第2話 昨日と同じ朝
「俺……高校入学の日に戻ってる……?」
口に出してみても、まるで現実味がなかった。
矢城勇真はベッドの上に座ったまま、スマートフォンと部屋の中を何度も見比べる。
表示されている日付は四月八日。壁のカレンダーも三年前のものになっており、机には新品の教科書と鞄が置かれている。何より、鏡に映っている自分自身が三年前の姿に戻っていた。
「夢……じゃないよな?」
試しに頬をつねってみると、普通に痛い。
夢の中でも痛みを感じることがある、なんて話を聞いた気もするが、そんな知識で納得できる状況ではなかった。
昨日、自分は高校を卒業した。
その記憶は間違いなくある。
卒業式が終わり、真下たちに馬鹿にされ、昇降口では堀井から「卒業、おめでとう」と声をかけられた。そして校門の前で、自分の三年間を振り返った。
何もない高校生活だった。
だからこそ、自分が変わらなければ、大学へ行っても社会人になっても何も変わらないと気づいた。
人生の勝ち組になってやる――そう決意したところまでは、はっきり覚えている。
問題は、そのあとだった。
「俺……昨日、どうしたんだっけ」
スマートフォンに何かの通知が届いたような気がする。誰かに呼ばれたような記憶もある。
女の声と、夕暮れの景色。
そして、一瞬だけ見えた何かの光。
そこから先を思い出そうとすると、霧でもかかったように記憶が曖昧になった。頭の奥にわずかな痛みを感じ、勇真は考えるのをやめる。
「勇真ー! まだ着替えてないの!?」
階下から母親の声が飛んできた。
「入学式に遅れるわよ!」
「分かってる!」
反射的に返事をしてから、勇真は改めて制服を見る。
新品だった。
三年間着続けた制服ではない。
どう考えてもおかしいが、いつまでも部屋に閉じこもっているわけにもいかなかった。
勇真は制服へ着替えながら、鏡に映った自分を見る。
「もし……本当に三年前に戻ったんなら」
そんなことが起こる理由なんて分からない。
それでも、もし本当に高校生活を最初からやり直せるのだとしたら――昨日、校門の前で抱いた後悔をすべてやり直せる。
三年間、何もできなかった。
友達もできず、恋愛もしないまま、言いたいことさえ言えずに卒業した。
そのすべてを、もう一度最初から始められる。
「……チャンスってことか?」
胸の奥が、わずかに高鳴った。
なぜ戻ったのかは分からない。卒業式のあとの記憶が途切れていることも気になる。
それでも、せっかく与えられた三年間を前と同じように過ごすつもりはなかった。
勇真は新品の鞄を手に取ると、鏡の中の自分を見据えた。
「今度こそ、絶対に変わってやる」
◇
家を出ると、見覚えのある景色が広がっていた。
当たり前の通学路なのに、妙に懐かしく感じられる。三年間も毎日のように歩いた道なのだから当然だが、つい昨日まで通っていた場所を三年前の自分として歩いていると思うと、不思議な感覚だった。
「確かこの辺で……」
入学式の日に何があったのか思い出そうとする。
ところが、具体的な出来事がほとんど浮かんでこない。
高校三年間を過ごした記憶はある。誰がどんな人間だったのかも、おおよそ分かっている。
名取桃香は、小学校の頃から知っている人気者。
清水千尋は気が強く、派手な見た目のギャルで、自分を嫌っていた。
成瀬健太は勉強も運動もできる人気者で、性格まで良かった。
真下徹は、自分を馬鹿にしてきた嫌な奴。
堀井将士も目立つタイプではなかったが、悪い奴ではない。
