↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奇跡の裏側  作者: AKR
PR
3/23

第3話 二人での開始

「獲得ポイントについてご説明します」


 黒服の男が言った。


「相手を倒した際に得られる基本額は、その相手の初期ポイントと、死亡時の所持ポイントのうち、多い方となります」


 豪は顔を上げた。


「さらに、とどめを刺した者と、倒された者の初期ランクの差によって補正されます。初期ランクは種族などを基準に決定され、その後の能力強化によって変動することはありません」


「強い相手を倒せば、たくさんもらえるってこと?」


 澪が小声で言った。


「たぶん」


 豪は答えた。


 目の前の画面にも説明が表示されていたが、細かな条件までは追い切れなかった。


「続いて、パーティーについてご説明します」


 画面が切り替わった。


【パーティー】


【上限人数:5】


「パーティーを組んだ参加者は、一定範囲内で獲得したポイントを均等に分配されます。その際の補正は、とどめを刺したメンバーの初期ランクを基準に計算されます」


 澪が少し身を乗り出した。


「また、メンバー間ではポイントの譲渡が可能です。加入と脱退は、戦闘中を含む任意のタイミングで行えます」


 豪は文字を追った。


「移動前に結成した場合、同じ場所から開始できます。結成しない場合は、それぞれ個別に配置されます」


 隣で澪が顔を上げた。


 豪も彼女を見た。


 少しの間、二人とも何も言わなかった。


「……組みますか」


 先に口を開いたのは澪だった。


「私、一人で行くのは嫌です」


 豪は周囲を見た。


 近くにいた人々が、互いの顔を見始めていた。声をかけ合う者もいれば、離れていく者もいる。


「腕に覚えのある者はいないか」


 刀を下げた男が呼びかけた。


 数人がそちらを振り向いた。


 豪は自分の腕を見た。


 荷物なら毎日運んでいる。高校では陸上部だった。


 人と殴り合ったことなど、ほとんどない。


「俺でいいのか」


「ほかに、話した人いないので」


 澪は答えた。


 豪は彼女の手を見た。


 上着の裾を、まだ強く握っていた。


「俺も、何ができるか分からないけど」


「私もです」


「……じゃあ、一緒に行こう」


 澪が小さくうなずいた。


 豪がパーティー、と念じると、新しい画面が開いた。


【パーティーを作成】


 文字を選ぶ。


 今度は、メンバーを招待する項目が現れた。


 澪を見てから、招待しようと考える。


「あ、来ました」


 彼女が目の前の何もない場所を見た。


 豪からは、その画面は見えなかった。


「これ、承認すればいいんですよね」


 豪の前に文字が現れた。


【澪がパーティーに加入しました】


【メンバー:豪/澪】


 その二行を見て、豪は少しだけ息をつけた。


 知らない場所へ、一人で行かずに済む。


「なお、購入したアイテムを、所有者の意思に反して奪うことはできません。他者への譲渡や、他者に対して使用することは可能です」


 黒服の男の説明は続いていた。


「水や食料も購入品に含まれます。移動先で、自然から調達することはできません。参加者の身体を食料とすることも不可能です」


 澪が、自分の画面を操作しているらしい。


「何見てる?」


「買えるもの。水、あるかなって」


「もう買えるのか」


「項目は開けます。でも、あとにします」


 澪は顔を上げた。


「向こうがどんな場所か、分からないし」


 豪もうなずいた。


 森なのか、街なのか。


 人がいるのか。眠れる場所はあるのか。


 考え始めると、聞きたいことが次々に浮かんだ。


「分からないことは、移動後も案内から確認できます」


 男が言った。


「帰還を願う皆さんの健闘を祈ります」


 誰かが前へ駆け出した。


「まだ終わってねえぞ!」


 その姿が、途中で消えた。


 豪は立ち上がった。


 足元の床が透けていた。


 澪が腕を伸ばした。


 豪はその手をつかんだ。


     *


 冷たい空気が頬に触れた。


 靴の下で、何かが潰れる音がした。


 豪は息を吸った。


 湿った土の匂い。


 目の前に、太い木の幹があった。


 見上げると、幾重にも重なった葉の隙間から、白い空が見えた。


 長椅子も、人々もいなかった。


 右手だけが温かかった。


 澪が隣に立っていた。


 二人はしばらく手をつないだまま、周囲を見回した。


「……森?」


「ああ」


 それ以上のことは、何も分からなかった。


 ゆっくり手を離すと、澪は自分の指を握り込んだ。


 近くで草が揺れた。


 二人とも振り向いた。


 何も出てこなかった。


 豪は、息を詰めていたことに気づいた。


 ここには、ほかの参加者がいる。


 自分たちと同じ説明を聞いて、ここへ来た者が。


「まず、どっか落ち着ける場所を探そう」


 豪が言うと、澪はうなずいた。


「豪さん」


「ん?」


「さっき、妹さんがいるって言ってましたよね」


「ああ」


「帰りましょうね」


 豪は澪を見た。


 彼女の顔は強張っていた。


 励ましているというより、自分にも言い聞かせているようだった。


「帰ろう」


 豪は答えた。


 妹に話すことがあった。


 朝、言えなかったことがある。


 目の前に画面を開いた。


【所持ポイント:100】


 その下にある帰還の項目は、まだ選べなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。