復活
村人に心配をかけたお詫びとお礼を言って、歩き始めたところでカイリが言った。
「村人たちから、ラーナ様のお元気な姿を見たいと、要望が多く上がっておりました。彼らもこれで安心したことでしょう。」
『なるほど、散歩の許可が下りたのはそういうことか。顔見せのついでということね。』
「ただし、お散歩は短時間にさせていただきます。」
『そうでしょうね。』
この森の木々は、不思議といつまでも緑色だ。季節は冬に近づいているのに…。地形や地熱が関係しているのだろうか。第二王子もこの森に何かを感じて、村を造ったのだろうか。
そうこう考えながら着いた先はミリーネの家だった。というより、最初から目的地をそう設定していた。
「…ラーナ様、」カイリがあきれたような声を出してきた。
「わかってるわ!ミリーネの顔を見て帰るわ。見るだけよ!」ラーナの返事にため息をつきながら、カイリが玄関のドアを開けた。
『あとほんの少しだ。カイリに支えてもらって治療できれば、おそらくあと少しでミリーネは治癒する。』ラーナは横たわるミリーネを見て思った。そして横にいるカイリを見上げた。
「だめですよ。」カイリが前を見たまま言った。
『まだ何も言ってないじゃない。』ラーナはムスッとして視線を戻した。
「今はまだだめです。ラーナ様だけじゃない、私の心臓も何個あっても足りません。以前のように食欲も完璧に戻ったなら考えます。」
カイリが言うことは間違っていないのだろう。自分の命の危険もだが、またあんなボロボロカイリを見たくはなかった。ラーナ自身も自分の体調を見直してから出直そうと思った。
そして数日後、ラーナは再度カイリと共に、ミリーネのもとに向かった。
体調は万全だ、月の薬草茶のおかげで、以前よりもすこぶる健康体だ。
『今日、終わらせる。』
ラーナはミリーネの脇に腰かけ、カイリは今回ラーナの真横で待機していた。
ラーナの表情は固かった。前回のことを思い出すと恐怖が蘇る。だが今度こそ大丈夫だ。時は満ちた。
「カイリ、お願いね!」
「お任せください。」
ラーナがミリーネの胸に手をかざした。手のひらからミリーネの胸へと、光が吸い込まれていく。カイリは厳しい表情でラーナを見ていた。
『まだ大丈夫だ。前回ほど力を奪われていない。おそらくあと少しでミリーネの体は光で満たされる。』ラーナがそう思った途端、光が弱まってきた。
『よし!治癒だ!』
手のひらから出ていたすべての光が、ゆっくりと煙がゆらぐように、ミリーネの体に吸収され、光が消えた。
「ハァ、ハァ、…終わったわ。」そう言って倒れそうなラーナを、カイリが抱き留め、心配そうにのぞきこんでいる。
「私は大丈夫よ。あとはミリーネが目を覚ましてくれれば…。ハザンを呼んであげて。」ラーナの言葉で、カイリがハザンの名を呼んだ。今日は外で待機してもらっていたのだ。ハザンがノックもせずに、急いで部屋へ駈け込んで来た。
「ハザン、ミリーネに触れて、名前を呼んであげて。」ラーナはカイリに抱きかかえられ、ハザンに席を譲った。ハザンがそっとミリーネの頬に触れ、
「ミリーネ、お願いだ。目を開けてくれ!俺は、お前がいないと…生きていけない!ミリーネ…」と、喉から絞り出すような声で話しかけた。
ミリーネの瞼がピクピクっと動いた。
皆が一瞬息を飲んだ。
そしてゆっくりと、ミリーネの瞼が上がっていった。ハザンが叫んだ。
「ミリーネ!!」
「ハ、ザン…?」かすれる声でミリーネが答えた。
「わぁぁーーー!ミリーネ!ミリーネ!!あぁぁーー!」ハザンはミリーネを抱きしめて号泣した。カイリの両目からも涙があふれていた。
『ああ、長かった…。でも、よかった…。これで私は、第二王子と、ここの村人たちに、何か返せたかしら?』ラーナはそう思いながら、また意識を失った。




