表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二人で転生しました!が、  作者: 西野ゆいと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/18

大陸の海沿いに位置するグリナリア王国。時は…不明。近隣諸国…今のところ不明。この場所で新たな生を得て、ラーナは4歳になった。奈央であったころ、前世の記憶を持って生まれた人たちは、人生の途中でその記憶をなくすものもいる、と聞いたことがある。が、ラーナの記憶は色あせることなく、いつまでも鮮やかにラーナの心の奥深くで眠っている。少しずつ、良い思い出になってきているはず…そう自分に言い聞かせて、今の家族と穏やかな生活を送っていた。


突然部屋のドアが開いた。

「ラーナ、いる?」入ってきたのは兄のフィルだった。

「お兄様…いつになったらノックをしてくれるの?」ラーナは頬を膨らませて言った。たどたどしい言葉遣いも、ふくれっ面も、フィルには可愛くてしかたがない。

「ごめんよ、ラーナ!」あっという間に高い高いをされ、ラーナはフィルの腕の中にいた。座って抱っこ、の約束はとうの昔に満期を迎えていた。今や抱っこも高い高いも回転メリーゴーラウンドもお手のものだ。

「お兄様、今日は剣の練習ないの?」いつもならその時間帯だ。

「お!?ラーナは賢いな!兄の剣の時間も覚えているのか。さすが僕の妹だ!今日は先生が休みだから、今から自由時間だ。一緒に丘に行かないか?」

「行くー!!」ラーナは大喜びだ。丘とは、クリスガルド家の領地内にある家族お気に入りの丘だ。海の見えるなだらかな丘には、季節に応じてきれいな花が咲き乱れている。丘の真ん中には大木があり、最近父が枝にロープをかけてブランコを作ってくれた。木陰には以前から二~三人用のベンチが置いてあった。母に尋ねると、つまるところ、父と母用のラブラブベンチといったところらしい。結婚前からそのベンチで逢瀬を重ねていたということを、照れながら教えてくれた。ちなみにベンチも父がそのため?に用意したものだとか。

フィルとラーナはのんびり歩いて丘に向かった。季節は春。優しい風が頬をなでる。フィルとつなぐ手も温かい。転生してからというもの、家族の優しさにどれだけ助けられたかわからない。心が折れそうになるのを何度も救ってもらった。奈央のころの家族同様、今やクリスガルド家はラーナにとってかけがえのない存在となった。特にフィルは元来明るい性格で、常にラーナを楽しませようと考えている。最後に見た健太よりもまだ年若いフィルが、自分の兄という不思議な感覚はあるが、今のラーナにとっては頼もしい兄である。

丘に着いたら、まず草の上をゴロゴロと寝転がる。これがたまらなくいい。草の匂いと土の匂いに包まれて、ラーナにはこの上ないリラックスタイムになる。横に座ったフィルが、それを優しく見守る。

「お兄様はしないの?」

「僕までゴロゴロしたら、ラーナを守れないだろ?」

「そんなの平気よ。だってここには私とお兄様しかいないから、危ないことはないでしょ?」

「ラーナ、僕がラーナを見ていたいだけなんだよ。」フィルがフッと笑った。こういうところは時々大人のように見えるから不思議だ。

一通り?転がったら、次はブランコだ。ラーナが(つたな)いながらも、こんなブランコが欲しいと父に伝え、それが即執事のハロルドに伝わり、翌日には屋敷の職人が制作に着工していた。そして丈夫なロープで想像以上のブランコが仕上がり、今やラーナの大のお気に入りとなった。前世の記憶を持っていようとも、今はまだ子供だ。揺れるもの、動くものには弱いのが子供。ラーナはフィルに座板に乗せてもらい、ブランコを存分に楽しんだ。最後にフィルに強めに背中を押してもらって終わる予定だったが、ちょうどそこに蜂が飛んできてラーナの腕に止まった。

「きゃーーーー!蜂!お兄様、蜂がぁーーーーー!」ラーナは思わずロープから手を離した。

「危ない!!」フィルが落ちて来たラーナを瞬時に受け止め、ブランコの座板をよけるために、ラーナを抱いたまま地面に転がり落ちた。

「ラーナ⁉大丈夫か!?」フィルが血相変えてラーナを覗き込む。

「大丈夫…お兄様、ありがとう。ごめんなさい。」ラーナは涙目になっていた。

フィルは座ったままラーナを抱きしめた。

「ラーナが無事でよかった!」そう言ったフィルの右腕から、大量の血が流れていた。

「お兄様!血が!血がぁ!」ラーナが泣き叫ぶ。

「大丈夫だよ、これくらい。落ちたところに折れた枝があって、それが刺さったらしい。」フィルは痛みをおくびにも出さずに答えた。ラーナは震えながらハンカチを出した。こんな量の血を見たことがなかった。ハンカチをフィルの腕に当てながら、

「お兄様…ごめんなさい…ごめんなさい!私のせいでこんなひどいケガ…早く血ぃ止まって!!うわーーーーーーん!!」途端にフィルの腕が光り始めた。二人とも目を見張った。良く見ると光はラーナの両手から出ている。そして破けたシャツから見えていた、ざっくりと裂けた傷跡が、少しずつ元に戻っていき、同時にラーナの両手から出ていた光も、少しずつ消えていった。傷が治ってしまったのを、二人はしばらく呆然と見ているだけだった。その後ゆっくりと、顔を見合わせた。そしてフィルがハッと我に返ったように、周囲を何度も見渡し、ラーナを抱きかかえ、屋敷へと急いだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