そうした印象は残っているのに、「一年生の四月八日に何が起こったのか」と聞かれると、途端に何も思い出せなくなる。
「三年前だから、忘れてるだけか……」
それなら不思議ではない。
勇真はそう考えて、深く気にしないことにした。
今重要なのは、これからだ。
やがて校門が見えてくる。
昨日、卒業生として出たはずの場所へ、今日は新入生として入っていく。
勇真は一度大きく息を吐き、校門をくぐった。
「ここから変えるんだ」
◇
一年三組。
教室へ入ると、まだ名前も知らない者同士が、互いの様子を探るように会話をしていた。
もちろん、勇真にとっては知らない相手ではない。
教室を見渡すだけで、次々と名前が浮かんでくる。
成瀬、高石、真下、堀井。
そして、伊藤レオ(イトウ レオ)と佐藤拓哉。
女子の方へ目を向けると、名取の姿がある。
その少し離れたところで女子数人と話しているのが、清水千尋だった。
明るめの茶髪をゆるく巻き、制服も少し着崩している。目元には薄くメイクが入り、華やかな顔立ちも相まって、いかにも今時のギャルといった雰囲気だ。見た目だけでも十分目立つのに、物怖じしない性格もあって、元の高校生活ではいつも自然と女子の輪の中心にいた。
ただ、勇真にとって清水には、それ以上に強く残っている印象がある。
(清水……)
なぜか自分を露骨に嫌っていた女子。
三年間を思い返しても、まともに話した記憶より、冷たい視線や刺々しい態度を向けられた記憶の方が多い。けれど、そこまで嫌われる理由については、勇真自身にもまるで心当たりがなかった。
その清水の隣で楽しそうに話しているのが、栗原友香。清水の一番仲のいい友達で、同じくギャルっぽい見た目をしているが、清水よりも表情が明るく、よく笑う。ノリもよく、元の高校生活でも二人で一緒にいるところをよく見かけた。
その近くには、三島由香、林円花、浅井由実の姿もあった。
「本当に……みんないる」
当然のことなのに、思わず呟いてしまう。
「矢城?」
突然声をかけられた。
振り返ると、名取が立っている。
「やっぱり矢城じゃん! 久しぶり!」
「名取……」
高校三年間を終えた勇真にとって、名取はつい昨日まで同じ高校にいた相手だ。
けれど名取にとっては違う。
小学校以来、久しぶりに会った同級生。
その認識の違いが、なんとも不思議だった。
「同じクラスなんだね」
「ああ」
「小学校以来だっけ?」
「そう……だな」
危ない。
つい「昨日も会っただろ」と言いそうになる。
勇真は慌てて言葉を飲み込んだ。
「三年間よろしくな、名取」
「…………」
名取が目を瞬かせる。
「え?」
「何?」
「いや……三年間?」
「…………あ」
高校は毎年クラス替えがある。
同じクラスなのは、少なくとも今のところ一年間だけだ。
「あー……高校生活三年間、お互い頑張ろうって意味」
「何それ」
名取が笑う。
「矢城ってそんなキャラだったっけ?」
「……俺も今日から変わるんだよ」
「ふーん?」
名取は不思議そうにしながらも、楽しそうに笑って自分の席へ戻っていった。
勇真は小さく息を吐く。
まだ始まって数分しか経っていないのに、早くも空回りしている。
ただ、以前の自分なら名取から話しかけられても、まともに会話すら続かなかったはずだ。
「まあ……前よりマシか」
少なくとも、自分から変わろうとはしている。
◇
入学式を終えて教室へ戻ると、担任から学校生活について簡単な説明があり、その後は一人ずつ自己紹介をすることになった。
