再会
ドアが開き、
「ラーナ・クリスガルド様、フィル・クリスガルド様、お見えになられました。」カイリが言った。直後にフィルが半歩前をゆっくり歩き、ラーナを誘導した。少しの緊張はあったが、なんとか御前に到着。ラーナは目を伏せたままカーテシーをして動きを止めた。フィルもお辞儀をしたまま陛下のお言葉を待った。
「ラーナ・クリスガルド嬢よ、よく来てくれたな。面を上げてくれ。」顔を上げると、このグリナリア王国の国王ジョーゼフ・グリナリアが玉座に腰かけ、ラーナをまっすぐに見ていた。父と同じくらいの年齢だろうか。短く切り揃えた赤茶色の髪。それよりも深い茶色の眼差しは、想像よりも優しく感じた。視界にしっかりとは映らないが、右端に父、陛下の左奥に少年がいた。おそらくレイノルズ殿下だろう。
「この度はお招きいただき感謝致します。陛下にお目にかかれたこと、大変光栄に存じます。」ラーナは再び軽くお辞儀をして目を伏せた。練習通り、落ち着いて答えることができた。
「ラーナ嬢、そうかしこまらないでくれ。マシュリにはいつも世話になっているのだ。そなたも気を使うことなく、城に遊びにきて欲しい。以前、そなたとレイノルズが同じ歳と聞いていてな。是非友人になってやって欲しいのだ。」陛下の言葉に、ラーナが、
「もったいないお言葉でございます。」と返答し顔を上げた。すぐに陛下が少年の方を見て言った。
「紹介しよう。これが私の長男、レイノルズ・グリナリアだ。」その声に促され、少年が前に出て来た。殿下は少しの階段を降りてきて、陛下よりもさらにラーナの近くに立った。
『ドクン…』ラーナの心臓が大きく鳴った。背丈はラーナよりも少し高く、亜麻色でサラサラの髪の毛が額にかかっている。その間から見える瞳は紺碧の色だった。間違いなく、ラーナが今まで見た男性の中で、一番美しい人だった。ラーナはレイノルズから目を離すことができなかった。だが、彼が美しいから心臓が跳ねているのではない。
「ラーナ嬢、レイノルズ・グリナリアです。ずっとお会いしたいと思っていました。やはりお母上に似ておられる。とても美しい。」瞬時にラーナの目の色が暗く変わった。そしてその瞳からは大粒の涙があふれだした。広間の空気が一気に冷えた。
「ラーナ嬢!?どうされました!?」レイノルズが慌てる。ラーナは答えることなく、ただただ硬直してレイノルズを呆然と見つめながら、涙するばかりだった。
「陛下、殿下、失礼致します!」父が動き出し、フィルもそれを見て二人でラーナのもとに駆け付けた。
「ラーナ!御前で失礼だぞ!どうしたんだ!?」父が焦って聞いてくる。だがもはやラーナは抜け殻のようになっていた。
『……あれは……将太だ……
姿形は違っても…私にはわかる……
私の魂が…間違いないと叫んでる……
彼から…将太の魂を感じる……
でも……彼は私を覚えていないっ……
どうしてっ、どうして私だけ覚えてるの!?
神様…ひどいっ!
私が前世で、いったい何をしたって言うの!?
こんなことなら…彼と出会わなければよかった!…っ
前世でも…今世でも!』
「しょう…た……」そう呟いたあと、ラーナはそのまま気を失った。




