第二十五章《花火セット》
「ねぇ、花火セット見つけたんだけどやらない?」
「いいよ。」
それは少し古い花火セット。
「すごーい、いっぱい入ってる。」
「うん、押し入れを掃除してたら出てきたんだ。」
「へー。」
「いいねー。これでまた目標一個達成!」
「ねー。」
花火の封を切った。
「どれがいい?」
「この長いやつ。」
「王道だね。」
「あれっ?なかなか点がないなー。」
「だねー。」
なかなか点かない花火に火を近づけながら、私たちは思い出話をした。
幼稚園、小学校、そして中学校。
「9月も終わりだなー。」
「そうだな。」
「あと、五日……。」
「……そうだな。」
その瞬間この手の先で光が弾けた。
「あっ!付いたー!」
思わず叫んでた。
「えっ、本当だ!」
これでもかと輝く火花の鋭い音が響いた。
「綺麗だね。」
「うん。」
ゆっくり眺める暇もなく消えていく輝きをもったいなくて最後の一瞬まで追いかけた。
「……綺麗。」
花火の数はどんどん減っていった。
「あと、四個。」
「ちょうどいいじゃん!」
みんなで火を点けた。
「これで最後。」
「だな。」
「……この海はどこまでも広い。」
「あおちゃん、どうしたの急に。」
「そして、どこまでも深い。」
「大丈夫?」
「思わない?」
「えっ?」
「この広い海に比べたら私たちは小さいんだよ。」
「そうだね。」
「それに、私たちは脆くて弱い。」
「……。」
長い沈黙が続いた。
「でも……その脆くて弱い、そんな儚い私たちは……。」
葵はそこで言葉を止めた。
「……?」
「……やっぱり、なんでもない。」
「えー! 気になる!」
「秘密。」
「なんでー!」
「そのうちわかるよ。」
「そのうちっていつ?」
「……来年とか?」
「来年?」
「うん。」
葵は小さく笑った。
「来年、またみんなでここに来たら教える。」
「じゃあ、絶対来ないとね!」
「そうだな。」
「うん。」
私は海を振り返った。
暗い海の向こうには、何も見えない。
それでも、波の音だけは聞こえていた。
ザァ……。
ザァ……。
「……来年。」
小さく呟く。
さっき埋めたタイムカプセル。
今日撮った写真。
そして、葵が言いかけた言葉。
全部、来年に残した。
「ほら、ひーちゃん!」
「え?」
「早くー!」
「今行く!」
私は3人のところまで走った。
「そういえば、明日は何時集合?」
「十時!」
「隣街探検だもんね!」
「楽しみだなー。」
「お店、ほとんど閉まってるけどね。」
「いいの!」
「本当に茜音は元気だな。」
「だって、まだ時間はあるんだから!」
「……そうだね。」
私たちは歩きながら、明日の予定を話した。
どこへ行くか。
何を見るか。
何を食べるか。
そんな、どうでもいいような話。
でも、それが楽しかった。
学校を出て、いつもの道を歩く。
「じゃあ、ここで。」
「うん。」
「また、明日!」
「また明日!」
「じゃあねー!」
「おやすみ。」
4人はそれぞれの家へ帰っていく。
私は何度か振り返った。
みんなも手を振っている。
「また、明日。」
そう呟いて、私も家へ向かった。
9月30日。
9月最後の日。
そして――
地球が終わるまで、あと五日。