勇真の番が近づいてくる。
以前の自分なら、名前と出身中学だけを言ってすぐに座っただろう。
しかし、それでは何も変わらない。
昨日決めたばかりだ。
自分から動き、友達を作って、今度こそ高校生活を楽しむ。
「次、矢城」
「はい」
勇真は立ち上がった。
クラス中の視線が集まる。
緊張はする。それでも、以前の自分とは違うところを見せたかった。
「矢城勇真です。中学ではバスケ部でした。勉強もまあ……そこそこできます」
ここまでは悪くない。
「高校では、できるだけたくさん友達を作りたいです。それと――」
一瞬迷った。
けれど、「変わる」と決めた勢いが勝った。
「できれば彼女も作りたいです!」
教室が静まり返った。
直後、何人かが吹き出す。
「自己紹介でそれ言う!?」
「正直すぎるだろ!」
笑いが広がっていく。
名取も口元を押さえて笑っており、成瀬まで困ったような顔をしながら笑っていた。
「……よろしくお願いします」
勇真は顔を真っ赤にして座った。
今すぐ机に額を打ちつけたい気分だった。
「何してんだ、俺……」
変わることと、思いついたことを何でも口に出すことは違う。
そんな当たり前のことに、今さら気づいた。
◇
休み時間になると、勇真は気持ちを切り替えた。
失敗したからといって、もう黙って過ごすつもりはない。
まず目に入ったのは成瀬たちだった。
成瀬の隣にいる高石は、元の高校生活でもいつも成瀬と一緒にいた親友だ。成瀬ほど何でも目立つタイプではないものの、勉強も運動もそつなくこなし、誰に対しても気さくに接する男子だった。
以前の勇真は二人を遠くから見ているだけだったが、今度は違う。
「成瀬、だよな?」
「うん。矢城だっけ?」
「ああ。高石も、よろしく」
「おう、よろしく」
高石が気さくに返してくれる。
そこからバスケットボールの話になり、意外にも会話は続いた。
勇真は内心驚いていた。
成瀬も高石も、以前の高校生活ではほとんど話したことがない。しかし実際に自分から声をかけてみれば、二人とも普通に話してくれる。
もしかすると、相手との間に壁を作っていたのは自分の方だったのかもしれない。
そんなことを考えながら周囲を見ると、今度は伊藤と佐藤が目に入った。
伊藤は見た目も態度も怖く、元の高校生活でも男子の中心にいた存在だ。喧嘩っ早いところはあるものの、卑怯なことや弱い者いじめを嫌う性格で、少なくとも勇真を見下してくるような男ではなかった。
その隣にいる佐藤は伊藤の親友で、派手な見た目のわりには周囲をよく見ており、伊藤が熱くなった時には止め役に回ることも多かった。
ただ、そんな二人と以前の勇真が親しく話したことはほとんどない。
「よし……」
少し怖い。
それでも人生を変えると決めた以上、今までと同じことをしていても仕方がない。
勇真は意を決して二人のところへ向かった。
「伊藤」
「あ?」
伊藤が振り向いた。
その一言だけで、勇真の身体が一瞬固まる。
「な、何?」
「いや……」
ここまで来た以上、引き返す方が恥ずかしい。
勇真は意を決して口を開いた。
「友達になろう」
伊藤が無言になる。
隣にいた佐藤も、何とも言えない顔で勇真を見ていた。
「急だな」
「ですよね」
「なんで敬語?」
「あっ……」
佐藤が吹き出す。
「お前、面白いな」
伊藤まで少し笑った。
勇真もつられて笑う。
完全に空回りしている。それでも、以前の高校生活とは明らかに違っていた。
自分から話しかければ、相手も反応してくれる。
