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二人で転生しました!が、  作者: 西野ゆいと
前世編

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4/21

気付き その二

高校生活は静かに過ぎていった。光誠高校は二人の自宅からは少々距離があるので電車通学だ。

「駅で待ち合わせして一緒に行こう」恋人ならそうするだろうランキング?栄えある一号に選んだ『一緒に通学』を、将太が照れながら提案した。帰りももちろん一緒だ。こんな感じだから、まわりも最初から二人が付き合っていることを認識していた。

変わったことと言えば、将太の背が伸びて、肩幅が広くなったこと、あと大人になったと言えばよいのだろうか。中学生のワチャワチャした感じが抜けて、落ち着いた物腰になっていた。通学時にときどき差し出される手をつなぐとき、その大きさに奈央は安心感まで覚えるようになっていた。


二人の仲は公認であったため、穏やかな高校生活を送れていたが、高2の春、事件は起きた。

放課後、奈央が将太を探していると、友達が教えてくれた。

「さっき高山先輩に呼び出されて一緒に出ていったんだよね。」

高山先輩は校内でも有名なキレイどころの一人だ。

「そりゃ気になるからさー、見てたんだけど、渡り廊下抜けて行ったから校舎の裏庭の方じゃない?理由は何にせよ、奈央たちが付き合ってるのは承知の上だろうからさ、穏やかじゃないよね。」

教えてくれた友達に礼を言って、奈央は裏庭に向かった。そうすることの善悪は頭になかった。自然と足が向かっていたのだ。いつもは冷静に判断できる奈央だが、このときばかりは違っていた。ハッと正気に戻ったのは、二人の姿を校舎の向こうに見つけたときだった。とっさに渡り廊下の物陰に隠れた。心臓が激しく動く。思わず両手で胸を押さえる。息を整えながら、恐る恐る二人を見てみる。相手の顔は見えるが、将太は背中を向けていた。気付かれてはいないようだ。何やら話しているが聞こえない。が、次の瞬間、相手が将太にキスをした。

ズキッ!という音は、聞こえるものなのだろうか?奈央の心臓が音を立てた。胸を押さえたまま、ズルズルとその場にしゃがみ込んだ。『どうしよう…』わけもなく、そんな言葉が浮かんだ。どのくらいそこにいたかはわからいが、急に視界が暗くなった。将太が横に立っていたのだ。

「うっわ!……なんでここにいんだよ!?」かなり取り乱して驚いている将太を見て、奈央は絞り出すように言った。

「キスしたんだ。…」

将太が言葉につまって、顔を赤らめて横を向いた。

「やっぱりしたんだ…。」

「してねーよ!」将太が怒って奈央を見た。

「私、見たんだから!」初めて見る、今まで見ていたのとは何かが違う奈央の怒りに、将太は一瞬戸惑った。そしてすぐに「してねーよ。」と、そっと右手を差し出した。

将太の手の甲には、薄い口紅のあとがあった。学校では化粧厳禁になっている。おそらく色付きのリップクリームだ。その唇のあとが、光の具合で薄っすら見て取れた。

「とっさに…自分の口を覆ったんだ。そしたらこうなった。」将太はまた横を向いた。奈央が返事をしないことに焦ったのか、将太が言った。

「俺のことが信じられないのっ……か…!?」言い終わらないうちに、右手の甲をティッシュでゴシゴシ拭かれていた。奈央はいつの間にか持ち歩いているポケットティッシュを出して、一心不乱に唇のあとを消そうとしていた。将太は『痛い』とは言えなかった。奈央が泣く寸前の顔を赤くして、目にこもった怒りをグッとこらえ、必死になっている姿が、可愛くて愛おしくて、ずっと見ていたかった。

奈央がようやく手を止め、荒くなっていた呼吸が少し落ち着いてきたとき、頃合いを見計らうように将太が尋ねてきた。

「………もしかして、ヤキモチか?」

奈央は目を見開いた。そして、その場から逃げた。猛ダッシュで。


高校に入学してからというもの、いつも一緒だった。

初めて、一人で帰ってきた。自宅にそのまま帰ることもできず、近所の公園で頭を冷やすことにした。小さくて、知る人ぞ知る的な公園だが、最低限度の遊具はおいてある。奈央にとっては落ち着ける場所だ。昔から悩み事があると、この公園のブランコに座っていつまでも考え込んでいた。もうすぐ日が沈む。さっきまで遊んでいた小学生たちも皆帰っていった。公園には奈央一人だ。

『ヤキモチ』…将太に言われた言葉が頭を駆け巡る。将太から告白されて付き合うことにはなったが、奈央はまだ気持ちを伝えてはいなかった。伝えられなかったのだ。自分の中に、未だ将太への想いを見つけられなかったから。なぜ付き合うことを快諾したのか、実は奈央自身も定かではなかった。あのとき人伝てに将太が光誠高を目指していることを知った。驚きもしたが、思い当たるふしはあった。奈央が進学先を変更してからすぐのことだ。思い当たらないはずはない。会えない日が続くほど、将太の必死さが伝わってきた。


『なぜ?私のことを…好き?いやそんなはずはない。私だけ光誠高に行くことが気に食わない?私だってまだい行けるかわからないのに?私の話を聞いて、ただ単に目指してみたくなった?でも将太の成績では相当の覚悟がいるはず…』考えうる質問を、自分に投げかけては否定し、また肯定し……でも、もしかして、もしかするのだったら『嬉しい』……気持ちが宙に浮いている感じがして、受験勉強に手がつけられなくなる寸前だった。

我に返れたのは健太のおかげだった。夕飯を食べながらボーっとしていると、健太が

「お姉ちゃん、大丈夫?顔が変だよ。あ、そういう意味じゃなくて、なんかお姉ちゃん、ここにいないみたい。お姉ちゃんの中身が、どこかに行ってるような…」と心配そうに奈央を覗き込んできた。両親は動きを止めることなく、ただ黙って二人の様子を伺っていた。しばらくの沈黙の後、パシッ!と平手打ちの音が静寂を破った。奈央が両手で自分の頬を打った音だった。父、母、そして健太が一番ビクッ!と肩を揺らして、涙目になっている。

「健太、ありがとう!お姉ちゃん、頑張るよ!」言いながら健太をギュッと抱きしめた。健太は訳の分からないまま、されるがままだった。

「ご馳走さまでした!」合掌の後、奈央は自分の部屋へと駆け上がって行った。母が健太の頭をなでながら、「大丈夫よ」と微笑んだ。

『もし将太が合格して、私がそうでなければ、話にならない。考えるのは合格してからだ。』この時から奈央は、食事、睡眠、入浴、勉強を繰り返す日々が続いた。


次の模試で、奈央は合格圏内に入った。少し安堵した瞬間、将太の顔が思い浮かんだ。『頑張っているだろうか…』奈央は祖父母にもらった合格祈願のお守りをジッと見つめていた。

『お守り!』

奈央は何かを思い出したように、急いで準備に取り掛かった。自分も余裕をもてあますことなんてできない。『でも少しだけ、合格圏内に入れた自分へのご褒美!自分への?……そう、これは自分へのご褒美だ。将太と同じ高校へ行くための!』


お守りを渡したときの将太の顔を、奈央は一生忘れないだろうと思った。

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これ、結婚式後まで続きます?
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