第六章《文化祭⑴》
「花火大会楽しかったねー」
「うん」
「次は文化祭だよな?」
「うん...」
(もうすぐで文化祭だけど月斗とは少し気まずかった。)
「ひーちゃん何やりたい?」
「えっ私?えっと演劇やりたい」
「おっ、いいね!」
「月斗は?」
「俺も演劇」
「今日クラスで決めるよね」
「あぁ六時間目に決めるって舞園先生が」
時は過ぎ、六時間目になった。
「これから文化祭の出し物について始める。何か意見のある者はいるか?」
「はいっ!最後は演劇やりたいです。」
「なるほど、他にいないか?」
「じゃあ演劇でいいか?」
(あっさり決まった)
「では次は演劇で何をやりたいかだ。これも意見のある者はいるか?」
「シンデレラ」
「美女と野獣」
「アラジン」
「この3つが出たが投票でいいか?」
「ではシンデレラ?」
「7人」
「美女と野獣?」
「2人」
「アラジン?」
「1人」
「ではうちのクラスでの出し物は演劇でシンデレラだ。異議のある者はいるか?」
「じゃあ、今日は少し早いが終わりにしていいぞ。」
「そういえば今年はステージ発表もある。希望団体は後で申し込みに来るように。」
放課後。
「ねぇ。」
茜音が口を開く。
「ノート覚えてる?」
「⑤。」
氷雨が小さく答える。
「文化祭で演奏する。」
月斗もうなずく。
「部活なくなったけど……吹けないわけじゃない。」
「朝霧先生に頼んでみる?」
「うん!」
「じゃあ、行こー」
そして音楽室
「朝霧先生。」
「文化祭で演奏したいです。」
先生は少し黙ってから、
「今の吹奏楽部は三人だけだ。それでもやるか?」
「はい。」
「最後だから。」
先生も少し笑って、
「分かった。部活がなくなっても音楽は終わらない。」
帰り道
「やったー、久しぶりに人の前で吹ける」
「そういえば演劇で何やりたい?」
「俺はなんでも」
「私も...」
「私は魔法使い」
「なんで?」
「だって面白そうじゃん!」
「茜音っぽい。」
「じゃあ、また明日!」
「バイバイ」
次の日
「じゃあ、配役を決めるぞ。」
舞園先生が黒板に役を書いていく。
シンデレラ
王子
魔法使い
継母
義姉①
義姉②
ナレーター
馬①
馬②
裏方(5)
「やりたい役がある人は挙手してください。」
「はい!」
クラスの女子が何人かシンデレラに手を挙げる。
すると茜音が氷雨の方を見る。
「ひーちゃん、やってみなよ!」
「えっ、私?」
「絶対似合うって!」
「でも……。」
月斗も小さく言う。
「ヒサなら似合う。」
その一言に背中を押され、氷雨はおそるおそる手を挙げた。
最終的に投票になり──
「シンデレラ役は……豊咲!」
「えっ……。」
クラスから拍手が起こる。
「おめでとう!」
「が、頑張ります……。」
続いて先生が言う。
「王子役は?」
教室が静まり返る。
すると誰かが言った。
「八神でよくない?」
「確かに!」
「背高いし!」
「似合う!」
「えっ、俺?」
「決まりー!」
「異議なし!」
「……分かった。」
月斗は少し照れながらうなずいた。
「じゃあ魔法使いは?」
「はいはいはい!」
茜音が勢いよく手を挙げる。
「楽しそうだからやる!」
「火燈に決定!」
「やったー!」
教室が笑いに包まれた。
そしてどんどん役が決まり。
「これで終わりにする。」
放課後、私たちはまた、音楽室に集まった。
「文化祭で演奏する曲何にする?」
「うーん」
三人で音楽室の椅子に座りながら考える。
窓の外では夕日が校庭をオレンジ色に染めていた。
「去年吹いた曲でもいいけど……。」
氷雨が小さく言う。
「せっかくなら新しい曲も吹きたいな。」
茜音は楽譜棚を眺めながら言った。
「最後なんだから、一番思い出になる曲がいい。」
月斗が静かにつぶやく。
三人は棚から何冊も楽譜を取り出した。
「これどう?」
「難しい。」
「じゃあこれは?」
「アルトが大変そう。」
「じゃあ……これ。」
氷雨が一冊の楽譜を手に取った。
タイトルは――
『また、明日』
「この曲……。」
「それは私が作った曲だ。」
三人が振り返ると、朝霧先生が静かに笑っていた。
「昔、生徒たちのために書いた曲だ。三人編成でも演奏できるようにしてある。」
「先生が……?」
「ああ。文化祭にぴったりだと思う。」
「……この曲、吹きたいです。」
氷雨がそう言うと、茜音と月斗もうなずいた。
「いい曲。」
月斗が楽譜をめくる。
「優しい感じ。」
茜音も笑った。
「じゃあ決まり!」
三人は譜面台を並べる。
久しぶりの合奏だった。
「じゃあ、一回合わせよう。」
月斗の合図で演奏が始まる。
フルートの柔らかな音。
アルトサックスの明るい音。
バリトンサックスの低く包み込む音。
音楽室いっぱいに三人の音が重なった。
途中でリズムがずれてしまう。
「あっ。」
氷雨が止まる。
「ごめん。」
「大丈夫!」
茜音は笑う。
「久しぶりだし!」
「最初から。」
月斗が言う。
もう一度。
今度はさっきより息が合う。
演奏が終わると、音楽室は静かになった。
「……いいね。」
先生が後ろで拍手していた。
「前より上手くなった。」
「ありがとうございます!」
茜音が元気よく頭を下げる。
先生は三人を見て少し微笑んだ。
「文化祭まで時間は少ない。」
「でも、お前たちなら大丈夫だ。」
その言葉に三人は大きくうなずいた。
帰る準備をしていると、
茜音が最後の一カ月ノートを開いた。
⑤ 文化祭で演奏する
その文字を見つめながら、
「あと少しで一つ叶うね。」
「うん。」
氷雨も笑う。
「一つずつ、叶えていこう。」
月斗の言葉に、
夕焼け色の音楽室が少しだけ温かく見えた。
「じゃあ……また明日。」
「また明日。」
「またな。」
三人は音楽室をあとにした。




