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【BL】俺の伴侶が可愛すぎる!  作者: 笑田


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10/12

10話 それぞれの~

【◇ケッチーニッダ伯爵】


扉が乱暴に開かれた。


静まり返っていた邸内に、騒々しい足音がなだれ込む。


「父上は何処だ?」


「早く父上に伝えないと!」


息子達の騒ぐ声に、私は客間を辞して廊下へ出た。


「お前達何を騒いでいるんだ。静かにしなさい。客人が来ているんだ」


私の制止を押しのけるように、息子達の声が重なった。


「あのお荷物が、市場にいたんだ!」


「それにあの料理人、貴族みたいな格好で…いや、貴族だって言ってた!」


「は?」


あの男が貴族だと…馬鹿な…


「どこだって言っていた?ア、ア…アッシュ…なんとか」


「アッシュホールド侯爵家の子息だって言ってた!」


アッシュホールド侯爵家…?


息子の言葉に私は今出てきた客間を振り返ると―――


パチ、パチ、パチ、と、

玄関ホールに乾いた拍手の音が響いた。


そこには、にこやかに髭を蓄えた客人が拍手をしながら立っている。


「ご子息たちは随分元気が有り余っているご様子ですね。」


「…アッシュ、ホールド卿…」


「そうなんですよ。我が息子が、前伯爵閣下の強いご意向で、この邸に勤めていたのですが、ようやく先日伴侶を得たと連絡がありまして」


喉が、ひくりと鳴った。


「迎えに来たのですがね、入れ違いになってしまいましたね――。

――ところで、先ほどご子息が言っておられた”お荷物”とは?誰の事でしょう…?」


指先から、温度が抜けていく。


言葉が、出てこない。


伯爵家の邸内で――

当主であるこの私が、何一つ返すことができず、


——ただ、顔を上げることは、できなかった。




【◇クリス視点】


灯りの落ちた部屋に、カーテンの隙間から月光が差し込む。

ベッドがリドの重みで沈み込む。

僕の隣にリドが横になり、掛け布団を、僕にもかけなおしてくれる。

暗闇の中、月光を頼りに、リドの様子をじっと見ていた。


リドがくれる優しい行動は僕の心を温かくしてくれる。

伯爵家にいた頃から、ずっと優しい人。


僕が見ていることにリドが気づいて、苦笑を浮かべながら頭を優しくなで、髪を梳いてくれる。

今はお風呂に入ってエリー姉様のいい香りの洗髪剤を使わせてもらっているから、髪は良い香りでさらさらしている。

頭を撫でられることに喜んでいると、


「眠れない?」


そんなリドの問いかけに、僕は身を彼に近づけてコクリと頷いた。

寝ちゃうと未だに今が夢じゃないかって怖く感じる。

僕が急に近づいた事に、クスリと笑う声が聞こえ、僕の背に手をまわし、ポンポンとなだめられた。


「今日頑張ったな」


ポンポン


「ちゃんと、嫌な事を嫌だって言えて、偉かったな」


そう言いながらリドの声が嬉しそうだ。

頭を撫でる仕草と優しい声で、嬉しさを伝えてくれる。

どうしてリドは褒めてくれるんだろう?


「え…ら、い?」


僕の質問に、リドは少し考えているのが分かった。

そして、何かを思い出すように、言葉を紡ぐ。


「偉いよ。―――自分の本心って人に伝えるの怖いだろ」


リドが? 大人なのに?


「リド…も、こ、わい?」


いつも颯爽と僕に手を伸ばしてくれるリドが怖いなんてあるわけが…そう思っていると少し困った声で弱音を吐露してくれた。


「怖いよ。俺は怖がりだから、大切なものをもう失いたくなくて、逃げ出した弱虫だからね…」


大切なものを失った事があるの?

リド…が弱虫?