そんな当たり前のことが、勇真には新鮮だった。
◇
放課後。
初日からかなり疲れていたが、勇真には妙な充実感もあった。
「矢城」
聞き覚えのある声に振り返る。
そこにいたのは真下。その後ろには、いつものように川井と林剛もいた。
三人は元の高校生活で、何度も勇真を馬鹿にし、からかいの対象にしてきた連中だった。最初は軽口程度だったものが、いつしか三人にとって勇真を弄ることが当たり前になり、勇真にとっては学校へ行くのが嫌になる理由の一つにまでなっていた。
そんな三人が、三年前と同じように目の前に立っている。
「自己紹介、すごかったな」
真下が笑う。
「彼女欲しいです、だっけ?」
川井たちも笑い始める。
その瞬間、勇真の中で三年間積み重なった嫌な記憶が一気に蘇った。
また同じことが始まる。
そう思った途端、勇真の口から言葉が飛び出していた。
「……うるせえよ」
真下の笑顔が止まる。
「は?」
「人のこと馬鹿にして楽しいか?」
「何キレてんの?」
「お前、前からそうだよな。人を馬鹿にして、しつこく絡んできて――」
「ちょっと待てよ」
真下が眉をひそめた。
「何?」
「前からって何だよ」
その言葉で、勇真の勢いが止まった。
真下は本気で不思議そうな顔をしている。
「俺、お前と今日初めて話したよな?」
「…………!」
その一言で、頭に上っていた血が一気に引いた。
そうだ。
勇真にとって目の前の三人は、自分を何度も馬鹿にし、学校生活を苦痛にした連中だ。
けれど、それはこれから起きること。
今の真下たちは、まだ勇真をいじめていない。
今だって、少し自己紹介をからかわれただけだ。それに対して勇真は、これから起こるはずの三年分の怒りまでまとめてぶつけようとしていた。
「いや……悪い。何でもない」
「何だよ、こいつ」
真下は怪訝そうな顔をしながら、川井たちと離れていった。
勇真はその場に残り、しばらく動けなかった。
「……そうだよな」
三年前に戻ったということが、ようやく別の意味で実感できた。
自分は三年間の結果を知っている。そのせいで無意識に「こいつはこういう奴だ」と決めつけていた。
けれど、今の彼らはまだ何もしていない。
これから自分の行動が変われば、相手との関係だって以前とは違うものになるかもしれない。
「これ……気をつけないとダメだな」
やり直すというのは、自分だけが違う行動をすることではないのかもしれない。
そう考えると、三年前に戻ったという出来事が、少しだけ楽しみに思えてきた。
◇
夜。
勇真はベッドに横になり、今日一日を振り返っていた。
「……やりすぎたな」
自己紹介では彼女が欲しいと宣言し、伊藤にはいきなり「友達になろう」と言った。真下には、まだ何もされていないのに三年分の怒りをぶつけかけた。
人生を変えるどころか、ただ暴走しただけと言われても否定できない。
それでも、悪いことばかりではなかった。
成瀬や高石とは普通に話せたし、伊藤や佐藤ともほんの少しだが会話ができた。
以前の高校生活では、最初から「どうせ俺なんか」と諦め、自分から誰かに近づこうともしなかった。
今日一日だけでも、それがどれだけもったいないことだったのか分かった気がする。
「まあ……三年あるんだ。今日の失敗くらい、いくらでも取り返せるよな」
明日はもう少し落ち着いてやればいい。
そう思うと、少し気持ちが楽になった。
「焦る必要ないか」
勇真は目を閉じる。
高校生活は、まだ始まったばかりなのだから。
◇
ピピピピピピッ――!
