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二人で転生しました!が、  作者: 西野ゆいと


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13/18

観察

ラーナは生後六か月になった。正確には、と、周りが話しているのを聞いた。奈央の頃の記憶を思い出しては泣き、泣いては家族があやし…を繰り返しているうちに、将太のことを含め、あまり思い出さなくなっていった。思い出しても、周りの人間が寂しさをかき消してくれる。このまま忘れてしまえばいい、と思う反面、将太のことを忘れたくないという気持ちもあった。

『生後六か月の女児にこんな思いをさせるなんて…神様?創造主様?は、なんて酷なことをするんだろう。』

自分に起こったことを理解はできなかったが、受け入れるしかなく、奈央は徐々にラーナとして人生を歩んでいく覚悟を固めていった。同時に少しずつ心に?頭に?余裕ができてきた。ラーナはまず環境把握に努めることにした。


なんせ六か月の女児。ようやく三回に一回の割合で、寝返りができるようになったくらいだ。そんな動きが制限されている状態で、情報を収集するのは至難の業だ。ベッドからの景色を見たところ、室内の様式や調度品、あと服装から、中世か近世のヨーロッパ諸国を思わせる。だが見知った国名や、歴史上の人物などの名前は聞こえてこない。かと言って文明は、現代ほど発達していない。観察しているうちに、奈央の記憶の中の知識では、説明のつかない世界に転生した、ということだけは確かだった。


首が座りだした頃から、時々誰かに抱っこされて、庭に散歩に連れ出してもらえるようになっていた。ラーナはこれが楽しみでしかたがなかった。一人で出歩けない彼女にとって、これが一番の娯楽と言ってよかった。それもそのはず、なんせここの庭はテーマパーク並みに広いのだ。いや、庭と言うのは間違いかもしれない。庭園だ。そこら中に美しい花が植えられ、庭師によりキレイに手入れされている。そしてその庭園から見える、邸宅への入り口の門はとても遠くに見えた。遠すぎて連れて行ってももらえないほどだ。何よりラーナが一番驚いたのは、

「さぁ、ラーナお嬢様、あまりお外におられますと風邪をひかれてしまいます。そろそろお屋敷に戻りましょう。」なんてことを言われて家に戻るときの景色、そう、ラーナの住まいたるや、何より圧巻の(たたず)まいなのだ。広大な山々を背景に、家ではない、城と言っていい建造物が壮大なスケールで立ちはだかっている。これを見れば、ラーナが「お嬢様」と言われる所以を理解せざるを得ない。ラーナは時々聞こえる家族の会話と、この巨大な住居で、この世界においておそらく自分の身分が高いのであろう、と察することができた。


父、マシュリ・クリスガルドは王家の血筋を引く、現クリスガルド公爵家の当主だ。毎日王城と屋敷を往復しているようだ。仕事は王室の相談役といったところだろうか。陛下がどうのこうの、会議がどうのこうの言っているのを聞くに、そういったところだろう。貴族の中でも結構な上の立場のように感じるが、ラーナに関してはこと甘過ぎるようで、ラーナ母に時々苦言を呈されている。それでも毎朝出勤前にはかならずラーナの顔を見にやって来る。そしていつものデレデレ顔で抱っこをして、母からラーナを引きはがされるまで離れない。執事のハロルドが迎えにくると、名残惜しそうに去っていくのが少し可哀想だ。

母、ロゼッタ・クリスガルドは毎朝一番にラーナの顔を見に来る。愛おしそうにラーナを見つめ、頬にキスをする。そのあとしばらく抱っこしながら、話しかけたり、歌ったり、ラーナへの愛情がこぼれ落ちそうなほど伝わってくる。母は名のある侯爵家から嫁いで来たようだ。身分もだが、容姿もひときわ目を引く美しさのため、求婚者があとを絶たなかったらしい。現代で言えば、絵本の中のお姫様、その言葉がぴったりとくるような女性だ。

そしてラーナには五歳の兄、フィル・クリスガルドがいる。公爵家の跡取りとして、勉強や剣の訓練に忙しそうだ。そんな中、休憩時間を見つけては、ラーナに会いにやってくる。どうやら早くから兄バカの要素をふんだんに排出している。フィルがやってくるときには、ラーナの世話役、テスとハンナの周りに緊張の糸が張り詰める。

「ラーナ~!」と駆け寄ってきては、とにかく抱っこしたがる。椅子やベッドに腰かけてからラーナを抱っこする、という約束を守ってはいるものの、その抱っこはやはり不安定極まりない。次期当主のフィルにも、できる限りの礼を尽くして対応しなければならないテスとハンナ。その次期当主が希望すれば、抱っこさせないわけにはいかない。このときばかりはフィルとラーナのそばで、瞬時に反応できるよう、万全の体制で待機している二人だった。

「フィル坊ちゃま!剣の練習の時間でございますよ。」メイド長のジルが迎えにきて、ようやく二人が脱力できるという、変な習慣が毎日の日課になっている。

こんな風に家族の愛情に包まれながら、ラーナはすくすくと成長していった。

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