そんな事ないよ。

僕が兄上達にご飯食べられないようにされた時も、

熱を出して動けなくなった時も、僕を助けてくれたのはリド。


リドだけだったんだ。


「リ…ド、よわ、む、し…ちが、う」


僕はリドにぎゅっと抱き着きながら首を必死に横に振った。


「クリス…」


そんな僕の行動に優しく名前を呼んで僕を見てくれるリド。月光で少しだけ影がある瞳に見えた。


なんだか苦しそうなお顔…どうしてそんな顔するの?


頭を撫でてくれていた手が僕の頬に移動して、頬を優しくなでてから、


「クリスは俺の側にずっといて欲しい」


切なそうな声でそう言ってる。側に居る。側に居るよ。

だって僕はリドの伴侶だもん。


僕はおずおずと手を伸ばしリドの頬に触れると、少し伸びたお髭がチクチクと手の滑りを悪くする。じょりじょりした感触が面白い。


「そして俺の作る料理を食べて。笑ってくれると嬉しい」


リドのご飯とっても美味しい。美味しいと笑顔になるよね。僕はいっぱい頷くと、リドが、やっぱり切なそうな声で言うんだ。


「一緒に料理をしてた友達を失ってね。彼の代わりみたいに、料理人の道を歩んだ…」


大人なリドの弱音…

子供みたいな僕には、こんな時どうすればいいのか…分からないから

せめて僕の気持ちは伝えたい。


僕は両手でリドの頬をはさむと、暗闇に月光を受けて光る彼の目を見て笑って伝えた。


「リド、の…ごは、ん…おいし。す、き」


僕の頬を撫でるリドの手の動きが止まった。

暗い室内で僕は目を凝らし、彼の瞳を見続けていると、ふいに彼の目が細められた。


「ありがとう。」


そう言ったリドの目元が光っている。

僕はコクコクと頷くと突然耳元でリドの声が優しく響く。


「クリス好きだよ」


僕は近づいた彼の熱い息につられ顔を真っ赤にしてしまう。

好きって言われた。

嬉しい。お顔が熱い。戸惑ってリドから視線を外すと、また耳元で声がする。


「俺の伴侶になって後悔しない?」


「し、ない」


即座に返すと、リドのお顔はびっくりしながらも嬉しさが隠せない様子の表情に嬉しくなった。

僕も伝えよう。

リドに、僕の気持ちをいっぱい。


「り、ど」


彼を呼ぶ声が、少しだけ高くなる。


「……す、き」


頬に溜まる熱を感じながら彼の目を見て伝えると、リドは「ふふっ」と笑ってくれた。

そして、僕のおでことリドのおでこをこつんと合わせ、


「俺も好き。俺の伴侶が可愛すぎて死にそう」


そんな事を言うんだよ。だめだめ。死んじゃダメ。

これからずっと一緒ってさっき言ったでしょ?

そう思いながら僕が頭を横に振ると、リドはまた笑う。


「ふふ…明日俺の父親がここに迎えに来るから。もう寝よう」


明日!リドのお父さんに会うの楽しみ。

僕はリドの手を握って、こくりと頷きながら握った手に力を入れた。

そんな僕の額に「チュッ」っとリップ音を鳴らして、


「お休みクリス」


暗闇の中、優しい声のままリドは眠りに落ちていく。

僕は頭から火が吹きそうな位顔を真っ赤にしてしまう。

リドが大人すぎる。

まだまだお子様な僕だけど、リドの傍に居る為に、

僕の気持ちを知っていて欲しい。


へたくそな言葉遣いだけど、気持ちだけは―――


「リ…ド…すき」


僕の言葉を聞きリドは僕を抱きしめた。


「ありがとう。クリス…ずっと一緒に居よう」


リドの言葉が嬉しい。

ずっと一緒にいたい。大好きリド。


リドのぬくもりに包まれながら、ずっと心の中で何度も噛み締めて、眠りに落ちた。


読んで頂きありがとうございます(❁´ω`❁)

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