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第五章《花火大会》

「ねぇ、そういえば明日花火大会じゃない?」茜音が言った。

「あっ確かに!」

「みんなで行こー!」

「なぁ、せっかくだし浴衣で行こーぜ」

「いいね」

「......私、かき氷食べたい」

「いーじゃん!」

「決まりっ明日の12時浴衣でお昼食べて駅集合ね!」

「了解」

その日の夜私は明日の支度をしていた。

1. ハンカチ、ティッシュ

2. スマホ

3. 定期

4. お金

5. 扇子

6. 最後の一カ月ノート

「よしっ、オッケー、おやすみ」

次の日、今日は夏が戻ってきたように蒸し暑かった。

「今日暑いから熱中症にならないようにね〜」母の声だ。

「はーい」

(ちょっとペットボトル多めに持っていこうかな?)

そしてお昼を食べて集まった。

「お待たせ」

「浴衣可愛い!」

「茜音も可愛いよ」

遅れて月斗がやってきた。

「遅い〜」

「悪い悪い」

月斗は顔を赤くしている。

「月斗、熱ない?顔赤いよ?」

「いやっそんなんじゃなくて......」

「はい、水。」私は押し付けた。

「いやっ違うって」

「顔真っ赤だから」

「わかったよ」

月斗は諦めた。

「やっぱ花火大会ってこんな感じだよね。」茜音がニヤニヤしながら言った。

「なんでニヤニヤしてるの?」

「ひーちゃんは気にしないでいいから。ほらっいこー!」

電車に揺られ

(次は河音駅、明日川の花火大会に行く方はこの駅です。)

