超展開? そうでもない?
「どうしてこうなった」
胸中を言葉にするならまさにそれ、俺は大パニックだった。
「あー、何て言うんすかね? 聞いた話だと真実に関係なく自分の同級生、先輩のことを自分と付き合ってる人だって疑いそうじゃないっすか?」
そして独り身で許嫁も居ないことが知られてしまった自身にも同級生が言い寄ってくることが容易に想像できる。なら、この際交流を続けてしまえばいいのではないかというのが、プレスの意見だった。
「恋人とかそっち方面でについては無理強いしないし先輩次第っすけどね。学年別だから授業にご一緒するわけにはいかないっすけど、それでも課題とかテスト勉強方面でなら補正でお手伝いできるっすし」
「あ、なんだ、確かに補正は助かるが、その、いいのか?」
同級生に追っかけられてるというなら、恋の相手的な意味でいえばより取り見取りのはずだ。まして、学年が違う相手ではプレス自身も口にしていたが、一緒に授業にも出られない。
「……正直自分にもちょっとわかんないんすよ」
「は?」
「んーと、ホラ、自分許嫁が居たからってそれまで男女のお付き合いノータッチだ生きてきてたもんで、それがどういうモノなのか全く未知数で」
あっけにとられた俺に気まずげな様子でプレスはもじもじつつ補足するが、それでいいのだろうか。
「わからないって、それで最初の相手が俺で大丈夫なのか? 自慢どころか自虐だが俺も幼馴染に張り付かれたり振り回されてたせいでそういう経験は皆無なんだが」
知識面だって本屋で読んだ小説辺りによるものしか持ち得ていない。
「それならむしろおあいこみたいなモンじゃないっすか? あ、ただ、一つ、これはクラスメイトに聞いたんっすけど」
「クラスメイトに」
「そうっす。かつ、さっき思い出した感じっすね」
「ふむ」
一つ唸って視線で先を促しつつも、俺はなんとなく天井を見上げた。経験則、こういう時に打ち明けられる話というのは、聞いて後悔する話が多かった気がしたのだ。つまり、現実逃避の前準備とかそんな感じだろうか。
「で、この実技実習室、防音なんすよ。魔術ぶっ放すから当然なんすけど……その防音をよいことに、『風紀委員が助走をつけて飛び蹴りかましてきそうなくらいいかがわしいこと』をヤってるカップルが居るとかいないとかで」
「待て」
やはり聞いて後悔するタイプの話だった。
「今、俺たちが居るのは?」
「実技実習室っすね」
そうだ、そのクラスメートの話にあった実技実習室であり。使ってるのはプレスと俺、つまり一組の男女で。
「俺たちが一緒にここにいる件について真相を探ろうとしてる連中が居るんだったよな?」
「そうっすね。まぁ、それを含めてさっきの提案になるんすけど」
「……なるほど」
場合によっては真実など関係なく俺達はここでイカガワシイことをしていた二人とみなされる可能性がある。だからその責任を取る形でも先ほどの申し出になるという訳なのか。
「それに、破れた教科書の件も報告しないとっすし」
「あぁ、報告してるところを誰かに見られる可能性もあるのか」
「報告自体は自分一人でしておいても構わないんっすけどね、一人だけでとなるとそれはそれで邪推されそうじゃないっすか?」
プレスが同意を求めてくるが、確かにそれは否定できない。
「なら開き直って付き合ってしまえばいい、と大体そんなところか?」
「その通りっす。ちなみにコレは先輩が触媒取りに行く前に話した『出産を前提に既成事実を作らせてください』の子が万が一どこかで先輩のことを聞きつけた場合の虫よけの意味合いもあるっす」
「そういえば言ってたな、聞いただけだと人物像がまだ想像できないが」
遭遇してからでは遅いのだろう。
「まぁ俺も特に好きな相手は居ないし――」
アレと比較対象にするのは申し訳ないが、俺の知ってる家族を除いた最も身近な異性が酷すぎたこともあってか、プレスのことはそれなりに好ましく思っていた。決してそのおっぱいが、とかではなく、気遣いとかそういう面での話だ。
「じゃあ決まり、でいいっすかね?」
「あぁ」
「了解っす。では、不束者っすけど宜しくお願いするっすよ、先輩」
「こちらこそ、な」
こうして俺達は付き合い始めることとなり。
「さてと、ならもう人目を気にする必要もないっすね。この実習室使える時間ももうあんまり残ってないっすし、時間になったらカギ、二人で返しに行くっすよ?」
「あ、あぁ」
なんだか主導権をもう握られてしまってる気もするが、不思議とあの幼馴染の時のような不愉快さは感じず。
「あ」
不意に声を上げた。せっかく持ってきた触媒だったが、使う時間ほとんど残ってないのではと気が付いて。




