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父の教え

青年……ダルタニアンは夢を見ていた。


ダルタニアンはフランスの南西部のガスコーニュ地方の街タルブの生まれだ。

馬で少し走ればスペインとの国境となる田舎町である。


そんなガスコーニュには1人の英雄がいた。

フランスの先王アンリ四世である。

彼は元々はガスコーニュ地方にあった国ナーヴァルの王だったが、偶々フランス王家との血の繋がりが強く、また偶々フランス王家の血筋が途絶え、フランス国王になった男だ。


勿論彼は単なる運のいい男と言うだけでなく、優れた武人であった。


そのためガスコーニュ地方の人々は自分の子供をアンリ四世のような素晴らしい人間にしようと育て上げる。


ダルタニアンの家も一応貴族ではあったが、パリの貴族のようにダンスの練習や社交術などを習ったことは数えるほどしかなく、主に剣術や魔術それに兵法などとにかく戦うことを教えられてきた。


そんな彼は18のある日父に呼ばれた。


「ダルタニアンお前も既に18。パリに出て功績を上げて立派なオトコになってこい!」


そう言われてダルタニアンは喜んだ。

自分もかつてアンリ四世がそうした様に、自分の力で身を立て、たくさんの冒険してみたいと幼い頃から思っていたからである。


「はい!父上!」


「いい返事だ。そんなお前に四つの贈り物がある。」


贈り物と聞いてダルタニアンは喜んだ。うちは貴族とはいえ貧乏だが、父も息子の旅立ちには素晴らしい物を送ってくれるであろうと思ったからである。


「一つ目はうちの馬だ。あの馬はこの家で生まれ、育ったのだからお前も大事に思っているはずだ。大切に面倒を見てやってくれ。」


そう言われてダルタニアンは心の中で溜息をついた。

確かにあの馬は1日に何十キロも走る馬ではあるが、どう贔屓目に見ても駿馬とは言い難いからだ。


「二つ目は金だ。ここに15エキュある。旅費にしなさい。」


ダルタニアンは絶句した。

パリに行く旅費にしてはらあまりにも少ないからだ。


「三つ目はこの剣だ。分かっていると思うがこの剣は先祖代々伝わるものだ。必ずお前の力になってくれるだろう。」


ダルタニアンは心の中で泣いた。

確かにその剣は先祖代々伝わる名品だろう。

しかし悲しいかな先祖代々使ってきたお陰で既に耐久値がとても低く、切れ味も鈍っているからだ。


「そして四つ目は教訓だ。よく聞け、お前は家名を汚すようなことはするな。国王陛下と枢機卿猊下それにトレヴィル公爵に敬意を払い、この方達を除いて誰にも遠慮せず、自分を信じ冒険にとびこんでいけ。

