追憶
しばらくの間、ラーナは呆然とレイノルズを見つめていた。レイノルズも何かを確かめるようにラーナを見ていた。
『レイル……前世の、将太の記憶を思い出してくれたの!?』ラーナの鼓動が早鳴る。
そのまま時間だけが過ぎ、レイノルズに透き通った将太が重なって見えた。久しぶりに見えた将太に、奈央は泣くのを必死でこらえていた。レイノルズはそんなラーナに気付き、何かを思ったのか顔を背けて、
「そんなわけないよな。お守りなんて、これが初めてだ。」と、言い聞かせるように言った。
『二度目だよ…』と言おうとして、ラーナはハッと我に返った。
『いけない!』将太の影を見ないようにして、ラーナは必死で取り繕った。
「初めてだよ。だから、ちょっと不細工な出来上がりだけど、私が大切にしていたものに思いを込めて作ったの。」それを聞いたレイノルズが、
「大切にしていたものって…俺がもらっていいのか?」と心配そうに聞いてきた。
「レイルが一番大切。だから持っていて欲しいの。」その言葉に、レイノルズはキュッと唇を噛んで、ラーナを抱きしめた。ラーナもそっとレイノルズの背中に腕を回した。
「ラーナ…前にした約束覚えてるか?」その質問に、ラーナはコクンとうなずいた。
「その答えを、今聞かせてくれるか?」ラーナの胸はドキドキと音を立てていた。言うことはもうすでに決まっている。ただ、いざとなるとやはり緊張するものだ。ラーナが意を決して口を開けた瞬間、部屋の外でどよめきが起こった。
レイノルズが深いため息をついた。
「ラーナ、すまない。そのままでいてくれるか。彼女にも目を覚ましてもらわねばならない。」と言って、突然ラーナに口づけした。その直後に、バタン!とドアが開いた。セシアナ王女だった。二人のキスシーンに出くわした彼女は、その目つきだけで、人を倒せそうなほど、恐ろしい形相になっていた。そしてレイノルズがゆっくりと唇を離して立ち上がった。
「セシアナ王女、以前から申し上げておりますが、突然ノックもなしに人の部屋に入るなど、他国からの客人であろうが、王族としてするべき行為ではありません。礼を欠くにもほどがあります。一度お引き取り下さい。」レイノルズの言葉に、王女は、
「まぁ、何もやましいことがなければ、いつ来客があってもよろしいのではなくて?」と返した。
「やましいこと?それはこのようなことですか?」と言ってレイノルズはラーナの手を取り、立たせたあと、左手は腰に回し、右手でラーナの顎を持ち上げ、再度口づけしてきた。王女は、顔を真っ赤にして金切り声を上げた。
「そういうことですわ!」両手をわなわなと握りしめて、怒りを爆発させる寸前だ。
「それはおかしいですね。婚約者にキスすることは、やましくなどありません。私たちが久しぶりに、二人の時間を楽しんでいたところに、あなたが急に入ってきた。婚約者との逢瀬をこのように邪魔をされて、私の方が怒りたい気持ちなのですよ、王女殿下。」言葉の最後には、本当に怒りが込められていた。対する王女も怒りで震えが止まらないまま、何も言うことができず、ラーナを鋭い目でギリッと睨んだ後、ツカツカと部屋を出て言った。




