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二人で転生しました!が、  作者: 西野ゆいと
成長編

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別離

婚約の儀終了後、ラーナは自室で帰宅の準備を始めていた。今日は家族と共に帰宅する。外はまもなく夕暮れを迎えようとしていた。

『明日から…レイルに会えない。』

仲間と共に森へ帰っていく鳥たちを見ながら、ラーナは思った。ちょうどその時、ノックの音がした。レイノルズだった。カイリは外で待機しドアを閉める、ハンナは隣の部屋へ移動、二人とも素早い行動だ。

どこか悲しみを帯びた顔で、レイノルズはまっすぐにラーナに向かってきて抱きしめた。そして、

「ラーナ、ラーナ!」と、ラーナの髪に顔をうずめて、半ば叫ぶように呼んだ。

「レイル…」ラーナもそっと、レイノルズの背中に腕を回した。

「レイル…この指輪、あなたがケガしてまで作ってくれたのね。とても嬉しかった。ありがとう。でも一国の王子がケガするなんて、本当は大事(おおごと)よ。これからの工事のこともあるし、体を大切にしてね。」ラーナが言うと、レイノルズはその悲しげな表情にようやく少しの笑みを浮かべて言った。

「ラーナが、俺のものだっていう印をつけたかったんだ。婚約指輪と言えど、他の男が作ったものなんかつけさせられない。だから俺が職人に教えてもらって作った。婚約の儀まであまり日がなかったから、つい焦ってケガをしたけどな。でもな、あのケガ、ラーナを抱きしめたら痛みが引いてたんだ。あれはお前からの愛の力だな。」

『もう少し手加減するべきだったかしら…痛みが減ったことに気付いてたのね。』ラーナは焦った。そして気を取り直して、

「そうよ、私の力、すごいでしょ?」と笑ってみせた。するとレイノルズがまた悲しい顔になった。

「ラーナ、俺はこの先、どうやって耐えればいい?お前に会えない、お前に触れることもできない一日一日を…」最後にはもう、レイノルズの声は消えていた。

王子として、堂々と、意地悪に、俺様的にラーナを振り回す彼は、時々どことなく将太のような不器用さを見せることがある…。


最近ラーナはレイノルズの行動に将太を思い出し、戸惑うことが多くなってきていた。それ故に今回の面会禁止期間は、ラーナにとっては頭を冷やすのに良い時間かもしれないと考えていた。そしてもうひとつ、自分は彼を愛しているのか、という疑問に答えを出したかった。

彼からの告白は素直に嬉しかった。抱きしめられても、キスをされても嫌ではなかったし、彼以外の男性は考えられないというのも事実だ。婚約となったことも自然に受け入れることができた。ただそれは最近、彼の後ろに将太の姿が見え隠れするようになったからかもしれない…とも思うようになってきていた。彼の魂が将太だったから、彼を受け入れたのだろうか…。それともちゃんと彼を、レイノルズ自身のことを愛しているのか…。将太のことを愛していたのは事実だが、同じようにレイノルズを一個人として愛しているのかは…わからなかった。レイノルズがラーナにとってかけがえのない人であり、すでに心の中はレイノルズでいっぱいになっているのもわかっている。しかしそれを愛と言っていいのか…正解がわからない。ラーナは今更、誰にも言えない悩みをかかえていた。

流れで…流されて?婚約の儀まで終了したが、気持ちの整理が追い付いていなかった。河川工事が完了するまでどのくらいの時間がかかるかわからない。もしかすると答えがでるまでに、それ以上の時間がかかってしまうかもしれない。だができるだけ早く自分の気持ちを見つめなおして、レイノルズに誠心誠意向き合いたい。だからこそこの会えない時間を有効的に使わねば…そう思っていた。しかし実際明日から会えないとなると、寂しい気持ちの方が勝って胸を締め付けてくる。

『奈央の想いを忘れていれば、こんな苦しい思いをしなくてよかったのになぁ』と、たらればの話を想像してはかき消して…これを繰り返してしまう。


「ラーナ、聞いていいか?俺、かっこ悪いかもしれないが、聞かせて欲しい。」レイノルズが少し戸惑うように聞いてきた。

『ほらまた、将太みたいな言い方をする…。』ラーナは困って、顔を伏せた。

「お前は?お前は、俺のことをどう思ってるんだ?」レイノルズが真剣に聞いてきた。

「今回の件で、お前が寂しがってるようには見えないんだ…。俺はあれから、笑うことができないくらい気を病んでるというのに、お前は笑顔で侍女と話しているんだ。お前が悪いわけじゃない、でも俺ばっかり、…お前を好きだ。」レイノルズは若干ふくれっ面で横を向いた。こんなところも、将太そっくりだ。

『ああ…いけない。ラーナ、しっかり!あなたはもう奈央じゃない、ラーナよ!』

「レイル、あなたがこの部屋に入ってくる直前、あなたに会えない明日からの生活をどうやって過ごしていこうかと、私寂しくて悩んでいたのよ。」そう言うと、またきつく抱きしめられた。

「その言葉を聞けて、少し安心したよ。なぁラーナ、工事が無事成功してまた会えた時に、お前の気持ちを聞かせてくれないか?」レイノルズの言葉に、

「その日でいいの?」ラーナは質問で返した。

「その日がいいんだ。本当は今日にでも聞くつもりでいたんだが…。その方が達成したときの褒美みたいでいいだろ?その約束があるから、お前に会えなくても頑張れる気がする。そして頑張った暁には、おそらく俺が欲しい言葉をお前がくれる。」

嫌でも奈央の記憶が(よみがえ)って、今にも泣きだしそうなラーナは、それを隠すようにレイノルズの胸に顔をうずめた。

「わかった。じゃあ私からのお願い。一分でも一秒でも早く終わらせて、私に会いにき…っ」言い終わらないうちに唇を(ふさ)がれた。名前を呼ばれながら、何度もキスをされた。そのうち二人でソファーに倒れこんだところで、

「はーい、殿下、帰るお時間ですよー。」と棒読みのセリフが、1㎝ほど開いたドアの隙間から聞こえてきた。

「チッ」レイノルズは部屋の外に聞こえるくらいの舌打ちをした。

『見られてはないと思うけど…あの隙間、いったいいつから開いてたのかしら!?』ラーナは急に恥ずかしくなった。ハンナもすべてを理解しているのか、赤い顔で戻って来た。


最後にもう一度、レイノルズはラーナを抱きしめて言った。

「いってくる。」ラーナは笑顔で、

「待ってる!」とだけ返して、レイノルズを見送った。

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