息抜き
「キーンッ!ガキッ、ギギッ!」剣がぶつかる音が鳴り響く。
ラーナは一日休んだあと、その翌日からは出仕した。休まずに登城することも考えたが、毒を飲んだにもかかわらず、翌日にはケロッとしているのも、逆に怪しまれると思ったのだ。一日くらい休んだ方が、あちらも油断してくると踏んだ。もしかすると、もう出仕などできない状態と思っているかもしれないが。
『そうは問屋が卸さないわよ!』ラーナは怒りを込めて、剣を振った。
「ビュン!」空振り。
ストレスを抱えたまま出仕するのも性に合わないと、ケビンに頼んで王家専用練習場で、久しぶりに剣の相手をしてもらうことにした。
「ラーナ様、怒りに任せて振るだけではダメです!一つ一つを冷静に振って下さい。」ケビンはこんな風に相手を見て、的確に指導するのが上手だ。今回の手合わせでもラーナの癖を知っているため、結局、
「キーン!」と、ラーナの剣が飛んでいった。同時にケビンの剣の力で押されて倒れそうになるのを、彼に腰を支えられ抱き留められた。
「ありがとう、ケビン。副団長の剣さばきは健在ね。さすがだわ!」ラーナが顔を上げて言った。ケビンは少し頬を染めて、
「ラーナ様は、少し腕が鈍りましたね。」と微笑んだ。
「言ったわね!ケビン副団長、もう一戦お願いするわ。次は負けないわよ!」ラーナが言った直後に、
「そこまでだ。」突然声が響いた。声の方を見ると、城から続いている内廊下から、レイノルズが歩いてきていた。
ケビンはラーナから手を放し、側にいたノーラン、カイリと一緒に頭を下げた。
「何をしている。」レイノルズが低い声で言った。
「剣の練習よ。」ラーナがキョトンと答えると、レイノルズは苛立つように、
「そうじゃなくて…」と髪の毛をぐしゃっとかき上げた。そして、
「ラーナ、話がある。俺の部屋まで来い。」と言ってスタスタと歩き始めた。皆慌ててついて行くしかなかった。
全員でレイノルズの部屋へ行くと、ドアの前で、
「お前たち三人はここで待機だ。誰も寄せ付けるなよ。」と男衆を睨みつけ、ラーナだけを連れて入った。隣の控室からは侍女がお茶のワゴンを持って、オルバーと一緒に入ってきた。用意されたお茶は、ラーナのお気に入りのお茶だと匂いでわかる。茶菓子も好物の焼き菓子だ。レイノルズのラーナへの想いがあふれている。
「オルバー、控室で待機しろ。いいか、決して誰も通すなよ。」さっきと同様、怒りがこもったような目つきで言い放った。
その目が”王女だけは入れるな”と言っていることは、誰にでも理解できた。




