもないですよ!」
「お、お前たち!俺はラーナ様の剣の上達を考えてだなっ…」ケビンもタジタジになっている。
『確かに、指導者としては素晴らしいんだけど、だからこそケビンには勝てないんだよなぁ。あ、でも元々騎士団員にはあまり勝てなかったか。』などと考えていると、
「ラーナ様!この前の手当のお礼に、私にお相手させてください!コテンパンにやられてみせます!」とノーランが大声で妙なことを言った。すると、
「ノーラン、お前……手当とはなんだ!?」
「ラーナ様に手当してもらったのか!?」
「どこをだ!?どんな風にだ!?」と、今度はノーランが大ブーイングを受けた。
『なかなか練習始められないな…』ラーナの横で、カイリも「ハァ…」と大きなため息をついている。
すると向こうから、
「なんの騒ぎだ?」と聞き慣れた声がした。レイノルズだった。オルバーも後ろからついてきていた。
騎士団全員が片膝をついた中、ラーナだけ一人立っていた。それを見つけたレイノルズがラーナの前までやってきて、
「何をやっているんだ?」と少し苛立ち気味に言ってきた。
「剣の練習をするところだったの。」ラーナが何食わぬ顔で言った。
「カイリ、どういうことだ。」と今度は威圧的に聞いてきた。
「ラーナ様がご希望されたので、今のこの時期でしたら、騎士団の練習場の方が良いかと判断したためです。あくまで、今のこの時期を考慮してのことです。これだけたくさんの団員もおられますし。」カイリはすました顔で言った。レイノルズはカイリをひと睨みしてラーナに向き直った。
「話がある。戻るぞ。ケビン、ノーラン、お前たちもだ。」レイノルズの声に、
「はっ!」と言って二人が動き出した。団員たちが寂しそうに言ってきた。
「ラーナ様、また来て下さいね。」
「俺たち、待ってますんで!」
「ラーナ様、俺ならいつでも負けて差し上げます!」この最後の言葉にラーナは思わず笑ってしまった。
『笑うの、久しぶりかも。ここに来てよかった。』
「失礼ね!手抜きしたら承知しないわよ。また今度お願いね!」と言って、ラーナは団員たちに手を振って去った。団員達は、ホ~…と、ラーナに見とれながら見送った。その間団員たちに送られたレイノルズの睨みに、彼らが気付いていないのが幸いだった。




