お守り
お茶のテーブルをはさんで、ラーナとレイノルズは静かに座っていた。レイノルズはふてくされたような顔をしていて、何も話そうとしなかった。それでも、用意してくれたお茶からは、彼の温かみを感じることができる。ラーナは、
「いただいていいかしら?」と顔を上げた。レイノルズは、
「お前のために用意したものだ。」と、横を向いたまま答えた。ラーナは気にせずにティータイムを楽しむことにした。なんだかんだ言って、二人きりでお茶を楽しむのは、数か月ぶりのことなのだ。
「おいしい!私の好きなものを覚えていてくれたのね。ありがとう!」ラーナがそう言うと、レイノルズは席を立って、ラーナの隣に座った。そしてラーナを近くで見つめながら、
「お前のことなら、何一つ忘れたことはない。」とささやくように言った。
ラーナの心臓がキュンと鳴った。
「ラーナは?ちゃんと俺の事、忘れずにいてくれたか?」レイノルズが少し切なそうな顔で続けた。ラーナはクスッと笑って答えた。
「忘れるわけないでしょ。離れてた間、あなたのことを思い出しては、会いたくて心細くなってた。工事、成功したのね。すごいわ!」
言い終わらないうちに、ラーナは抱きしめられていた。
「ラーナに会うために終わらせたんだ。一日でも早く終われるように…自分で言うのも変だが、最大限に努力したつもりだ。ようやく完成して、あとはラーナの帰りを待つだけだったのに……あいつが来た!」レイノルズが歯を食いしばる音が聞こえた。
「俺は、お前にしか触れられたくないんだ…。なのにあいつが、断りもなく触れてくる!触れたいお前には触れることができずに、触れられたくないやつからは執拗に触れられる……俺は限界だったんだ。」最後には声がかすれていた。
『レイルにとっても、あれはストレスでしかなかったのか…』
ラーナは帰城直後、彼に言ったことを反省した。するとレイノルズが腕をほどいて続けた。
「その上、お前が大変なことになったと、カイリから内密に聞いた。」
『カイリ、レイルには言ったのね。』ラーナは顔を伏せた。
「お前を守るために、俺の協力が必要だって言ってきた。」
『……彼なりにいろいろ考えた結果、レイルに話したのだろう。』ラーナが黙っていると、
「お前を守るのは、俺だけのはずなのに…。今は俺にはお前が守れない…。悔しいが、カイリやケビンに頼るしかない……。でも、あんな風にお前が抱き寄せられているのを見ると、どうしても黙っていられないんだ!」膝の上で組まれた両手に額を乗せ、前かがみになりながら、レイノルズが泣きそうな声でいった。
レイノルズの呼吸が落ち着くのを待って、ラーナは彼の腕をつかみ、その手の中に、小さな巾着袋を握らせた。レイノルズは不思議そうに顔を上げ、自分の手の中にあるものを見た。
「お守り。」ラーナが微笑んで言った。
昨日見たくもない夢を見たあと、ラーナは思い立って、レイノルズにお守りを作ることにした。なんせ二人にとって初めての強敵が、あのセシアナ王女なのだ。神頼みもしたくなる。せっかく出仕も休むことにしたし、この時間を利用しようと考えた。さらには、奈央時代の夢を見て、いろいろ思い出したのも理由のひとつだ。高校受験前に渡した、手作りのお守りのことも…。
今回は、しおりにして大事にとっておいた四つ葉のクローバーを使うことにした。効果のほどは不明だが、そのクローバーに祈りをこめて光をあててみた。そしてそれを手作りの巾着袋に入れて出来上がりだ。
レイノルズはまじまじとお守りを見つめていた。そしてラーナに視線を移し、
「ありがとう。」と、こちらが切なくなるほどの笑顔で言った。そして続けた。
「……前にも……あったよな?…こんなこと…」




