未知の既決
レイノルズと会えなくなってからというもの、生活がかなり変わっていた。二人で受けていた授業も一人になり、ダンスと剣術においては先生かフィルが相手。これはあとからカイリに聞いたことだが、
『ダンスと剣術の授業は先生か家族が相手となり、騎士団には決して連れていかないこと。』と、レイノルズにしつこいくらいに念を押されたらしい。
『自分の方が大変な仕事に取り掛かるのに、私の授業のことまで良く頭が回るなぁ…』ラーナはある意味感心していた。
その日は朝からひどい雨だった。外は薄暗く、少し肌寒いくらいだった。そんな日の午後、カイリがラーナのもとにやって来た。
「こちらを、ラーナ様へと預かってきました。」それはレイノルズからの手紙とショールだった。
『ラーナへ
お前のいない生活が、こんなに辛くてひどいものとは思わなかった。
いつも一緒にいた当たり前の日々は、こんなにも貴重なことだったんだな。
ラーナ、お前に会いたくてたまらない。
最近少しづつ寒くなってきた。秋も近いな。身体を冷やさないように肩掛けを用意した。
俺の代わりにお前を温めてくれるはずだ。本当は俺が抱きしめたいんだがな。
レイノルズ』
ラーナは頬を染めながら手紙を読み終えると、ショールに手を伸ばした。濃いめのベージュ色で、ふかふかして暖かそうだ。
『これを羽織って早速お父様のところへいこうかしら。』そう思っていると、カイリが話しかけて来た。
「ラーナ様、教師によりますとラーナ様は優秀でおられるため、そろそろ履修完了の教科もあると聞きました。基本的なものはある程度学ばれたかと思いますが、他に履修されたい分野はおありですか?」
『そこまで考えてなかったわ。希望したものはだいたい学んできたつもりだし、それにどの科目も終わりはないように思えたし。終わったとしても、お父様を手伝うことしか頭になかったなぁ。』
「何か、考えた方がいいかしら?」ラーナが尋ね返した。
「そうですね…御父上のお手伝いもあられるかと思いますので、ご興味があるものをひとつずつ増やしていかれるのはどうでしょうか?」
『うーん…』
「薬…などはいかがですか?」カイリが言った。
「薬?」ラーナはポカンとした顔になった。
「ええ、知り合いが薬草栽培をしていて、私も少しは知識があります故、ご協力できるかと。」
『なるほど…薬だったら生活の役にも立つわね。』
「そうね、じゃあ薬学にしようかしら。」ラーナの決定に、
「かしこまりました。では教師の手配などは私がしておきますね。」カイリが動いてくれそうな気配だ。
「ありがとう!でもカイリもレイルのことで忙しいでしょ?そこまで無理しなくていいわよ。お父様に頼むこともできるし。」ラーナが言うと、
「申し遅れましたが、此度より私、ラーナ様の側近且つ護衛としてお仕えさせていただくことになりました。改めまして、カイリ・ランデールと申します。」
「え!?」今度はさらに口があんぐりと開いている。
「ラーナ様の側には常に殿下がおられたため、今までお付きの騎士もおりませんでした。ですが、これから先殿下がお戻りになるまで、お側でお仕えするのは侍女のみになります。ですので、ラーナ様に護衛の騎士を付けてはどうかとご提案したのですが…。何分ラーナ様に関してはご自分以外の男性をお認めになりません。ただラーナ様の御身のご安全も確保したいらしく…苦肉の策として私が適役と考えられたようです。」
『そ、そうだったのね…。私に関することが、私の知らないところで動いているわ…。』




