夢
ラーナは、長い長い夢を見ていた。
真っ白の何もない空間で、天使が床に座っていた。その天使に、ラーナは子供のように抱きかかえられていた。あまりの居心地の良さに、ずっとそこで眠っているようだった。
すると天使が起きるように、ラーナの心に伝えてきた。強い光で天使の顔は見えず、声も聴きとることはできなかったが、テレパシーのように伝わってくる。
天使が指差した先を見ると、レイルがいた。レイルが必死に何かを叫んでいるが、聞こえない。レイルに会うのは久しぶりだ。良かった…元気そうだ。レイル、あとでね。今はここで眠っているのが気持ち良過ぎて、動きたくないの。目が覚めたら、たくさん話したいことがあるから。
……話したいこと?話したいことなんてあったっけ?…まぁいっか。とにかく今はすごく眠たいの。だからあとでね。
そうしてまた眠りにつこうとすると、天使が、ラーナの背中を支えていた腕を持ち上げて、上半身を起こした。もう…なんで起こすの?するとまた天使が指差した。
今度はレイルの隣に将太がいた。そして今の家族も前世の家族も全員顔をそろえていた。そしてみんなが何か叫んでいるようだった。ラーナを呼んでいるような、そんな感覚だった。なぜ?みんなどうしてここにいるの?
見上げると、表情はわからないが、天使がラーナを見て「あちらに行け」と言っている。「あとでいい」とラーナが言うと、首を横に振った。そしてラーナを立ち上がらせて背中をポンと押した。ラーナは仕方なく、みんながいる方へと向かった。振り返ると、天使がずっと見てくれていた。
気が付くと、口から喉に何かが入ってくるところだった。覚えのある味の飲み物だ。ゴックンと飲み込んだ後、咳き込んでいる自分がいた。目を開けようとするも、瞼が重い。ようやくうっすらと目を開けると、カイリの顔が間近にあった。だが、はっきり言って、ボサボサ、もしくはボロボロになったカイリと言って良かった。いつもきれいにまとめられていた長い髪の毛は、肩までバサッと落ちていて、顔には無精ひげまで作っていた。こんな見たこともない姿のカイリが、ラーナの背中に片腕を回し上半身を支え、片手でラーナに何かを飲ませているところだった。
「…カイ…リ?」ラーナが呼ぶと、カイリは目を見開いて、涙をボロボロ流し始めた。そして痛いくらいにラーナを抱きしめた。
「ラーナ様!ラーナ様!」カイリは泣きながら叫んでいた。その声を聞いたハザン、そしてリアとサラが部屋に駆け込んできた。そして全員が涙を流してその場に崩れ落ちた。
「ラーナ様…よかった…よかった!!」
そしてしばらくすると、外から「ワーーーッ!!」と、歓声のような、泣き声が混ざった叫び声のような、大勢のたくさんの声が聞こえてきた。そしてすぐそばでカイリの声が聞こえた。
「村の者皆が、ラーナ様が目覚めて下さるのを、祈りながらお待ちしておりました。」その両目から、また涙があふれてきた。そして、
「ラーナ様…本当に…よかった…」と言うと、バタンと床に倒れた。
ラーナは驚きながらも、体を維持する力がなく、そのままベッドに倒れこんだ。同時にハザンがカイリに駆け寄り、彼を肩に担いで言った。
「大丈夫です。こいつ、ほとんど寝ていなかったんです。張りつめていた気が、今ようやく切れたんでしょう。向こうで休ませてきますから、ラーナ様もまだ寝ていて下さい。」そうして二人は部屋を出て行った。
代わりにリアとサラがやってきて、
「ラーナ様、月の薬草茶、全部飲んで下さいませ。」そういってリアが、口元にカップを近づけ飲ませてくれた。
「まだ目が覚めたばかりで、体が動かないことと思います。どうか、もう一度休んで下さい。きっと次に起きられるころには、お腹がすかれてることでしょう。そのときは、食べやすいものをご用意しますので、何なりとお申し付けくださいませ。」サラがそういって、毛布を掛け直してくれた。
それが何気に心地よくて、ラーナは言われるがまま眠りについた。




