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予期せぬ展開

なんだか最近重いですね。


満足に感想も確認できなかったり。

「全身の筋力強化なら脚力の強化も含んでいる。さっき使っていた魔術で逃げの一手なら、何とかなるか……ふむ」

 俺とプレスのことを話題にしていた後輩数名の横を通り抜けて寮の自室に戻った俺は、持ってゆく触媒の選定をしつつ今度は顔が割れて絡まれた場合について考えて居た。

「さっきは俺が話題の人物だと知らなかったようだから素通りできたが、そのままだと思うのはやはり危険だな」

 どうしたものかと唸ってしまったとしてもきっと仕方ないだろう。幼馴染の他に気をつけなければいけないものが増えたのだから。

「いっそのこと軽く変装でもしてゆくか? 髪形を変えて上に私服の上着でも羽織れば……いや、見かけない顔が校内をうろついていたら逆に興味を引くかもしれんな」

 少し悩んで変装を没にしたのは、イメージが変わる程髪形を変えるには時間がかかるからだ。

「教科書と用意はしてたものの、今の今まで使わなかったこの触媒だけにしておこう」

 複数の魔術を一度にかけるに等しい難易度の高い魔術にはある意味専用の触媒が存在する。まぁ、かける複数の魔術それぞれの触媒をすべて詰め込んだモノなのだが、透明の触媒容器に収まっているのは、魔術と縁もゆかりもない人間が見たなら、枯れた植物と何か貴石の様なモノそして動物の骨の欠片にしか見えないだろう。ある意味でそれは正しい。

「この世で最初に魔術を使ったのは、獣であった。超常現象を引き起こせるそれらをただの獣と言うカテゴリに止めておくことなど出来ず、我々はそれらを魔物と呼んだ」

 魔物は我々人間の敵であり教師であり生存競争におけるライバルでもあった、と教科書には書かれている。肉体の一部に触媒と同じ機能を備えた魔物達は、誰かに教わることなく魔術を使い。それを見た魔術師の祖とも言うべき人々は多大な犠牲を払って打ち果たした魔物の死体の一部を使って、魔術を使おうと試行錯誤した。

「ある者は魔物の頭蓋骨を被り、またある者はミイラ化した魔物の腕を杖に加工し」

 見よう見まね、そして手探りの試みは魔術の失敗、暴走によってさらに何人もの犠牲を出し。研究の過程で魔物の死骸以外にも魔術を行使するのに助けとなるモノが発見された。大きく分けると二つ、植物と鉱物だ。魔術師の祖達は元の魔物の死骸を含めたこれら三つを動物性触媒、植物性触媒、鉱物性触媒と名付け、初めての魔術を成功させた後、劣化と変質を防ぐ加工法の模索を始めることとなる。

「その成果がこれである訳だが」

 恩恵を受けて居る身としては先人に頭の下がる思いだ。俺は透明容器に入った触媒をじっと見つめ徐に鞄へしまい込む。色々持ってゆくなら全部腰からぶら下げていくわけにもいかないし、学生用の鞄には専用の触媒を収めるポケットがついているのだ。

「とりあえずこんなモノか」

 いろいろ詰め込んでそれなりに重くなった鞄を紐で肩にかけると、念の為にと戸口に立てかけてあった鞘入りの剣を背負う。

「昔は腰に魔術触媒をぶら下げると思わなかったな」

 幼いころ剣士ごっこした時は木の枝を腰にさしていたが、今剣を腰に佩くとぶら下げている触媒と喧嘩する。故に剣は背負うのが魔術剣士のスタイルだ。結局魔術剣士科に進めていない俺がやると、あの不愉快生物は身の程知らずだとよく馬鹿にしたが、その頃の俺はまだあの幼馴染が約束を守って自分は魔術剣士科へ進めるものだと信じていた。

「って、いかん」

 感傷に浸る余裕なんてない。俺は外に出るとドアの鍵だけかけて早足に歩き出した。


◆◇◆


「それで急いだ結果が、これか」

 警戒していたが寮の前では先の後輩数名には出くわさず取り越し苦労だったかと少し思いつつやってきた事務室の前。

「何が不満なのよ! 私が勉強を見てあげるッて言ってるじゃない! 実習室使わせなさいよ!」

「使うも何も借りてねぇつってんだろうが!」

 喚き散らすのは、気をつけないといけないものその一とその二。

「後輩の方が情報収集にあの不愉快生物に声をかけて、それを不愉快生物が自分の都合の良いように解釈したとか、おおよそそんな辺りだろうな」

 アレは人の話を聞かない。だから、話がすれ違って、何度説明しても通じない不愉快生物にあの後輩がブチ切れたのだろう。

「これでお互いがお互いに気をとられてスルー出来ればよかったんだが」

 両者が向き合っている位置の都合上後ろを通った場合、反対側のもう一方には俺の姿が見える。後輩なら実技実習室の方に向かう上級性を放置なんて出来ないだろうし、不愉快生物の方は視界に俺が入れば俺だとわかる筈だ。

「どうすりゃいいんだ、これ」

 俺は柱の陰で頭を抱えた。

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