嫉妬 その二
部屋に二人きりになると、レイルはラーナの頬を両手で包み、食い入るように見つめてきた。
目は潤んでいて、顔は赤らんでいる。
「ラーナ…ラーナ…」と繰り返し名を呼んだ。
ラーナは胸がキュウっと鳴った。そして同じようにレイルの顔を見つめ返していた。
『精悍な顔立ちになった気がする…会わない間にきっといろんな苦労があったのだろう…。』ラーナが、
「レイル…っ」と言った瞬間に、唇をふさがれた。
激しく、会えなかった時間をうめるかのように、何度も何度も…口づけされた。
じりじりと追いつめられ、いつの間にか壁に押し付けられていた。唇を離して、息を乱しながらレイルが言った。
「俺は…俺はお前に会えない間…苦しくて、苦しくて……どうにかなりそうだったんだっ……」壁に置いた手を、ギュッと拳にして苦しそうにしている。
「私だって…」と言うラーナの言葉を遮って、レイルが叫んだ。
「お前は!ずっとカイリと一緒だったんだろ!?」
『え!?』ラーナは急に意味がわからなくなった。
「確かに一緒だったわよ!でも仕方がないじゃない!なんでそんなこと今言うの!?」ラーナの言葉に、レイルは震えながら言った。
「俺の前で…いや、俺の前だろうがなかろうが、他の男の手を取らないでくれ。」
「……レイル、どうしたの?やっと会えたのに、あなたはなぜそんなに悲しそうなの?」レイルはラーナの両腕を握って、壁に押し付けて言った。
「ラーナが…カイリと似合いだなんて…あいつが言うから…。…そんなこと、俺が許さない。」レイルはラーナを見ながら、カイリに向けての怒りで睨みをきかせているような、そんな目をしていた。そして続けて言った。
「カイリを、ラーナの側近から外す。」
『!?』
「ちょっと待って!そんなすぐには困るわ!」ラーナの言葉に、レイルが怒ったように言った。
「何が困るんだ!?元々あいつは俺の側近だ!元に戻るだけで何が困るんだ!?」
『駄々っ子だわ…。こうなるともう収まらない……。』
ラーナは開き直ってみせた。
「レイル、私のことばかり言ってるけど、あなたはどうなの?」
「何がだ!?」まだ怒りが収まらない様子だ。
「あの王女殿下に腕を絡められて、あげく胸を押し付けられて、まんざらでもなさそうだったわよ。」その言葉でレイルにようやく、怒りよりも焦りが見え始めた。
「そ、そんなことなかっただろ!俺だって迷惑してるんだからな!」
「ふーん……でも、あの様子じゃ、おそらくだいぶ前から、彼女はあんな態度でレイルに接しているわよね?」
「!?」レイルが言葉に詰まった。
『なるほど、それは事実なのか。』
「やっぱりそうなのね。私に、他の男に触れるな、と言っておきながら、自分はたっぷり触れてもいいわけね?」ラーナは、ジトーっとした目でレイルを見ている。
「お、俺から触れているわけじゃない!」レイルが本音を漏らした。
「ああ、触らせてあげてるのね。それじゃあ、私にもそれを許してくれるわよね?」その言葉にレイルは、言い訳や言い返したいことが山ほどあった。だが頭に血が上り、うまく言えず唇を噛んでいた。
「レイル、あなたのやっていることと言っていること、よく考えてみて。あと、カイリのことは、私の許可なしに任務を変えないで。」ラーナが会話を終わらせるように言った。
「!?ちょっと待…っ」
コンコン!ノックの音と、カイリの声が聞こえた。
「レイノルズ殿下、ラーナ様、大変失礼ではございますが、謁見に間に合わなくなります故、そろそろご準備いただけないでしょうか?」
『カイリ、ナイスアシスト!』
「わかったわ。待たせてごめんなさい。」ラーナが返事をすると、
「失礼致します。」と、カイリ、テス、ハンナが入ってきた。
レイルは舌打ちして横を向いた。
「ラーナ様、湯あみのご準備が整いました。ご案内致しますね。」カイリがなぜか笑顔で言ってきた。
「なんでお前が湯あみの案内をするんだ!?テスとハンナがいるだろう!」レイルがすぐさま憤慨した。
『これは…カイリ、わざとだな。わざとレイルに嫌がらせして楽しんでるんだ。』以前にもこういうことが良くあったため、ラーナにはすぐにわかった。
「もちろんテスとハンナも同行致します。どういうわけか時間に余裕がなくなってきましたので、私もサポートして謁見に間に合わせねばならないのです。」と、時計を見せて言った。
コンコン!再度ノックの音がして、オルバーの声が聞こえた。
「レイノルズ殿下、お迎えに上がりました。」
「殿下もこのあとご予定がおありなのですね?」と言ってカイリがオルバーを通した。
レイノルズは黙ってラーナを見ていた。そして、
「あとでまた来る」と言うと、オルバーをつれて出ていった。
部屋の全員が「はぁ~」とため息をついたあと、カイリが言った。
「ラーナ様、急ぎましょう!」
四人で慌てて準備に取り掛かった。