決闘は禁止されているが恐れることはない機会があれば出来るだけすればよい。

ここにトレヴィル公への紹介状がある。

彼とは昔親友でな、きっとお前を助けてくださるだろう。

トレヴィル公爵に認められるような立派な男になり、お前の成功がこの田舎町にまで届くほどの結果を出せ。ワシはその日を楽しみに待っておる。」


「はい、父上!」


ダルタニアンは他の贈り物などどうでもよくなった。

それほどまでに父の言葉に感動し、深く心に刻んだからだ。







マンの町の宿屋。


「おい!主人あの男はどこに行った!」


ダルタニアンは飛び起きると母に以前教えて貰らい作っておいたロマの秘薬を自分の身体の傷口に塗り、宿屋の一階へ駆け下りた。


「あの騎士様だったら、もう何処かへ行ってしまったよ。それよりお前さん早く出て行ってくれんかね?」


どうやら既に遅かったらしい。


「くそっ!取っておけ!」


ダルタニアンはカバンから財布を取り出し、2エキュ支払って外に出た。

とそこでカバンに入れておいた手紙が開いていることに気がついた。


「くそっ、あの騎士確かロシュフォールとか言ったか何故これを開けやがった!」


ダルタニアンは怒って馬に飛び乗りパリへ向け走り出した。



それからの道のりは大したこともなく、無事にダルタニアンはパリのサン・ミシェル門をくぐれたのであった。



そして彼は直ぐにトレヴィル公爵の元へ行こうとしたしかし…


「剣が折れているな……」


幾ら田舎者とはいえ銃士になるのに剣すら持っていないのでは話にならない。

そこで彼は武器屋に向かったのだが……


「頼む5エキュにまけてくれ!」

「譲れんね、8エキュだ。」

「そこをなんとか…」


パリは田舎町と比べ物価が高い。一番安い剣ですらタルブの二倍の値段がするのだ。

今ダルタニアンの手持ちは7エキュしかなく、また食事や宿のことも考えると2エキュは残しておきたいのだ。


「ならよ坊主、その馬を俺に売ればいい3エキュで買い取ろう。」


ダルタニアンは悩んだ。父から大切にしろと言われているこの馬だが、剣買えなければトレヴィル公爵に会うことすらできずそれはそれで父を裏切ってしまう。


「ぅぅ、分かった!それでいい!」

「あい、まいどー」


ダルタニアンは馬と金を渡して剣を受け取る。


(じゃあ行くとするか……)


馬を失ったので歩いてトレヴィル公爵の屋敷へ向かう彼が修道院の近くを通ると決闘が行われていた。

巻き込まれないようにこっそりと様子を伺う。


向かい合っているのは枢機卿の護衛士6人と近衛銃士3人だ。


「おやおや近衛銃士諸君。何をしているのかね?改めさせてもらう。」

「何を言っている。我々はスキルの練習をしていたまでだ。」

「そういうのは監獄で聞こうか……お前たちこいつらを捕縛しろ!」

「「「「「イエスマイロード」」」」」


護衛士達は魔銃を構え、恐る恐る進んでいく。


「それと……そこにいるお前!何の用だ!」


隊長らしき男がこちらへやってきた。


「そちらこそ何者だ!」

「私はジュサック、枢機卿猊下の護衛士隊の者だ。お前は?」

「私はダルタニアン。今日パリに来た者だ。」

「そうか、では何故そこに隠れていた?」


ジュサックは剣に手をかける。


「隠れてなどいない!たまたまここを通りかかっただけだ!今日パリに来たばかりなんだぞ!色々分からんことが多いのだ!」

「そうか、しかしそれを証明するものはあるのか?」

「ああ、改めてくれ。」


そう言ってダルタニアンはトレヴィル公爵宛の手紙を渡す。


「これはトレヴィル公の……貴様もやはり近衛に関係する者か!捕えよ!」


いきなり護衛士達が魔法を放ってくる。


「なんだと!『ステップ』『ハイステップ』」


ダルタニアンはスキルを使い、ジュサックから手紙を取り返して、近衛銃士の近くへ行く。


「済まないな、我々の所為で…私はアトスだ。」


リーダー格らしい男性……アトスがそう言った。


「俺はポルトスだ。ダルタニアンだったか?怪我は……無さそうだな。」


大柄な男性……ポルトスはダルタニアンの体を見回し、怪我が無いことを見て安心する。


「私はアラミスだ。巻き込んで申し訳ない。武器はあるか?」

「あ、はい。剣と魔銃が」

「なら丁度いい。我々に加勢してくれないか?」

「な!何言ってるアラミス!」

「そうだ。こんな子供に……」

「わかりました。私もこんな言い掛かりには耐えられません。共に戦いましょう!」


それを聞いてジュサックが

「おやおや、ダルタニアンくん?君が争いに巻き込まれて傷つけばお母さんが泣くぞ?」


ニヤニヤとゲス顏をしながらこちらを伺うジュサック。


しかしダルタニアンの覚悟は既に決まっていた。


「確かに母は泣くかもしれない。しかしここでこの人たちを見捨てれば母だけでなく父もなくだろう!『エナジーショット』!」


戦いが始まった。

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