第二十六章《隣町探検》
2026年10月1日木曜日。
今日から10月が始まった。
「イェーイ!」
「どうした?茜音?」
「十月が始まったんやぜ〜!」
「あっ、出た、茜音の謎のノリ!」
「謎ってなんだよ、なぞって!」
「元気そうでいいけど。」
「では、ここで一句。」
「えっ?」
しみじみと
最近感じる
静けさは
日に日に近づく
地球の最期
「ででーん!」
「いや、それ短歌だし!」
「短歌は一首、二首だよ。」
「あと、そのテンションで悲しい短歌読まないで!」
「あはは、てへっ。」
「もう、行くよ。」
「はーい!」
私たちは隣町へ向かって歩き始めた。
「隣町って歩いて行ったことあったっけ?」
「最後の一カ月ノート買ったじゃん!」
「確かに。」
「あおちゃんは?」
「私はない。」
「じゃあ、初めての隣町探検だね!」
「探検って言っても、ただ隣町に行くだけだけどね。」
「細かいことは気にしない!」
「はいはい。」
しばらく歩いていると、隣町との境目が見えてきた。
「おー!」
「ここから隣町か。」
「なんか、ちょっとだけ違う感じするね。」
「そう?」
「うん。」
「いつもは駅の周りしか行かないもん。」
「確かに、駅から離れている場所は行ったことないね。」
私は周りを見渡した。
いつも住んでいる町と、そこまで大きな違いはない。
だけど、見慣れない道。
見慣れない建物。
知らない公園。
それだけで、少しだけ遠くへ来た気分になった。
「まずどこ行く?」
「商店街!」
「でも、ほとんど閉まってるんじゃない?」
「いいの!」
「茜音は本当にそれ好きだな。」
「だって商店街って歩くだけでも楽しいじゃん!」
「まあ、わかる。」
私たちは商店街へ向かった。
「......静かだね。」
「うん。」
昨日までなら、もっと人が歩いていたはずの道。
今日は、ほとんど人がいない。
シャッターの閉まった店が並んでいる。
「本当に閉まってる......。」
「ほらね。」
「でも、ちょっと寂しいね。」
「......うん。」
しばらく歩く。
すると、一軒だけ開いている小さな店があった。
「見て!」
「お菓子屋さん?」
「入ってみようよ!」
「いいね。」
「いらっしゃい。」
店の中には、昔からありそうなお菓子が並んでいた。
「うわー、懐かしい!」
「これ小学生の頃食べてた!」
「俺も。」
「私はこれ。」
「あおちゃん、それ好きだったんだ。」
「うん。」
「じゃあ、みんなで買おう!」
「なんで?」
「記念!」
「何の?」
「隣町探検記念!」
「そんなのあるんだ.......。」
みんなで笑った。
私は小さなお菓子を一つ手に取った。
「これにしようかな。」
「じゃあ、俺も同じの。」
「え?」
「なんとなく。」
「......そっか。」
少しだけ恥ずかしくなって、私は目を逸らした。
「ひーちゃん、顔赤いよ!」
「赤くない。」
「赤い赤い!」
「もう.......。」
「仲良いねー。」
葵が笑う。
店を出ると、また静かな商店街だった。
「次はどこ行く?」
「公園!」
「まだ行くの?」
「もちろん!」
「元気だなあ。」
「だって、今日は一日遊ぶんだから!」
私たちは公園へ向かった。
ブランコ。
滑り台。
ベンチ。
昔からあるような、普通の公園だった。
「ここでちょっと休もう。」
「さんせーい。」
みんなでベンチに座る。
空を見上げる。
雲一つない青空だった。
「.....綺麗。」
「うん。」
「10月になったんだな。」
月斗が空を見ながら呟く。
「あと五日か。」
誰も何も言わなかった。
昨日までなら、誰かが冗談を言っていたかもしれない。
でも、今日は言えなかった。
「......ねえ。」
茜音が口を開く。
「あと四日しかないならさ。」
「うん。」
「この四日間、全部楽しもうよ。」
「.......。」
「泣いたりするのは最後でいいじゃん。」
茜音は笑った。
「だから、今日はいっぱい遊ぼ!」
「......うん。」
私も笑った。
「そうだね。」
「よーし!」
茜音が立ち上がる。
「次はどこ行く?」
「まだ行くの?」
「もちろん!」
「じゃあ.......。」
私は少し考える。
「……展望台。」
「展望台か、いいな。」
「でしょ。」
「うん、いいね。」
「決まり!それじゃあ、レッツゴー!」
「おー!」




