登城
王城の門をくぐったものの、なかなかお城に辿り着かない。そこに小さいお城が見えている。のに!辿り着かない。門からお城までは軽い上り坂になっている。さらに、馬車が二~三台は並走できるほどの道が、くねくねと奥まで続いていた。
『土地全部で何坪あるの!?』手入れの行き届いた素晴らしい庭園を、馬車の中から眺めながら思った。
「広さに驚くだろ?」エスパー・フィルが話しかけてきた。
「登城した貴族たちに、憩いの場として開放されている庭もあるんだ。きれいだからラーナもきっと気に入るはずだ。今度行ってみよう。」そんな話をしているうちに、ようやくお城の前まで辿り着いた。
『長かった。うちのお屋敷から城門までの距離より、城門からお城までの距離の方が、絶対に長いわ!』と、少し切れ気味だが、そんな表情はおくびにも出さず、ラーナは王城入り口に降り立った。そこには男性一人と女性が二人立っていた。フィルがこそっと耳打ちした。
「レイノルズ殿下の側近と侍女だ。」同時にその男性がやってきて、ラーナとフィルに深くお辞儀をした。
「私、レイノルズ殿下の側近でカイリと申します。どうぞよろしくお願い致します。本日はお越しいただきありがとうございます。陛下も殿下もラーナ様にお会いできることを、楽しみにされておいででした。ラーナ様にも是非楽しんでいただきたく、本日心よりお仕えさせていただきます。」
『楽しめるかーい!』と突っ込みたくなる感情は奥底にしまい、ラーナは思慮深い微笑みを見せて言った。
「こちらこそ、どうぞよろしくお願い致します。」
そしてカイリに案内され、長い外廊下をひたすら歩かされた。
『室内への扉が見当たらない…せめて馬に乗せてくれないかしら?』と思い始めたころに、ようやく入り口と思われる大きなドアの前に着いた。ついてきていた侍女たちがドアを開けると、広いホールに大きなシャンデリア、真ん中には広々とした階段が高くそびえ立っていた。ここがお城のエントランスホール…
『天井高っ!建築費用もきっと高っ!』あまりの絢爛ぶりに絶句したラーナはおかしなことを思っていた。そんな様子を見たフィルが、
「さぁ、謁見の間に行くぞ。」と促さない限り、そこに立ち尽くしていたかもしれない。危ないところだった。
そしてまたカイリを先頭に、長い長いフカフカの廊下をまっすぐに歩いた。やっと案内されたところは大きな客間のようだった。
「こちらで今しばらくお待ちくださいませ。」カイリが言うと、侍女たちがお茶の準備を始めた。フィルが、
「この隣が謁見の間だ。おそらくこの後、陛下、殿下、父上が先にそちらにいらっしゃる。その後私たちが呼ばれるはずだ。」と小さめの声で伝えて来た。侍女たちがお茶とお菓子を出してくれた。
「お兄様…心臓が口から出てきそう…」そう言ったラーナに、フィルがブブッと笑って、
「それは大変だ。とりあえずお茶を飲むんだ。心臓が元の位置に戻るはずだ。」今度はラーナがブフッと笑った。飲もうとしていたお茶をこぼしそうになるのを必死にこらえた。おかげでだいぶ落ち着くことができた。フィルには頭が上がらない。そのとき、
「ラーナ様、フィル様、これより謁見の間にご案内致します。」とカイリが言った。ラーナは深呼吸した。
『よし、大丈夫。いざ!』ラーナは謁見の間に向かった。




