謝罪
「誰も通すなと言っただろう。」レイノルズが怒っている。
彼の部屋で、本人は仕事用の椅子に腰かけ足を組んでいる。机越しに、カイリ、オルバー、ケビン、ノーランが並んで立っていた。ノーランは左頬が赤い。
ラーナは歓談用の椅子に座ったまま、ハラハラしてその様子を見ていた。
「ケビン、ノーラン、入り口はお前たちに任せたはずだが。」
「申し訳ございませんでした!」二人が頭を下げた。
「謝罪が聞きたいわけではない。なぜ、私の命令を無視して、あの者を通したかと聞いている。」
『もうセシアナ王女のことを、”あの者”呼ばわりしているわ。相当怒っているわね。』ラーナは顔を上げていられない。
「私がセシアナ王女の行動を予測できなかったことが原因です。」ケビンがうつむいた。
「殿下、私が悪いのです!」ノーランが必死の表情で声を張り上げた。
「私が王女の入室を止めようとした際、彼女の平手打ちをよけることができなかったのです。その隙をつかれました。申し訳ございません!」
『だから頬が赤いのか…かわいそうに。手当してあげれないかしら。』ラーナが考えていると、
「そういうことでしたら、殿下、私に一番の責任がございます。」オルバーが入ってきた。
「私は実際何度もこの扉で、王女と対峙して、暴言や暴力を振るわれた体験があります。それなのに、その事実をケビン殿やノーラン殿にしっかりと説明しておりませんでした。相手が物取りや強盗でしたら、思いっきり戦うこともできるでしょうが、客人であり、隣国の王女です。躊躇されるのも無理はありません。そういったことが何度も起きているということを、私が予測してお話しておくべきでした。お叱りは私だけに留めていただけないでしょうか。」
『オルバー…、冷静かつ切れ者だ。こんな言い方をすれば、レイルにも責任が生じてくる。それを自分だけに被せるように言うことで、レイルにも文句が言えない、若しくは本来なら逆に謝罪が必要かもしれない、という微妙なラインを攻めてきている。』
しばらくの間、レイルは黙ってオルバーを見ていた。その後、向こう側で緊張してうつむいているラーナに、チラッと視線を移した。そして、ハァ…とため息をついて、
「悪かった。」と呟いた。四人が驚いたようにレイノルズを見た。
「お前たちの責任ではない、どうにもできない俺の八つ当たりだ。すまない。」レイルの言葉に、皆が戸惑っていた。
「これから父上と話し合いの場が設けられている。今回のことも話してくる。」レイノルズが席を立った。
「それでだ…俺からの頼みだ。ラーナが危ない。少しは自重してくれるかと思い、強行な手段に出たが、逆に火に油を注いでしまった。おそらくあの者は、自身の怒りだけで、ラーナを狙ってくるはずだ。どうか、彼女を守ってやってくれ。」レイノルズが頭を下げた。皆が動揺している中、カイリが、
「殿下、頭をお上げ下さい。私たちは殿下を、そしてラーナ様をお守りすることが使命です。必ず守り抜きます。ですので、本日のお話合いで、どうか良い策をお持ち帰りください。」と頭を下げた。
レイノルズがフッと笑って言った。
「礼を言う。では行ってくる。ラーナを頼んだぞ。」
「はっ!」
そしてラーナのところまでくると、レイノルズは片膝をついて、手の甲にキスをした。
「ラーナ、すまない。もうしばらく耐えてくれ。」
そう言うと、オルバーと一緒に部屋を出て行った。




