危機
昨日とは打って変わって、今日はとてもいい天気になった。森の中から聞こえてくる、小鳥の楽しそうなさえずりと、それぞれの家庭から聞こえてくる、朝支度の音が心地いい。あれから丸三日休み、今日はこれからまたミリーネの部屋へと向かう。その道すがら、カイリが念を押してきた。
「いいですか、ラーナ様。くれぐれも無茶はされないで下さい。こちらが判断した際には、許可なく中断致しますのでお忘れなく!」
『この前すでにそうしたくせにー。』と文句を言いたいラーナだったが、あくまでラーナを心配してのことなので、黙ってうなずいた。
ミリーネは今にも起き上がりそうな顔色になっていた。ハザンも同行を希望したが、カイリが即行切り捨てた。
「お前はミリーネのこととなると、己を見失うことがある。そうなるとラーナ様の邪魔だ。連れてはいけん。」その言葉に何も言い返せず、ハザンは肩を落としていた。
ラーナはそんなハザンのためにも、カイリのためにも、そしてミリーネのためにも、今日は倒れるギリギリ直前まで頑張ってみようと思った。
ラーナが椅子に腰かける。カイリはラーナの少し斜め後ろで待機する。いつもの始まりの体制だ。ラーナがミリーネに両手をかざして、手当が始まった。ラーナからミリーネへ光が放たれる。これがしばらく続くはずだった…が、今回は違っていた。
『まずい…』ラーナはすぐに思った。
『私の治療の力を吸い取ろうとする、ミリーネの吸引の力が強くなっている!その速度も、量も増している!治療をやめようにも、手が吸い取られるようでミリーネから離れない…!ああ…、これは…いけない………本当に…ダメかも…しれない………レイル……レイル………』ラーナの背中が傾いたのを見たカイリが、
「ラーナ様!!」と叫んで、両手でラーナを抱き留めた。消え入りそうな意識の中、ラーナの目に映ったのは、今にも泣きだしそうなカイリの顔だった。
『ああ…ごめんなさい。無茶しない約束だったのに…』
「カイリ…あなたが…私とレイルは…運命なんだ、って言ってくれたこと…嬉しかった。……でもそれなら、……あなたに会えたことも……ここにこうして…いることも………私の…運命なのよ。…だから…気にしちゃダメ…よ」そう言ってラーナは、頬に落ちるカイリの涙に気付く前に、気を失った。