「よしっ着いた」

「花火大会まで時間があるから屋台回らない?」

「いいね」

「じゃあかき氷食べよ」

「ひーちゃん、いちごだっけ?」

「......うん」

「月斗はブルーハワイだよね」

「あぁ」

「やっぱり私はメロンかな」

「買ってくるね!」

「ありがとう」

そして茜音がかき氷を買ってきた。

「冷た〜い」

「......美味しい」

「茜音の舌、緑になってる!」私は言った。

「えっ、でも月斗も舌、青いよ。」

茜音がニヤニヤしながら言った。

「うるせぇ」月斗が照れながら言った。

「アレー?何照れてるのかな〜甘党くん?」茜音がちょっとバカにしてるみたいだった。

「うるせぇよ」

かき氷を食べ終えたあと。

「次どこ行く?」

茜音が屋台を見渡しながら聞いた。

「射的やりたい!」

「いいね。」

「じゃあ勝負な!」

三人で射的屋の前に並ぶ。

「ルールは一人五発ねー!」

店のおじさんが笑いながら言った。

「よーし!」

茜音が勢いよく撃つ。

「わっ、全然当たらない!」

「へたっ。」

月斗がぼそっと言う。

「うるさい!」

私は少し緊張しながら銃を構えた。

「えいっ。」

カラン。

小さなお菓子が落ちた。

「ひーちゃんすごい!」

「たまたま。」

最後は月斗。

「……。」

パンッ。

パンッ。

パンッ。

三発続けて景品が落ちる。

「えぇぇ!?」

「月斗うますぎ!」

「昔、お祭りでやったことある。」

「ずるい!」

結局、一番多く景品を取ったのは月斗だった。

「俺の勝ち。」

少しだけ得意そうに笑う。

「次は綿あめ!」

「じゃあ、今度は私が買ってくる......」

私は大きな綿あめを買ってきた。

「見て!顔より大きい!」

「ほんとだ。」

「茜音、一口食べる?」

「うん。」

ふわっと口の中で溶けて、甘い香りが広がる。

「おいしい。」

「月斗も食べる?」

「一口だけ。」

「やっぱ甘党じゃん!」

「……だから違う。」

照れた月斗を見て、私と茜音は笑った。

「焼きとうもろこしの匂いする!」

茜音が鼻をくんくんさせる。

「あっちだ。」

屋台から香ばしい醤油の匂いが流れてくる。

「一本買って三人で食べよう。」

「賛成!」

三人で順番にかじる。

「熱っ!」

「あはは!」

「猫舌?」

「違う!」

また笑い声が響いた。

「次はりんご飴!」

茜音が真っ赤なりんご飴を持って走ってきた。

「写真撮ろ!」

「いいよ。」

スマホを取り出し、三人並んで笑う。

カシャ。

「いい写真!」

茜音は満足そうに笑った。

私は画面を見ながら思う。

(この一枚も、大切な思い出になる。)

「じゃあ、たこ焼き食べない?」茜音が言った

「いいぜ」

そしてみんなで座ってたこ焼きを食べた。

「フーフー、吹部の肺活量!」

「確かに。」

そんなことを言いながら食べた。

「ヒサ、口の周りに青海苔付いてる。」

「えっ、」私はハンカチで拭いた。

「取れた?」

「ぜんぜん取れてない。」

「取って〜」

「えっ......あっ、いいぜ」

月斗は手で取ってくれた、何故か照れていた。

その様子を見て茜音もニヤニヤしていた。

「じゃあ今度、金魚すくいやろ〜」

「うん」

「誰が一番取れるかで勝負!じゃあまた、一番少なかった人が、みんなにラムネ奢ることね!」

「え〜」

「勝負開始」

みんなでたくさんすくった。

「みんな何匹?私は......4匹」

「私、5匹」

「月斗は?」

「俺は8匹」

「やったー、俺の勝ち!じゃあ、ラムネよろしく!」

「え〜」

「ルールだろっ」

「仕方ないな」

そんな会話をしてると

『ドーン』

と花火の音が聞こえてきた。

「わぁ、綺麗」

「見やすい神社の所に移動しよう!」

「オーケー」

神社もたくさんの人で賑わっていた。

夜空いっぱいに赤い花が咲いた。

川面にも同じ花火が揺れている。

来年も見たいな。

......でももう叶わないんだな。

また、来年

......また来年

いつの間にか流れた涙 

「おい、ヒサ大丈夫か?」

「うん、大丈夫。」

「これっ使えよ。」

月斗は自分のハンカチを取り出した。

「悪いよ」

「いやっいいって。」

「ありがとう」

そして最後の花火が散った。

「あー終わっちゃったね。」

茜音が切なそうに言った。

「あぁ、終わったな...」

花火が終わり、人混みを抜けて明日川の土手をゆっくり歩く。

川にはまだ色とりどりの花火の光が揺れていた。

さっきまで賑やかだった屋台の声も少しずつ遠ざかり、聞こえるのは虫の声と川の流れる音だけ。

その静けさの中で、茜音が「あっ、屋台に忘れ物した!」と言って駆け出した。

気づけば、私と月斗だけが土手に残っていた。

月斗は何度か言葉を飲み込み、小さく息をついた。

「……ヒサ。」

「なに?」

「あと一カ月しかないだろ。」

「……うん。」

月斗は夜空を見上げる。

「だから、言っとこうと思って。」

少し長い沈黙。

「俺さ……ヒサのこと、好きだ。」

夜風が二人の間を静かに吹き抜けた。

氷雨は驚いて立ち止まる。

「……え。」

「返事は今じゃなくていい。」

「でも……。」

「最後まで、今までどおりでいてくれ。」

そう言って照れ隠しのように前を歩き出す月斗。

少し遅れて氷雨も歩き出す。

遠くで茜音の声が聞こえる。

「二人ともー!置いてくよー!」

「うん」

(返事はできなかった。

でも、今日の花火も、この夜も、あの言葉も。

きっと私は、一生忘れない。)

「また、明日」

その一言が、いつもより少しだけ胸に響いた。

こうして、私たちの花火大会は幕を閉じた。

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