「ん……」
目覚まし時計の音で、勇真は目を覚ました。
「朝か……」
眠い目をこすりながらスマートフォンへ手を伸ばす。
昨日は少しやりすぎた。今日はもう少し自然にクラスメイトと話してみよう。
そんなことを考えながら画面をつけたところで、勇真の指が止まった。
【4月8日】
「……え?」
寝ぼけているのかと思い、目をこする。
もう一度見る。
【4月8日】
「なんで……?」
昨日が四月八日だったのだから、今日は四月九日のはずだ。
勇真はベッドから飛び起き、壁のカレンダーを確認する。
そこも四月八日。
「どういうことだよ……」
スマートフォンが壊れているのか。それともカレンダーを見間違えているのか。
何かの間違いだと思いたかった。
「勇真ー! 起きてる?」
階下から母親の声がする。
「今日、入学式なんだから早くしなさい!」
「…………」
背筋に冷たいものが走った。
「入学……式?」
昨日、行った。
間違いなく入学式へ行った。
名取と話し、自己紹介で恥をかき、成瀬たちに声をかけ、真下とも話した。
全部覚えている。
「……なんでだよ」
勇真はスマートフォンを握りしめた。
◇
学校へ向かう。
頭の中は混乱したままだった。
「昨日のことが夢だった……?」
そう考える方が、まだ現実的に思える。
そもそも高校卒業の日から三年前に戻ったこと自体がおかしいのだから、昨日一日の出来事まで夢だった可能性もある。
そんなことを考えながら歩いていると、前から自転車がやってきた。
角を曲がる直前、男子高校生がベルを鳴らす。その直後、横断歩道の信号が変わった。
「…………」
勇真は足を止める。
昨日も見た。
この自転車も、このタイミングも、この信号も覚えている。
「偶然……だよな」
そう呟き、学校へ向かった。
◇
一年三組へ入る。
勇真は無意識に教室を見渡した。
昨日と同じ席。
昨日と同じ顔。
しかし、それだけなら当然だ。
今日が本当に入学式なら、同じクラスなのだから。
「矢城?」
心臓が跳ねた。
振り返る。
名取が立っている。
「やっぱり矢城じゃん! 久しぶり!」
「…………」
勇真は答えられなかった。
昨日と同じだった。
言葉だけではない。笑い方も、声の調子も、こちらを見る表情まで記憶にあるものとほとんど変わらない。
「矢城?」
「あ……ああ」
「どうしたの?」
「いや……」
勇真は名取の顔を見つめる。
「名取」
「何?」
「俺たち……昨日、会ってないよな?」
「昨日?」
名取が首を傾げる。
「会ってないけど。何で?」
「…………」
「矢城、大丈夫?」
「いや……何でもない」
名取は不思議そうな顔をしながら、自分の席へ戻っていった。
勇真の胸がざわつく。
◇
入学式。
担任の説明。
そして自己紹介。
昨日と同じ順番で進んでいく。
勇真は笑えなくなっていた。
成瀬の自己紹介も同じ。
高石も同じ。
伊藤が面倒そうに立ち上がるタイミングまで覚えている。
偶然ではない。
「次、矢城」
担任に呼ばれ、勇真は立ち上がった。
昨日はここで、彼女が欲しいと言った。
もし本当に同じ日が繰り返されているなら――。
「矢城勇真です。中学ではバスケやってました。よろしくお願いします」
それだけ言って座る。
教室は静かなままだった。
昨日のような笑いは起きない。
「…………」
当たり前だ。
自分が違うことを言ったのだから。
その後の休み時間も、昨日とは違った。
勇真が成瀬たちのところへ行かなければ、当然あの会話は起こらない。伊藤へ「友達になろう」と言わなければ、佐藤に笑われることもなかった。
自分が違う行動を取れば、その後の出来事も変わる。
けれど、自分が何もしなければ、昨日とほとんど同じことが起こる。
放課後になった頃には、勇真の中から「偶然」という考えはほとんど消えていた。
◇
帰り道。
勇真は一人で歩きながら、今日起きたことを何度も思い返していた。
昨日と同じ四月八日。
同じ入学式。
同じクラス。
同じ人間が、同じ言葉を口にする。
そして、そのことを覚えているのは自分だけだった。
「……同じ日だ」
ようやく、その事実を言葉にする。
「今日……昨日と同じ四月八日なんだ」
だが、それが分かったところで何も解決していない。
なぜ三年前に戻ったのか。
なぜ一日が繰り返されたのか。
どうすれば明日へ進めるのか。
そもそも明日が来るのかすら分からない。
勇真は足を止め、夕暮れの空を見上げた。
「なんで俺は……」
答えてくれる者など、どこにもいない。
「同じ日を繰り返してるんだ……?」
高校生活をやり直せる。
昨日までは、それを人生を変えるためのチャンスだと思っていた。
けれど今、勇真の胸にあるのは期待ではなかった。
自分だけが、同じ四月八日の中に取り残されている。
その事実が、初めて少し怖くなった。




