反省会
ラーナとカイリ、護衛二人と侍女二人、計六人は再度部屋に集まった。
「ラーナお嬢様!お体はいかがですか!?ううぅ…」テスがもう泣いている。
「お体が問題ないのであれば、今すぐにでも陛下の元にお話しに行った方がいいのではないでしょうか!?」ノーランが慌てふためいている。
「皆様、いったん落ち着いて下さい。ラーナ様は胃に残っていたお茶をすべて吐き出されています。その後解毒茶も飲まれたので、おそらく大事には至らないはずです。そして今すぐに陛下の御前に行くのは、あまり意味がありません。」カイリが言った。
「それはどうしてですか?」ケビンが怪訝そうに聞いてきた。
「セシアナ王女も、同じお茶を飲んでいるからです。」カイリの言葉に皆が黙った。
そう、彼女もあのお茶を飲んでいた。一呼吸おいて、カイリが続けた。
「テスとハンナに聞いたところ、ラーナ様と王女のお茶はどちらも、同じ茶葉で、同じポットから注がれたものです。彼女も飲んでいるものに、毒が含まれていたかもしれない、と言っても信憑性に乏しいでしょう。」
皆、悔しそうに下を向いた。
「ですが、あれはまぎれもなく、毒です。」今度は一斉に顔を上げた。
「以前薬学をたしなんでいたので、わずかですが毒にも知識があります。ポットの茶殻の匂いから、主にラジニア王国で採れる毒性の茶葉ですね。遅効性の毒で遅れて気付くため、最悪の場合は神経の麻痺や、記憶障害を発症します。」ラーナも含め全員が青ざめた。
『…陛下が言われていた命の危険…、本当だったんだ。いよいよ現実味を帯びてきたのね。』ラーナは息を飲んだ。
「茶殻は証拠にはなりませんが、不幸中の幸いといいましょうか…。お茶の準備の際、テスが緊張のあまり、茶葉をまき散らしておりました。念のため、それを集めて保管しておきます。」カイリの言葉に、恥ずかしそうな、少し誇らしそうな、微妙な顔のテスだった。
「あの…カイリ様、なぜ王女はお茶を飲んでも平気なのでしょうか?平気なふりをしているだけなのでしょうか?」ハンナが納得のいかない顔で聞いてきた。
「あくまで私の憶測に過ぎませんが…。あのお茶に耐性を持っている、もしくは、先に解毒剤を摂取している…、といったところでしょうか。」カイリの推測に皆合点がいったようだった。でなければ、あんなにも堂々と飲むことはできないだろう。
「カイリ殿、私からも質問があります。王女はなぜ急に退室していったのですか?」ケビンが聞いた。
「それは、ラーナ様の素早い機転が功を奏したからです。」皆ポカンとなっているので、カイリが続けた。
「即効性の毒が入っているのであれば、王女持参の、さらに王女に飲むよう強いられたお茶を飲んで、ラーナ様がその場で倒れることになります。それでは王女を疑ってくれと言っているようなものです。ラーナ様は瞬時に、毒は遅効性である可能性が高いと踏んだのでしょう。そして、意を決してお茶を飲まれたのです。」
『カイリ、そこまでわかってくれてたんだ。さすがだなぁ。』感心するラーナを横目に、カイリがさらに説明した。
「ところが、遅効性の毒であるにも関わらず、予想よりも早くラーナ様に毒の症状が現れたのです。もちろんこれもラーナ様がおっしゃられていた”一芝居”です。毒の発症は人それぞれで違います。ラーナ様にそれが早めに現れ、このままでは自分に疑いがかけられると、焦って出て行ったのでしょう。最後に『ラーナ様は元から体調を崩されていた』と言い聞かせるように去っていったのも、矛先を変えたいがために、苦し紛れに出て来た言葉かと思います。」
ようやく理解できたことに、全員の目が輝いてきた。同時に尊敬の眼差しが、ラーナとカイリに注がれた。
「今回はギリギリのところで回避できましたが、一歩でも何か間違いがあれば、ラーナ様の命が危なかったことに変わりはありません。」カイリが少し低い声で言ったことで、皆の顔色がまた元に戻った。そしてカイリがとどめを刺した。
「セシアナ王女は、ラーナ様の命を狙っています。」




