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【BL】俺の伴侶が可愛すぎる!  作者: 笑田


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8/12

8話 俺の伴侶が可愛い。

【◇クリス視点】


パシン!

パシン!

狭い室内で鞭の音が響く。

室内を灯すのは、ろうそくの火だけ。

その火に灯された人物の顔の陰影を濃く、歪んで映していた。


「お前なんか、産まれて来なければよかったんだ!」


伯爵様が叫んだ。そして僕に鞭をふるう。

痛い

僕の背中は火が付いたように熱くて、

痛いよ

誰にもすがれず、

自分の身を護る様に丸まるしかなくて


誰か助けて―――――


ハァ、ハァ、ハァ……


息が上がり目が覚めた。

辺りは暗く、今自分がどこに居るのか混乱した頭で視線を彷徨わせた。


見慣れない部屋。

温かなベッド…ここはどこ?

横で誰かの息遣いが聞こえた。


さらっとした髪にごつごつした掌。それがぼくの右腕に絡まっていた。

モジャモジャおじちゃん……ちがう

――――リド


ぼくを伯爵様の家から連れ出してくれた人

その人が僕と同じベッドで

手を繋いでくれている。


リド


僕はリドにくっついてもう一度目を瞑った。


―――


いつの間にか、眠ってしまっていたらしい。

朝起きた時――隣にリドは居なかった。

お布団から彼のぬくもりは消えていた――。

けど…リドの体温に触れて寝直したら、今度は怖い夢も、痛い夢も、見なかった…。


リドのおかげ。

あの人の体温のおかげ

リドは僕をいつも助けてくれている。

胸が温かくなる

僕は何気なしに彼の名前を呼んだ。


「り…ど…」


かすれた僕の声に彼の名前が温かさを帯びて響いた。


「呼んだか?」


僕の声に反応する声が返って来た。

振り返ると、入口から朝食のトレーを持ったリドが入って来た。


「腹減ったから俺の名前を呼んだのか?」


「正解だな。今日はプレーンオムレツにコーンスープだ。コーンスープだ。」


コーンの甘い香りと卵の匂いが部屋に広がる。

焼き立てのパンが、それを包み込んだ。


「クリスの要望のヨモギのパン。焼き立てを持ってきた」


焼き立てのパンを出した時の屈託のない彼の笑顔

香ばしいパンの匂い

湯気の上がったスープ

タマゴの濃厚な匂いも全部


幸せの姿


もうあそこには戻りたくない。


だって僕は今――

凄く、凄く幸せだから。




【◇リカルド視点】


昼食の片付けが終わり食堂を出たところでバスコが証文を片手にニコニコしながら待ち構えていた。


「リカルド様。承認されました」


その言葉に俺はほっと息を吐いた。


「そうか。早かったな」


バスコと話しながら庭先でグリーンたちと遊んでいるクリスの元に向かう。


「あれだけ書類をしっかり準備していましたからね。

虐待の証言も、解雇に追い込まれた元使用人からも、頂きましたし、クリス様のお爺様も協力してくださいました」


「閣下はお元気だったか?」


バスコは大きく頷いて笑った。


「今度一目孫に会わせて欲しいと」


その言葉に俺は複雑な思いを抱えて庭先の花に囲まれ、花冠をサラサと作っているクリスに目を向けた。


「……もう少し待って欲しい。

落ち着いたら、クリスに聞いてみよう」


「そうですね」


俺と一緒にクリス達に目をやるバスコも優しい視線で見守っていてくれた。


そんな穏やかな日々が2週間ほど続いた昼下がり、グリーンとサラサが、クリスに文字を教えてくれていて、室内には皆が揃っていた。

姉上が笑顔で提案してきた。


「買い物に行きましょう!」


手を打って明るい声で言う姉上に面食らう。


「姉上突然どうした?」


子供達も何事かと姉上に視線を向ける。


「だってあなた達ここに来てもう2週間も経っているのにずっと屋敷の中でしょう?今行商の市が来ているのよ。気分転換にもいいでしょ?」


グリーンとサラサがわっと声を上げる。


「え!行きたい。行きたい!」


「僕も面白いモノ何かないかな」


そんな二人をクリスは戸惑いながら見ていた。

姉上が俺に指を突き付け、


「リカルドもそろそろ実家の方に行かないと、お父様が首を長くしてまっているわ」


「りど…の、お…と、さま?」


クリスは小さく呟き、首を傾げこちらを見てくる。

サラサが手を上げ主張する。


「お爺様に私もプレゼント買いたいですわ!クリスも一緒に行きましょ」


「僕も行く!クリスも一緒に行こう。

文字の練習のためのノートとペン。クリス用に新しく用意しよう。」


グリーンの言葉を聞き、今まで書いていたノートに目を向ける。そして

クリスがフルフルと首を振りながら、ノートを抱きしめる。


「これ…が、いい」


「え?だってそれ、僕のお下がりだよ?」


「うん。うれ、し…もら、たの…うれ、し、かった…」


そう言って笑った顔は、花が咲いたような柔らかさがあった。


俺は目じりに涙が溜まりそうになり、視線を上げて我慢した。

あの家で、あの子が受け取ったものなんて――


今更ながら思う。姉上を頼ってよかった。

クリスが笑えるようになった。

グリーンとサラサのおかげでクリスが字を書く楽しさを知った。


その事が俺は嬉しい。


彼が幸せそうに笑えるようになった事が。

クリスの笑顔が皆の知るところになった事は、寂しくもあり嬉しくもある。


あの家を出て、まだ半月。

それでも――

こんな顔で笑えるようになった。

俺の伴侶が、世界一可愛い。




読んで頂きありがとうございます(❁´ω`❁)

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